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序
世界の意思とはこれ即ち運命。
お話は、大抵勝手に進んでゆくものだ。
例えば、ビルに挟まれた路地裏の、薄暗い風の吹くところ。
例えば、巨大な地下迷宮の、誰とも知られぬ隠し部屋。
例えば、俯く貴方のすぐ後ろ。
何処でもあり、何処でもない。
此処は微睡みの白昼夢が如き場所。
揺れる陽炎が形を持つ場所。
現世と隠世を繋ぐ場所。
境界は常に狭間に在りて、浮かんでは消える泡沫の如し。
懊悩の奥──視界を覆う霧の中で、貴方が一軒の不思議な家を見つけたならば、それはきっと──
「あい、ようこそお出でくださいました。何ぞお悩みでもございますか? 然らば──こちらへ」