表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/82

世界の神様に会いに行くの!


「心配しなくても、普通の女性になる予定です」


「あら残念。お金持ちにならなくてもいいの?」


「お金持ちになりたいなら、株投資なんてしない方が良いよ。これはお金を持ってる人が更にお金を儲ける為のシステムだから」


(つまり、今、頬白家は金持ちなのか、そうでは無いのか、どっちなんだろう)


 こうして毎日株投資をしているという事は、お金持ちだという事になるが……。


「あ、お姉ちゃんの言ってた銘柄、落ちたね」


 先ほど真結が指摘した会社の株の値段があっという間に7割ほどに減っていた。


「落ちた理由ってわかるの?」


「分からないよ。お姉ちゃんが言ってくれなかったら500万ほど損してた」


「ごっ、500万!?」


 間違いない、頬白家は金持ちだ。平凡な俺の家とは比べものにならないほどの。俺が目を見開いてその巨額に驚いていると、すかさず襟亜さんが俺に尋ねてきた。


「さて問題です。500万あったら、弓塚君は何に使いますか?」


 そう聞いてきた襟亜さんを含め三人が俺の顔を見る。下手な事を言えばどんな辛辣な答えが返って来るか分かったものじゃなかった。


「ちょ、貯金します」


「模範的な解答ね。ちょっと今のはプレッシャーをかけ過ぎたわね」


「真結は旅行してみたいなぁ」


「旅行かぁ、硯は南国のリゾートホテルとか、一度ぐらい行ってみたいかな?」


「真結はね! アステカ! マチュピチュ! チチェンイツァ!」


「それってどこなの!?」


 真結のよくわからないオーダーに、俺は軽い目眩を感じた。もし真結が一緒に旅行に行きたいと言えば、勿論俺は一緒に行く。だが今、アステカという言葉を聞いただけで、旅行ではなく、過酷な冒険が脳裏に浮かんでいた。


「世界の神様に会いに行くの!」


「やめてくれ、神々にもテリトリーというのがあるのだぞ」


「あっ、ウサ子先輩、こんにちわ」


「ウサ子とは何ぞ? どういう意味なのじゃ?」


「ウサギの女の子って意味ですよ、多分」


 窓の外から、窓を開けずにすり抜けて入って来たウサギ耳の天使にそう答えると、シャンダウ・ローの天使は硯ちゃんの横、空いている所に静かに正座した。


「ラビエルで良いと言っておろうが」


「でも、先輩の名を呼び捨てにするのは失礼ですから……」


「あの、天使様、席をお譲りしましょうか?」


「いや、ここでいい。この部屋のテリトリーは大体把握しておる。空いているのがここだったから、私はここでいい」


「敷地はテリトリーに入らないんですの? 一応ここは魔女の家なんですけど」


「小姑め、良縁に恵まれんぞ」


「かまいません。結婚する気はありませんから」


「それは困る。私の領分は縁結びなのだ」


「当人が希望してないんですから、放っておいて下さい」


「結婚かどうかは分からぬが、縁者が来るという運気は見えるぞ」


「縁者……? うーん……誰が来ても迷惑な方ばかりですわね……」


 人差し指を顎に当てた襟亜さんが、笑顔を崩し、困った顔で悩んでいた。襟亜さんに縁がある人というのは、どんな人なのだろうか。やはりコイルさんの様に、想いを馳せた男性なのだろうか。俺も想像してみたが、確かに誰が来ても襟亜さんには邪魔な存在でしかない様な気がした。


「真結、お前がいるという事は、燃える犬の話をしていたのであろうな」


「あっ、そうなの襟亜お姉ちゃん! さっきね、縫香お姉ちゃんに誰かが燃える犬をぶつけてきたの!」


「燃える……犬?」


「テラヴィスが動き始めているぞ、縫香は既に龍脈の流れを追っているが、その途中で襲撃されたらしい。その事を報せに来たのだ」


「私も、その事を報せる為に帰ってきたの!」


(そうだったのか……)


 いずれはその話題になるのは分かっていたが、今までの真結の言動から見る限り、すっかり忘れきっていた様に見えた。使い魔の事とか投資の話とか、先に目についた話題があったからだが。


「姉さんからは、何も連絡が無かったから、守りに行かなかったのだけど……」


「何か分からないが、何か大変な事が起きていると言ってました」


「うむ、相手が相手だからな……この人間には話をしても良いのか? 真結の良人であるのは知っておるが」


「いいんじゃないかな。お兄ちゃんのお友達に町田さんと来島さんって人が居て、その二人も頼りになると思う」


「二人とも、燃える犬について調べてみるって。デイダラとかいう悪魔の名前が出ていたけど……」


「デイダラがこの現世に手を出す事はまず無い。彼奴らには敵対する神が居る。その相手で精一杯の筈じゃ。燃える犬の話は確かにデイダラの悪魔の一人が、村人達を怖がらせる為にした嫌がらせだが、直接は関係ないじゃろう」


「悪趣味という点で似た者がした事かしら」


「そうじゃな。意味があってした事には違いない。挨拶代わりに燃えている犬をぶつけるという事そのものが、何かのメッセージを含んでおると見た方がよい」


「テラヴィスには近づくなという警告かしら?」


「その逆もありえる。どちらの意味を持っているのか、縫香は知っておるかもしれんな」


「あぁ、姉さんから連絡が無いのは、特に私の力が必要じゃないから……」


「あの……テラヴィスさんって……どなたですか?」


「とても強い力の魔女で、白竜の心臓を食べた罪で魔界を逃げ回っていたの。それが最近になって人間界に来たみたいなんだよね」


 真結はごく普通の世間話をする様に、クッキーをもそもそと食べながらそう説明してくれた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ