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20年後に会った元カノ、昨日別れた元彼。  作者: 逢坂 遥
第一章 四月 はじまり
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004_不本意な再会

 佐藤の奢りの塩ラーメンを啜りながら俺は叫ぶ。


 「もう嫌だぁぁぁぁーーー!!」


 「櫻には彼氏が出来て、俺は櫻にめちゃくちゃ嫌われて、駅ではムカつくオッサンいて、めんどくせー女子高生いて、追い討ちは女王様と同じクラス……席近すぎ……」

 「その女子高生とやら定期拾ってくれたんだろ?新学期早々定期無くすよりはいいじゃないか」

 まあそう言われればそうだけど、さ。


 「態度が気に食わねえ、なんなんだよあの偉そうな態度!!」

「それは向こうから見たお前が無礼極めてたからだろ」

 それを言われると何も言い返せない。

 「今度会ったらお礼くらい言っとけば?」

 今度会わないことを祈……


 カランカラン。

 ラーメン屋に入ってきたのは今朝のあの女子高生。災難はまだ続いていたのか。俺の気分はマリアナ海溝よりも深く沈んでいる。


 「噂をすればなんとやら……」

「おー、可愛いじゃん。しかも浜高の一年。めっちゃ頭良いじゃん」


 浜高の一年?

 櫻と同じじゃねーか。ちゃんと見ていなかったから気づかなかったが、制服は確かに櫻のものと同一だ。


 東浜大附属の中学・高校ではリボン及びネクタイの色で学年が分かる。基本的には中学と高校で制服は一緒。リボンが中学、ネクタイが高校。今年の一年は青、緑が二年、赤が三年という感じだ。


 「同じ時間の電車なんだろ?これからも会うかもしれないんだから謝った方がいいんじゃないか」

 佐藤の言うことはなんだかんだ正論である。仕方がない。

 「わーったよ」

 

 彼女がちょこんと座るカウンター席へ近づく。…どうやって話しかければいいんだ?

 「あ、あの…えっと」

 気づかれていない。いや、無視されてる?

 「そ、そこの、浜高の、人」

 数時間前彼女が俺を呼んだのと同じように呼んでみる。


 彼女は振り返った。正統派黒髪ロングの櫻と良い勝負になるほど、艶のある髪。櫻との違いは髪の長さだろう。肩の上で切りそろえられ、綺麗な内巻きになっている。

 『私ですか?』と訊くかのように見開いた大きな瞳は、黒よりも黒いような黒髪からは想像出来ないほど明るかった。ヘーゼルって言うんだっけ?茶色と緑が混ざったような何とも不思議な、吸い込まれるような魅力のある色。


 しかしあの無愛想な俺だと気づいた瞬間、警戒心むき出しの表情になった。

 「なんですかっ」

 俺が悪いことしてるみたいだ。でもここまできて引き下がる方がもっと不審だ。


 「…定期、あざっす。朝はさーせん」

 名も知らぬ彼女の瞳がほんの少し揺れる。

「私は、別にっ」

 興味なさそうにまた正面を向いた。俺も佐藤の待つ席へ戻ろうとした。


 「おーーい、そこのボブカットちゃん」

 佐藤の、顔と一致しないようなイケボが『ボブカットちゃん』を呼ぶ。一体この人何考えてるんだ?

 彼女はぽかんとした顔でまた振り返る。

 「一緒に食べないー?席空いてるし」


 佐藤は言っちゃなんだが牛乳瓶のような眼鏡のせいで顔面偏差値がかなり低く見える。眼鏡さえなければ、少なくとも『ブサイク』の部類からは抜けられると俺は思っているんだがな。

 こんなキモヲタみたいなのにナンパされて、ほいほいと来るほど彼女は馬鹿じゃないだろう。


 「え…ま、まあいいですけどっ」 

 分かったこと。こいつは馬鹿だ。

 

 「なんていうの?名前」

篠宮(しのみや)未羽(みう)ですっ」

「お前と苗字一緒じゃーん!」

 そういって俺の肩をたたく佐藤。

 とりあえず当然の疑問を投げかけたい。この状況はなんなんだ?


 「あなたは?」

「佐藤 (さとし)!」

 「あとこいつは…」

「知ってます、定期で見たからっ」

 その後も佐藤とこの女は色々話している。……食い終わったから俺は帰っていいか?


 「それじゃ」

 また来てなー、と店長と思しきタオルを頭に巻いた中年男性が叫ぶ。

 「また明日ねっ」

 あの女の声だった気がするが、きっと幻聴だろう。同じ電車に乗ってる隣の学校の人ってだけで、もう繋がりなんてないのだから。

2話目で少しだけ登場したキャラクター、未羽の説明となりました。


お読みいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。

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