第一話
願いを…… 、 願いを一つ。
もしこの願いが届くなら、 すべてを最初に戻したい。
それが僕の望み。
…… 。
夢を見ていた、ずっと前から果てしなく壮大で長きに渡る戦いの夢を……。
始まりは何時だって唐突に訪れる、僕の心を置き去りにして。
【プロローグ・在りし日の為に】
…… …… 。
なんだろう目が覚めてるはずなのに瞼が開かない、体の感覚はあって、
心臓が苦しいほどに悲鳴をあげて稼働して、全身を使って体を振り絞り、何かを振り回してる感覚がはっきりとわかるのに。
目の前が真っ暗だ。
瞼が開かない、なんでだろう、
怖い……なんだろうこの感覚は、
僕は一体どうしちゃったんだろうか?
開け、開け、開けっ!!!
――っ!ガキンッ
視界が開けた瞬間目に入ってきたのは巨大な刃渡りの斧をはじき返した感触とその場面だった。
『〇〇の覚醒を確認-オートモードを解除します』
「えっ」脳内に電子音声のようなアナウンスが流れたかと思うと、両手にずっしりとした重厚な重みを感じて抱えきれずにソレを落としてしまう。
「馬鹿が!獲物を取り落としやがった!」
大きな斧を持った巨体の武人らしき人物の後ろから走って来た騎馬兵らしき人物が獰猛に笑みを浮かべて長刀を振りかざしてくる。
えっ……僕死ぬの?。 嫌だ、急に真っ暗闇から解放されたと思ったら、死ぬとかなんなの?嫌だ!死にたくない!怖い!怖い嫌だ!嫌だァああアア。
「馬鹿よせ!ソイツは」
『〇〇の危機を確認緊急オートモードに移行』
「ハッ……?」
ザシュッ――
えっ…… 何が起きたんだ、
コレ僕がやったのか?
「クッ、だからよせと言ったんだ…… コイツは、そんな見え見えの隙を晒すような奴じゃない……、しかし、これでコッチも後には引けなくなっちまった、皆の者気張れよ!ガイル侯爵の跡継ぎが死んだ!ここでコイツ打ち取らねばならん! このS級傭兵、音切りの信玄をな!!」
『危機回避を確認オートモードを解除します』
えっ、ちょっと待って、全然危機回避出来てないよっ!
てか音切りの信玄って何? なんでこっちをそんな決死の覚悟で見てくるの?
やめて、ほんとやめて、あっ重たっ なにこの武器持ってられない
ガコッ
「っ、その手には乗らん! 全軍矛の陣にて突撃い!」
ウォォォオオオオオオオ
その手って何!?、武器も落とした丸腰相手に百人以上で突撃とかなんなの!?
僕死んじゃうの?
まじなんなの?
ピィーーーーーー
「何!?この音は!? まずい音切り傭兵団の竜笛だと!? 全軍止まれぇぇえええ」
ドドーーン
「「グワァァァァア」」
なんだこの爆音はッ、
上から炎の玉が落ちてきてる、
うわっ、あまりの大きな音と振動にびっくりして思わず腰を地面に打ち付ける。
上空を見上げるとワイバーンらしき竜が旋回してはその背に乗る人影らしき者から大きな炎の玉が落ちてくる。
ドドーン
「グゥ、撤退だ! 全軍撤退だ!左右反転! 下げの陣にて全軍撤退!!」
ぅう…助かった…のかな?
目前まで迫ってきてた軍勢が後退していく。
「信玄様ご無事ですか?」
ビクゥ、いつのまに後ろに……てかなんでミニスカート忍者な恰好……?
ゔ、頭痛っ、あれ…… ? え、なんか急に色々わかっちゃうんだけど、こわい、
僕は信玄で……
傭兵団の統領で……
あれ……
魔法に貴族に冒険者に……
ドラゴンに…… あっ…… ここ異世界だ。
【神】願いは叶えたぞ、心優しき少年、
すべては、最初に―― 前々前々前々(ぜんぜんぜんぜんぜんぜん)×10000 世の最初の魂に――
つづく。