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王子様とお嬢様

「プーアル!プーアル!」

リネンを抱えて廊下を進んでいると、珍しい人から声がかかった。

「カルディ様。」

彼はシトラス家の長男、カルディ・シトラス様だ。

「いつ戻られたのですか!?」

エディアン王国外交官の職を継ぐために、王宮で学んでいたはずなのだが・・・

「たった今だ!それより父上とメイプリルはどこにいる!?」

「旦那様は書斎に、メイプリル様は庭で日向ぼっこを・・・」

「日向ぼっこだァ!?と、とにかく今すぐメイプリルをドレスに着替えさせておいてくれ、私は父上の所へ行ってくる!」

何があったのかわからないが、とにかく言われたとおりに動くしかあるまい。

ズカズカと立ち去るカルディから視線を逸らし、プーアルは自分の使える主人の元へと急いだ。


「ええっ!?国王陛下がお見えになるですって!?」

私のキンキン声がお父様の書斎に響き渡った。

「今晩な、クオーツ様もだ。」

「どうえっ!?」

お父様ったら、だから急にドレスに着替えろなんて言い出したのね。

「それがお前とクオーツ様のご婚約の件で内密に相談があるらしく、お忍びでいらっしゃるようだ。」

「婚約破棄かしら!?」

内心ガッツポーズだ。確か主人公ヒロインがクオーツ王子ルートに入ると、私の生存確率がグッと低くなる、というかほぼゼロに近かったはずだ。死にたくないし、危険な芽は早めにつぶしておくのが得策よね。

「こら、メイプリル。滅多な事を言うものじゃないぞ。」

「そうだぞ、お前。もう少し危機感を持てよ・・・」

「あら、別にいいですわ。」

しれっと言い返せば眉間を押さえたお父様と、同じく眉間をぐりぐりほぐすお兄様が「あのなぁ・・・」と疲れた声を出している。さすが親子ね、そっくりだわ。

「王家の方との婚約が破棄になったと知れれば、他に嫁の貰い手なんて付かなくなるぞ。」

「あら、それもいいですわね。」

ニコニコと言い返せば言うだけ無駄と悟ったのか、兄は口を閉ざした。結婚云々よりも、まずは学園を卒業し生き延びて、会わなければいけない人がいる。話はそれからだ。

「仕方あるまい、全ては陛下たちが到着なさってからの話だ。」



「やっほ~メイちゃん久しぶり~!」

「お久しぶりです、クオーツ様!」

陛下が到着してすぐに、お父様と応接室に引きこもってしまったので、私とクオーツ王子は別の応接間でお菓子を食べ始めた。

「ちょっと相談ごとがあるんだけど・・・婚約破棄してもらいたくて・・・」

「ゴフッ!」

よそはしていたが、急にドストレートに話されたもんで、ビックリしてクッキーを喉に詰まらせそうになった。

「大丈夫!?」

「だ、だいじょ・・・婚約破棄ィ?!」

とりあえず建前上驚いておくか。

「ほんとゴメン!実は好きな人ができて・・・」

「私は構いませんが、国王様はそれで良いと?」

「ほんとゴメ・・・え、今なんて?」

「構いません。元々クオーツ様には親愛感情はあっても、恋愛感情はございませんでしたし。」

にこっと笑ってやれば、彼の顔色はぱあっと明るくなる。

「本当かい!?良かったあ!良かったのか?ウン、良かったな!」

「確かにクオーツ様との婚約は身に余る光栄でございましたが、お慕いしている方がいらっしゃるのであれば、その方とご一緒になられた方が良いと思いますわ。」

それにバッドエンドへの芽は摘んでおきたいし!シナリオにはなかった王宮でのドロドロ愛憎劇とか始まっても、たまったもんじゃないしね。

「メイちゃん・・・」

「して、お相手は?」

「トルティリスア王国の第1王女、アイリーン・ドウル・トルティリア様。今学園に留学にいらしてて・・・とても可憐で美しくてお優しい方なんだ・・・先日僕が育てたバラをプレゼントしたらとても喜んでくださって・・・」

そこまで聞いてないよ。でも本当に好きなんだなあ、目が超優しいし。

「応援しておりますわ!」

力強くそう言うと、ありがとう!と我が国の王子様はキラキラと笑った。視界の端でプーアルがため息をついたのは、聞こえなかった事にした。


「公式発表前でメイプリル嬢が快諾してくれたから良かったものの・・・今後はこういうことは慎むように。」

「はい、父上様!」

なんだか急に老け込んだ陛下と、逆にイキイキし始めた王子は、二人並んで玄関に立つ。

「まったく・・・すまないなカルバン。」

「いえいえ、滅相もございません。むしろクオーツ様とトルティリスア第一王女様が良い仲になれば、今以上に友好的な関係を築けることになりましょう。」

お父様もちょっとやつれてるわね。まあ本人同士がいいから大丈夫、って訳じゃないのはわかるんだけどね。国内の勢力にも関係してくる事だから・・・まあ私はわが身が一番かわいいからな!許せ!

「ではまた、メイプリル嬢。これからもいい友人でいてくれ。」

「身に余る光栄でございます、承知いたしました。」


そして婚約パーティ用に作ったドレスが届き、着る場がない!と嘆くのはもう少し後のお話。


登場人物紹介

クオーツ・エディアン

エディアン王国の第2皇子、メイプリルの元婚約者。エディアンマジシャンズスクールの3年生。メイプリルのことは妹のように可愛がっているし、比較的プーアルとも仲が良い。正直2人がくっつけばいいと思っている。トルティリスア王国の第1王女、アイリーン・ドウル・トルティリアに一目惚れしている。


カルディ・シトラス

シトラス家長男でメイプリルの兄。おっとりしているが狙った獲物は逃さないタイプ。今は仕事ダイスキ、マダムキラー。父親似。


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