プロローグ
今日もまた、この夢を見る。月夜が照らすバルコニーには二つの後ろ姿。右側の少女は耳が横に尖っている。いわゆる森精種だ。髪はブロンド色で肩に少しかかるくらいの長さで、薄緑色のネグリジェを着ている。名前をリリアーナと言う。左側の少年は僕だ。黒色の毛並みを揃えた獣人種、猫人族。いつも通り真っ黒な服装だ。
この二人が並んで手すりに肘を置いているのを第三者として眺めている。
何とも不思議な夢だ。
リリアーナは空を見上げ、僕はその横顔に見惚れている。二人だけの時間がそこには流れていて、永遠に続いて欲しいと僕は思っているだろう。
「ハルカ、綺麗だね。」
リリアーナが綺麗な声で言った。それを聞いた僕はゆっくりと顔を上げ、上を向く。
一面を埋め尽くすほどの星の数々。その光景に夢の中の僕は言葉を失うのだが、第三者の僕は毎晩見ているから正直見飽きているんだよね。
「あぁ、綺麗だ。」
小さな声で返した後、僕は下を向き、手すりに額をのせる。昔のことを思い出しているのだ。
二人で森を走り回ったこと。
夜中にリリアーナを連れ出し、遊び回ったこと。
それが叔父様にばれて怒鳴られたこと。
どれも大切な思い出。夢の中の僕はこんな日常がずっと続くと思っているだろうが、残念ながらこの楽しい毎日は今日で終わりだ。
屋敷の外は明かりが一切無いが、村人たちは騒々しく動いている。すでに世界は狂い始めているのだ。
大陸中の王族が一夜にして消滅した悲劇の事件、アラムの神隠し。
「リリィ、ずっと一緒にいてくれるかい?」
夢の中の僕が顔を上げた時、君はすでに消えていた。訳が分からず呆然と立ち尽くす僕。
村人たちの騒ぎは段々と大きくなっていき、やがてこの屋敷にも伝わった。
いつか絶対君に会いに行く。




