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20年後に会った元カノ、昨日別れた元彼。  作者: 逢坂 遥
第一章 四月 はじまり
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002_教室に入る前から災難は始まる

二人目のヒロイン、現れる。

 俺の失態により、接し方が180度変わってしまった櫻にショックを受けすぎて、ずっと部屋に引きこもってシャワーのように泣いていた春休みが明けた。


 櫻は俺と違って頭が良い。

 それは俺と櫻、それぞれの中学進学時の成績を見ただけで明らかだった。俺は地元の公立中に通っていた一方、彼女は東浜(とうひん)大学附属中ーー生徒たちは『浜中(はまちゅう)』と呼ぶーーという、とてつもなく偏差値の高い私立中学に合格していた。

 ちなみに浜中は中高一貫(当たり前だが高校になったら略称は『浜高』になる)、余程悪い成績でない限り大学までエスカレーターだ。


 そこは今俺が通っている県立高校と最寄り駅が一緒だ。昨年度、俺が高校一年になってからは今まで毎朝櫻と一緒に電車に乗っていた。

 しかし櫻は俺のことを本当に嫌いになってしまったのか、7時前に俺が起きると同時に無言で家を出ていってしまった。

 そんなに早くに家を出て一体何時に学校に着くんだよ。


 櫻のいない満員電車に7駅20分間揺られるのは暇オブ暇。仕方なく、『Meanwhile』ーー俺の好きなバンドだーーの最新アルバムを安っちいイヤホンで聴いていた。


 『東浜大学前駅』(思いっきりそのまんま)に着き、降りようとした。しかし、降り口付近のオッサンのバッグに俺のポケットから伸びるイヤホンが引っかかってしまった。


 「さーせん」

「ったくクソガキが」


 なんだよ謝ってるのに。俺は悪くない。悪いのはこの1000円もしなかったイヤホンとオッサンのバッグだ。まあ八つ当たりだと言われれば言い返せないが。

 はあ、新学期早々イライラする。


 「す、すいません」

 喧騒で溢れかえる中に誰かに呼びかけるような女の声が聞こえる。透き通るような声がやけに印象に残ったが、ただの通行人Aだ。俺には関係ない。人の流れに従って階段を昇っていく。


 階段を上がりきったあたりでもう一度その女の声がした。

 「そ、そこの、シノミヤ ショウさん!!」

シノミヤ ショウ。俺のことだろう。なぜ名前を知られているのか分からなかったが、俺は首だけで振り返った。

「なんすか」


 「定期、落としてます」

 なるほど、定期券には確かに名前が印字されている。多分、オッサンに引っかかった勢いで落としてしまったのだろう。

 「……ざす」

 あまり顔も見ずにひったくるようにしてその女の手から取った。


 「あのさぁ」

まだ俺になんか用あるのかよ。

 「せっかく拾ってあげたのにその態度何様!?」

透き通った声の女はいきなりキレだした。いや、お前もお前で何様だよって感じだけど。


 決して甲高いわけではないが、澄んでいてよく通る声で言い放たれたために、道行くサラリーマンに学生に、人々がこちらをジロジロ見ながら過ぎていく。

 ああ、人生最悪の新学期だ。


 災難続きの朝、新学期早々遅刻ギリギリで校門を駆け抜けると、下駄箱のあたりで佐藤がニヤつきながら俺を待ちかまえるように立っていた。


 「おはよう翔く~ん」

 朝から顔も声も気持ち悪いぞ。元から顔は…さておき、元の声はなかなかイケボなくせに。


 「クラス発表廊下でされてたぞ。2年B組。俺ら今年も同じクラスだぜ」

佐藤とは中学も一緒で、中2の時以外今のところ全部クラスが一緒だ。つまり中3から3連続。

 「マジかよめんどくさ」

吐き捨てるように言った。

「めんどくさいなんてひっどいなぁー、傷ついちゃうよ?」


 大丈夫だ、この程度で佐藤は傷つかない。これは俺たち流の挨拶代わり。1日30回くらいなら暴言吐いても軽く受け流してくれる、そういう仲なのだ。


 ところでさっき俺が校門をくぐり抜けたのは始業1分を切ったタイミング。佐藤だってのんびり俺を待ってたせいで遅刻扱いになるかもしれない。

 教室に入った時には既にホームルームが始まっている可能性が高い。

 「とりあえず急ごうぜ」

「進級早々遅刻ってか」


 二年になり二十何段か昇る段数が増えた階段を二段飛ばしで駆け上がっていく。

 佐藤がいたから今年のクラス替えも当たりだ、なんて安堵してしまった。

 しかし俺の一番苦手な『あいつ』も同じクラスだと言うことはまだ知らなかった。

一応、二人目のヒロインは登場はしましたがほとんど素性が分かりませんね。細かい描写はまた今度。


お読みいただきありがとうございました。


次回も読んでいただけると幸いです。

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