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20年後に会った元カノ、昨日別れた元彼。  作者: 逢坂 遥
第一章 四月 はじまり
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007_仮彼氏、仮彼女

 「ただいま」


 俺はいつもなら、午前授業でもない限り寄り道をせずまっすぐ家に帰る。しかし今日は半強制的にカラオケに連行されていたから、家に着いたのは午後6時過ぎだった。

 俺がいないから、櫻はリビングでのびのびしていたのだろう。


 ラフな格好でソファの上でうたた寝をしていた櫻は目を覚ました。俺が帰ってきたことに気がつくと

 「……」

無言でそそくさと自分の部屋に行ってしまった。あの日から1ヶ月。もう全く口を利いてくれない。俺がリビングにいれば櫻は部屋にこもってしまう。


 この状況を打開できる頼れる親なんて俺にはいないし、伯父さんや伯母さんに迷惑はかけられない。というか、伯父さんは単身赴任中、伯母さんは夜勤だから俺らが家にいるときには仕事に出ているか寝ているかのどちらかだ。


 それに……伯母さんたちからすれば『居候みたいな身分』の俺が、一つ屋根の下のたった一人の娘に恋愛感情を抱いているなんて知ったらそれこそ伯母さんにも嫌われかねない。心底気持ち悪がられるだろう。


 「どうすればいいんだろ」

 今まで、もちろんささいな喧嘩は数え切れないほどあったが、俺と櫻は本当に仲良かった。はず。俺らの場合関係が特殊だということはあっても、普通の友達とか兄妹とかよりも確実に親密だったと思うのだが。まるで恋人のように。


 そもそもだ。つい最近まで毎週デートしてたじゃないか……!!

(※俺の思い違いだった可能性大だということを指摘するのは反則だ)

 いつも手繋いでたし。櫻が寒いと言えば俺が包み込むように抱きしめてあたためてあげてたのに。

 もっとラブラブなエピソードを言えば、クレープを食べたときに櫻の口元に付いたクリームを舐めるのは俺の役割だったんだぞ……!

 

 「翔先輩ーっ、おはようございます」

 眠るうちにまた日は昇る。いつの間にか、未羽と同じ電車に乗り、話しながら登校するのが日常になっていた。

 今日も同じように、いつもの三番ホームの5号車への乗り場、いつもの時間に未羽が来る。


 「おーす、えーと、ここ1ヶ月近く口利いてない妹とどうしたら仲直り出来ると思う?」

 未羽はいきなりの俺の問いに目を丸くした。

「ま、また唐突ですねっ、どうしたんですか……」

「いーから、お前だったらどうすれば許してくれる?」

「何が原因なんですか……1ヶ月口利かないってよほど怒らせたんですか?」


 「妹に彼氏が出来たって話になったときに喧嘩というか……してだな」

本当の原因はまた別のところにあるのだが、絶対に言えない。

 「その時なんか付き合うこととか彼氏さんについてとか否定するような言葉でも言ったんじゃないですかーっ?」

否定というか、勢いで告っちゃったぜ。……これも言うべきではない。


 「今は応援してやっても良いかなーって思ってるんだけど」

「まず聞きますけど、ちゃんと謝ったんですか?」

 よく思い返してみよう。あれ、謝った記憶が無い。謝らせてくれるほどの隙がないとも言えるが、言い訳だろう。


 本気で謝りたいならば、仲直りしたいということを手紙に書くことだって、櫻の部屋の前でごめんなさいと叫ぶことだって、櫻が風呂から上がった直後、一瞬だけリビングを通る時に櫻をつかまえて抱きしめることだって出来ただろうに。間違っても一番最後のやつは選択しないが。さらに嫌われる。


 「じゃあまず俺は謝る。謝るけど、その後どうしよっかな~……」

 少なくとも、『櫻に恋している俺』は封印しなければならない。出来れば変態な俺も封印したいがおそらくどこかでボロが出そうだ。


 「ああ、思い付いた!」

 大きな声ではいえないが、少なくとも『櫻に恋している』という状況は破壊できる素晴らしい案が。

 「未羽、協力してくれるか?」

「私に出来ることなんですか?」

「もちろんだ」

「じゃあいいですよ」


 「俺と付き合ってくれ」


 …………。

 さすがにぽかーんとされるか。

 「はい?」

 未羽は(゜ロ゜)←こんな表情をしている。

 俺と未羽が付き合っている、ということにすれば、もう櫻のことが()()()()()大好きであるということはない、という証明になるはずだ。

 しかしだ。言った傍から俺は自分の言ったことに恥ずかしくなった。


 「あ、ち、ちが、フリな!付き合ってるフリ!!」

 これでもフォローになってはいない。櫻どころかせっかく趣味の共通する未羽にも嫌われてしまう。しかも未羽と櫻は同じ学校の同学年、もしかしたらこのことすら櫻の耳に入ってしまうかもしれない。

 穴があれば入って一生土竜(もぐら)として生活したい。


 しかし予想外の返事が返ってきた。

 「良く分かんないですけど、まあ、いいんじゃないですか、あくまでフリなら」

やっと登場キャラの説明が終わり、話が進む方向へ。


お読みいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。

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