幽霊出没注意!!
「何度見ても雰囲気のある廃墟だね」
「幽霊とか出たりしてな」
「ちょっと、怖いこと言わないでよ」
一組のカップルが腕を絡ませて、廃墟となった古いホテルの中を回っている。
二人は生粋の廃墟マニアで、朽ちた建物を探索し、ノスタルジーを感じるのが大好きだった。
馴れ初めも、廃墟探索中に出会い、廃墟トークで盛り上がったことだというのだから相当だ。
「このホテルが廃業してから、どれくらいだっけ?」
「確か、今年で30年だったかな。立地の問題で、土地としての面白味も無いから、この通り廃墟のまま残されてる」
「30年か。確かに、大分傷んでるね」
「足元には気をつけなよ。そうそうないとは思うけど、床が崩落するかもしれない」
「大丈夫だよ。私達、廃墟慣れしてるし」
「まあそうだけどさ」
冗談半分にそんなことを言いながら、それまで探索していた二階から、一階のエントランスに降りると。
「ねえ、誰かいない?」
エントランスの入り口付近に、怪しげな人影を見つけた。
後ろ姿しか確認できないが、服装や髪色の印象から、帽子をかぶった若い男性のように思えた。
「入ってきた時には、僕達だけだったはずだけど」
「探索に来た人かな?」
「ここは割とマイナーな場所だし、そうそう出くわすとは思えないけどな」
「……まさか、本当に幽霊?」
「ここで人が死んだって話は聞かないけども……」
話題に上げた直後だったということもあり、二人は自然と幽霊の存在を意識してしまう。
「あの……廃墟探索ですか?」
意を決した二人が、帽子の男性の正体を確かめるために、その背中に向けて声をかけた。
二人の声に帽子の男性が反応し、ゆっくりと振り返る。
帽子の男性のその緩慢な動作が、声をかけた二人に緊張を生む。
そして、振り返った帽子の男性と二人の目があった瞬間。
「うわああああああ!」
絶叫が廃ホテル内に木霊した。
ホテルが廃墟になってから早35年。
当初は無名の廃墟であったが、ある事故が起こって以来、その評価は変わった。
5年前に廃墟探索に訪れたカップルが、老朽化による三階部分の床の崩落に巻き込まれ死亡したのだ。
それ以来、自分達が死んだことに気づいていないカップルの幽霊が、今だに廃墟探索を続けているという噂が流れ、この廃墟を訪れるオカルトマニア達は後を絶たない。
今やこの廃ホテルは、有名な心霊スポットなのである。
了




