022_夏フェス参戦
「翔~~!!夏休みあっそぼーぜっ!!」
夏休み前日。後ろから駿が飛び乗ってきた。
「うああああ暑苦しーんだよ!!」
ただでさえ30度を上回る日なんだ。後ろから36度の物体にぎゅーっとされたらめちゃくちゃ暑いわ。
「お前には遊んでくれそうな女がたくさんいるだろ……」
「まあ、いるっちゃいるけど。1日ひとりずつデートしても夏休みだけじゃ終わんないくらいには」
じゃあ俺と遊ぶ必要もないだろうし、それにだ。
「下倉はどうすんだよ」
「そー。綾も俺の遊び相手の一人みたいにしたくないからさー。遊び相手と本命は別だもん」
「じゃあ下倉とデートすれば?」
「それが……どう誘って良いものか……」
うっすら顔を赤めてはにかみ指でもじもじしているのを見て
「お前は女誘いなれてんじゃねーのかよ!」
これがもしマンガだったら俺は今頃出自不明のハリセンで叩いてるところだった。
「だーかーらー、遊びと本命はちがうんだってー」
「知らねーよ」
「あーねー思いついた」
「ぁんだよ」
だんだん対応が雑になってきた。めんどくせー野郎だなぁ。
「俺と翔と綾で遊ぼう!」
は???
「ほらー、翔を餌にすれば綾絶対来るだろ?」
「そしたらお前の影薄くなんないのか?」
「いーのいーの、綾に会えるだけで嬉しいから」
なにこの平和な奴。
というか、下倉は「これで終わりにする」と言っていたはずじゃないか?
俺だってまだ未羽と仲直りできていないどころか会えない状況で、下倉を含んで遊びに行っちゃっていいものなのか?
「おっけーおっけー。だってオレの為だもん。綾と翔が二人きりで遊びに行くわけでもないんだし。さーて、綾を誘わなきゃっと」
「まだ俺行くとは言ってないんだからな!!」
7月27日。
「ひゃっほー、あっついねー」
髪が真っ赤な下倉さんと
「フェスは人密集するからもっと暑いだろうね~」
髪が真っ青な鈴谷さん。
いやお前ら高校生だよな?バンドマン以上に派手な髪色していないか?
まあ良かったよ。下倉はタンクトップにショートパンツという、夏フェスとして常識的な格好してきて。
ピンヒールにミニスカートで来られてたらぶち切れてたかもしれない。
まあ……周りの人よりも露出は高い気がするが。トップスが体のラインを強調しているし。
挨拶代わりに
「お前ら頭おかしくね?(意訳:髪の色、すげーな)」
「「は??」」
「綾目の下キラキラー!かわいーねっ」
「あはは、ありがとー」
駿が早速下倉を褒めると、まんざらでもなさそうに笑う。
こいつらいちゃいちゃしてやがる。もっとやれ。
「下倉……気合い入ってんな~」
俺はいつの間にか呟いていた。
下倉のメイクは汗で崩れることを考えてか控えめだが、その代わりに目の下からほっぺたにかけてラメを散りばめている。
「翔が一番気合い入ってると思うけど?全身Meanwhileじゃん」
う゛。ファン歴5年は優に越える俺のMW愛が全身からにじみ出ているらしい。
というか、前回未羽とライブに行ったときに買ったTシャツにタオルにリストバンドで全身装備し、そして缶バッヂをリュックに全部付けている。
「お前らだって髪色といいピアスといいあれかよ、出場者なのに間違えて客席にいるの?www」
「「だって夏休みぢゃーん」」
おふたりさんは遊び気分。俺はガチ。言わばヲタク。
「翔ってこんな人だっけ?」
「ロックは命だぜ……あ゛ー!!!Meanwhile出てきたあああああ!!」
「「ほんとだ」」
Meanwhile、今日は『Open the』と『猫少女』だったか。いやー素敵だ。でも最近タイアップばっかりだからタイアップ無しも出してほしいなぁー、
「Meanwhileはな、去年でメジャーデビュー10周年でさ、インディーズ時代のから俺は好きだけどまだ無名だったから知らなくてさ、メジャー3rdアルバム収録曲が小5の頃流行った映画の主題歌に採用されて一気に人気に火がついてさ、その辺から興味持ちだしてさ、小6の最後の方小遣い貯めてはじめてアルバム買ったときにな、あれだ、タカさんのギターとマッキーの歌が最高のハーモニーで間奏の時に城之内さんのドラムがドゥーンって来たときウッヒョーってなって」
「……愛は伝わったよ」
おい鈴谷聞く気ねーだろ。
「まだ馴れ初めを話してるだけで肝心な魅力についてが」
「まだ語れるの???」
「あと3時間くらい?」
鈴谷そんなに引いた顔しないでくれ。お前が女を好きなように、俺はMWが好きなんだ。いや、俺のMW愛はもっと深い。一生ついてく。
「なんか食べ物買ってくる」
「「いってら~」」
俺は食べ物を買いに人ごみを掻き分けていく中。
俺が探し求めていた人影を見つけた。
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次回予告☞続きです。敢えてタイトルは〈夏フェス1〉とかにしませんでしたが。




