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霊界の三毛猫  作者: いりごま
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霹靂

友人に勧められての初投稿です。自分の書きやすいジャンルを書いてみました。このお話は多少続く予定です。

ここへ来たのはかなり昔のことで、数年、いや数十年経っているのかもしれない。満足というわけでもないがしかし、あちらの世界のことを思い出さない日は多くない。なぜ、こうなってしまったのだろうか・・・・・・。


俺はごくごく普通のサラリーマンだ。そして、平凡という言葉がぴったりなくらいに器用貧乏で、なんでもできるが極めることはできない人間だ。今日もそれが存分に発揮され、残業することになってしまった。

仕事を終わらせ、いつも通り電車で帰ろうとするも、電光掲示板には「運転見合わせ」の文字が。周囲の人々も混乱しているようだ。

「お客様に列車の運転見合わせについてお知らせします。22:17分頃、南橘本線の東橘駅 柚坂駅間の大雨のため、東橘駅 柚坂駅間の上下線の列車の運転を見合わせます。」

「お急ぎのところ、ご迷惑をおかけします。」

本当に大雨か?さっきまで月がはっきりと見えていたぞ。不思議に思った俺はSNSでこの辺りの情報について探した。タイムラインを遡っていくと...あった。友人の書き込みだ。そこには柚坂駅前から撮ったと思われる写真も添付されている。

「【なんかおかしいぞ皆】」

俺は添付画像を見て目を疑った。空は晴れているのに、大雨が降っている。しかも、この辺りは光害で星なんか見えないはずなのに、綺麗に天の川が写っているではないか。スマホのカメラでこんなに綺麗に撮れるはずはない。しかし、バッチリ撮れてしまっている。

異変を感じ取った俺はすぐさま駅を出た。雨は降っていない。空を見ても、星は見えない。どうなっているんだ。友人は先週、俺に画像の加工技術を教えてもらったばかりの初心者だから、SNSの添付画像が合成写真だということも考えにくい。信じがたいが、これは現実だ。

悩んだ末、ゲームのギルドに気象予報士がいることを思い出し、スマホでゲームアプリを開こうとしたそのとき、強い静電気のようなものが全身に走った。それは一瞬の出来事だった。

擬音語で表現できないような大きな音がしたと思ったら、今度は音が消え、辺りが真っ暗になった。

そして、俺は倒れた。


ここまでしか記憶はない。周りの人が呼びかける声も聞こえた気がするが、それも定かではない。その後どうなったのかも全く分からない。目を開けると、見たこともない場所にいたからだ。広い草原。ただただ、知らない土地が広がっていた。およそ知れ渡っている普通の建物などはなく、電柱が俺の両脇に1本ずつ、その5メートルくらい先に何故か鳥居、さらにその5メートル先に電柱が2本...という景色が延々と続いていた。空は墨汁をこぼしたようにどす黒い積乱雲で埋め尽くされ、強い風が絶え間なく吹いている。

「なんだよこれ...」

思わず、口から言葉が出た。当たり前だ。こんな景色は人間が作るものじゃない。俺は死んだか、倒れたときに頭を打っておかしくなってしまったのだろうか。


ここはどこなのだろう。電柱があるということは、少なくとも住所くらいは書かれているはずだ。俺は地面に突っ伏した体を起き上がらせた。

「あれ...ちょっと身長縮んだかな」

ちょっとどころではない。相当縮んでいる。立ってみても1.5メートルくらいしかないようだ。それに、手もおかしい。肉球のようなものがついている。電柱に近づこうとする足もおぼつかないもので、何度も転びそうになった。やっとの思いで電柱に辿り着き、住所を読んでみた。

「旭鍬芦16・魂門裏」

旭鍬芦なんて地名あったかな...それに、住所らしいものの後に書かれている「魂門裏」は何を意味しているのだろう。ググれば出てくるかな。しかし、近くに落ちていた自分のスマホは圏外の上、文字化けしていて使い物にならず、圏外でも使える辞書アプリを開いてみても強制終了してだめだった。どうやら、自分で情報を集めるしかないようだ。


この不思議な世界へ来てから1時間くらい経ち、ここはどこなのか、これからどうすればよいのかをじっくりと考えていたとき、低い声が後ろから聞こえた。

「しばらくでございます。」

びっくりして飛び上がってしまった。振り返ると、スーツを着た大男が立っていた。電話ボックスくらいの背丈はある。肩幅が広く、がっちりとした体格で、それでいて般若の能面を掛けて顔を隠し、帽子を被って、白手袋を着けている。随分へんてこな格好だが、周囲の暗さと相まって恐怖は十分に感じた。

「お変わりございませんか。実は私は先月まで時間界の方へ視察へ行っておりまして...」

「ちょ、ちょっとまってくれ。『時間界』ってどういうことだ?ここと現実じゃ、世界が違うのか?」

「覚えていらっしゃらないのですか?」

どうやら、何か勘違いをしているようだ。誤解を解くにはまずこちらから話すべきか。

「なるほど、あなたは三毛様ではないのですね。ふむ、中身は時間界の人間、エアコンを取り扱う仕事に就いている、と。」

時間界というのはどうやら俺の元いた世界のことのようで、こことは別の世界らしい。そして、男の言うことは全て合っている。こいつ...心が読めるとでもいうのか...。

「たまに人間がこちらへ来ることはあります。たいていは時間界へ返すのですが、まさか三毛様の中に入っているとは...。仕方ありません、説明しましょう。」


この後、体感で30分ほどの間、男から様々な説明を受けた。ここは「霊界」といい、物質の概念が時間界、つまり人間の世界とは異なるために人間にとっては時間がない世界で、(あやかし)の体を持たなければ動くことすらできない、妖が蠢く世界だそうだ。また、男の名前は(かげ)といい、霊界で雑務をこなす者の一人で、先月まで人間を装って時間界を見てきたらしい。俺の今の体については、陰が雲外鏡なる妖を呼び寄せて見せてくれた。俺の今の体は太った三毛猫のようだったが、微妙に違う。まず、驚いたのは体が地面から20センチほど浮いているということだ。そして、話に夢中で気が付かなかったが、尻尾も二本生えている。この体の主は三毛様と呼ばれる霊界の総大将で、雷を使える妖らしく、雷の出し方を陰に教えてもらうと、スタンガンくらいの放電はできた。


最後にこの世界の中心となる場所を言って、陰の話は終わった。俺はすかさず質問をする。

「一つ聞いてもいいか?」

「お答えできる範囲なら」

「俺は死んだのか?」

10秒ほど、沈黙が続いた。早く答えてくれよ。不安になるじゃないか。

「いいえ、単に気絶しているだけです。雷の側撃雷を受け、今は病院にいるようですね。」

良かった。死んではいないらしい。ただ、意識はないようなので早く戻ったほうがよさそうだ。だが、簡単に戻れるのだろうか。陰は普通、人間は時間界へ返すと言っていたが、かなり長く話しているのに元の体へ戻る方法についてはまだ触れていない。つまり時間界の生物が妖の体に入ってしまった場合の対処法を知らないということだ。厄介だな。

「私はその対処法を探りに時間界へ行きますので、私を待っている間、よければ霊界を楽しんでいってください。」

そう言って陰は手刀で空を切る動作をすると、開いた真っ黒な空間に飛び込んで消えていった。

書いていて楽しかったのですが、それでも疲れてしまいましたw

やはり想像を膨らませるのには苦労しますね。

次回は霊界のあれこれについて書きたいと思います。

書いている途中で気持ちが変わって展開があるかもしれませんが。

投稿は決まって夜中の2時とします。妖怪が出てくるお話ですからねw

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