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20年後に会った元カノ、昨日別れた元彼。  作者: 逢坂 遥
第四章 三月 終わりははじまり
69/77

069_ホワイトデー

 俺は大量のお菓子を買い込み登校した。

 正直、誰にバレンタイン貰ったかなんて覚えきれないのだ。

 誰から言われても大丈夫なように、今日の俺はお菓子常備だ。


 下倉へのピアス代+櫻への定期入れ代<皆様へのお菓子代。

 なんせ141人分のお菓子だもん。


 「別にお菓子が貰えれば良いって話じゃないと思うんだけどな……」

 佐藤に言うと苦笑いした。そうだろうけど仕方ないじゃん。お返し何もなしよりはマシだろ?


 あれ?先輩の卒業式終わっちゃったじゃん。

 先輩にはお菓子渡せないのか。まあ良いけど。


 「えーと、せめて手紙書いてくれた人にはさすがにお返しに行かないとな、まず1年のフロアから行くか……」


 俺は業間休みと昼休みをフルで使い、120人くらいにお菓子を渡した。もう覚えきれていないので、とりあえず目が合った人にはマシュマロとか飴とかクッキーとか渡すスタンスで。


 5限と6限の間、俺はまだお(・)返(・)し(・)を渡していない下倉に声をかけた。


 「放課後ちょっと残ってて!」

 今日こそ告白だ、今日こそ言うんだ!!

 「はーい」

 良かった、放課後は時間ない、とか言われなくて。


 6限の日本史を50分間右耳から左耳へと聞き流し、放課後になった。

 他の奴らが教室からいなくなる頃を見計らった。窓際の壁にもたれるように下倉、その正面に俺。


 「下倉、この間トリュフありがと」

「こちらこそ」

 俺は小さな袋を渡した。

 「開けて良い?」

「……うん」


 なかなか恥ずかしいけれど、中身には自信がある。ファーって言うんだっけ、モコモコのついたピアス。

 櫻も『意外と翔センスあったんだね』と言ってくれたし。


 お腹空いちゃったんだよなー、とか独り言を良いながら包装を解いている。お菓子だと思っているな、こいつ。


 下倉は箱の中身を見た。


 「なんで」

 その声は、あまり嬉しそうではなかった。


 下倉の好みではなかったのか?

 いや、違うか。今まで見てきた限り、下倉は基本的に何を貰っても嬉しそうに笑っていたもんな。


 「せっかく頑張ってたのに。翔のこと忘れていられるかなって思えたのに。こんなことされたら、全部全部台無しじゃん」

 

 泣かせるなんて思っていなかった。涙声が二人きりの教室に響く。


 「ごめん、いきなり怒ったり泣いたりして」

 下倉は手で涙を拭いて、無理やり笑った。


 言わないとダメだ。

 壁に右手を突き、下倉の顔を見つめた。

 必然と顔が近くなる。少女マンガでありがちな体勢。


 「下倉、俺は――」


 ガラっ。

 教室の扉が開く音がした。


 「お前、調子乗りすぎ」


 入ってきたのは一条と西門だった。

 下倉の友達というか取り巻きというか、そんな奴ら。


 「綾めっちゃ可哀想。綾が頑張ってたときは見向きもしなかったくせに、いざ綾がお前を諦めようとしたら引き止めにきてて。ウザいんだよ」


 彼女らは、下倉を引っ張って教室から出て行った。

 俺は抜け殻と化していた。

なかなかくっついてくれない。


お読みいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。


次回予告☞綾の過去。3本立て。

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