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20年後に会った元カノ、昨日別れた元彼。  作者: 逢坂 遥
第一章 四月 はじまり
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006_カラオケ連行、拒否権無し

翔に次ぐ、物語の軸となる男キャラが登場。

 「それでは、体育祭の種目決めをしましょう」


 桜も散り終えた4月の終わり。櫻への恋心も散り終えた頃だ。

 ちなみに櫻の、誰かさんへの恋心は満開そうだ。先週も可愛く着飾ってデートしていた。本人がデートだと言っているわけではない(というかそもそも一切口を利いてもらえない)のでそれがデートだと断言出来る訳ではないが、どことなくふわふわそわそわとした雰囲気から察するにデートだろう。デートデート。


 体育祭は6月中旬だが、5月末に定期テストがあるため、種目決めや準備は早めに取りかからないといけない。ちなみに応援合戦という名のダンスは興味ないから参加しない。

 でも体育祭自体はまあまあ好きなのだ。楽しいじゃん!


 「体育祭を楽しいって思えるのは運動神経良い奴だけだろ」

 佐藤は冷めている。お前だって俺と同じ元バスケ部だろ。

 「お前はいつもスタメンだったからな。俺なんか中3になっても試合ほとんど出れなかったんだからな」

 思い返せばそうだったかもしれない。そう言われてしまうと申し訳なさを感じてしまう。


 基本的に一人2種目に出場するが、リレー選抜者はリレー含め3種目に出る。リレーはこの前の体育で測った100メートルのタイムで男女各二名ずつ決まるそうだ。


 「えー、うちのクラスは鈴谷くん、篠宮くん、二谷さん、下倉さんにお願いしたいのですが」

 お姉さんともおばさんとも言えない年齢の担任は、与えられたセリフを読むように言った。『お願いしたいのですが』とは言っているものの、拒否権はおそらく無いのだろう。


 「おい、お前そんな足速かったっけ」

 前の席の佐藤がこちらを振り返り聞いてくる。

 「12秒台後半だけどな」

「いや、それ普通にすげーから」

「鈴谷はあとちょっとで11秒台だぞ」

「だってあいつは現役運動部じゃん」


 鈴谷(すずたに) 駿(しゅん)。テニス部のエースで、県大会上位常連らしい。良く朝会で表彰されている。

 

 彼を端的に表現すると、チャラい。


 まず外見だ。下倉よりは落ち着いた色ではあるが、明らかに染めている。彼の髪は根元だけ黒かった。

 余談だが下倉は明るい髪色している癖にプリンになっているところを見たことがない。

 話を戻す。鈴谷の左耳にはピアスホールが開いている。さすがに学校に付けてきている訳ではないが。

 ワイシャツは第三ボタンまで開け、黒のインナーをわざと見せている。裾はズボンから完全に出している。

 ここまで制服を着崩すスタイルは、俺には恰好良いと思えない。

 しかし、女ウケなら満点取れそうなほどに顔が整っているので、チャラい恰好してても、似合わないなんてことはない。そう。直接言えば似合っているのだ。


 中身も、外見同様チャラ男を極めている。鈴谷は彼女こそ()()()()()()ものの、部活のオフはいつも女とデートしているとか。しかも毎回違う人らしい。一体何人遊び相手がいるのやら。


 二谷は、中学時代から彼氏がいる、言わばリア充。彼氏と高校は違うけど相変わらず仲が良いらしい。顔は特に可愛いとかいう訳ではないが、性格がとてつもなく明るい。カーストにとらわれず誰に対しても平等で誰からも好かれている。


 下倉は……言わずと知れた女王様。


 種目ごとのメンツを確認する時間、俺は真っ先に逃げたしたくなった。キラキラオーラやべぇ。

 しかも俺様見た目はまあまあキラキラしてるから、チャラ男もリア充もキラキラなノリで話しかけてくる。つらい。まじキラキラ。ゲシュタルト崩壊しそうなほどキラキラ。


 「じゃー折角だしカラオケ行こ~!」

 キラキラ街道まっしぐらの駿が発案。宝石の輝きと太陽の輝きに例えられるような下倉&二谷の笑顔をもって賛成3。俺に人権はない。俺、そんな別世界の方々とカラオケ行かないといけないのか。


 皆様、アイドルや人気バンドの最新曲をノリノリで歌っていらっしゃる。歌わない間もタンバリンにマラカスにコーラスに忙しそうだ。

 俺はというと、端っこの方でメロンソーダをひたすら吸っていた。話が振られた時は、噛み合った会話になる最低限の言葉をなんとか返していた。


 このパリピ空間にあと何分耐久すればいいんだ?

 忘れちゃいけない、俺はあくまで二軍。みんな見た目に騙され、俺がパリピだとでも思いこんでいるのだろうか。

 下倉は、俺が決して陽キャではないことを知ってるだろうけど、俺がいればなんでもいいのだろうし。


 流行の歌?俺はMeanwhileを除き全く分からない。

 俺は中学入った頃からMWーーMeanwhileの略だーーに一筋だったからな。たまに別のバンドも聴くけど。アイドルの歌などサビすら知らない。


 「ほら、翔もなんか歌おーぜっ」

鈴谷は右手を俺の右肩に回し、左手でマイクを俺の口元に向けたい。

 「お、俺はいいよ、聞いてるから」

 そもそも歌える曲が無いに等しい。MWの曲なら全曲歌えるが、逆に言えばMWしか歌えないのだ。ノリ悪くてごめんな。


 「しょーがないなぁ、じゃあ私入れるっ」

 下倉が歌うベタベタのラブソング。聴いてて鳥肌が立つほど恥ずかしい。見たくないものは目を瞑ればいいが、聞きたくないものを耳はシャットアウトしてくれないんだよなぁ。


 一歩どころか心理的な距離では1キロほど引いた地点から3人を冷めた目で見ていた。

 なんでこんなに盛り上がってるんだろう。俺には理解出来ない。やはり、俺とは住む世界が違ったのだろう。

 次は、チャラ男と女王とリア充の3人で行ってくれ。心から思った。


 そろそろ6時。県の条例によって高校生である俺たちはカラオケ屋を出ないといけない。やったね、帰れる。


 「なー翔っ、飯食い行かね?」

 まだ俺を拘束するのか……?空気同様だった俺を?


 「お、俺は……そうだ、今日お袋の誕生日で。帰ってやんねーと拗ねるから」

 「家族想いなやつだなー。そっか、じゃまた今度な~」


 また今度、ほど次がない言葉はない。よし、振り切れた!

 心の中でガッツポーズをしながら、家路に急いだ。

 お袋なんて……母親なんて、俺にはいないんだけどな。

次回は少し翔の家庭事情にも触れます。


お読みいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。

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