第3章:午後一番の講義
昼が過ぎ、日差しが最も強い時間帯が来た。
神殿内に木漏れ日が入るが、温かいというより暑苦しく眩しい。
そんな中、午後の講義が始まる。
「えー、では午後の講義を始める、と、あれだ?さっきのテストの結果をを基に各々のトレーニングメニュー表を作成した、今から配るからよく読んどけよ」
カインは三人の少女にトレーニングメニュー表を配り、待機することにしたようだ。
「そんで、俺はちょっと用意するものがあるから、ここで待機しててね」
カインがいうとその場を立ち去る。
「「「・・・・・」」」
しん、とその場が一時静まり返るが、
「瞑想・・・しんどそうだ・・・」
「え、えーっと、ミニハードルによるスプリントドリル?こうやってこうやるんですね!あわわ・・・難しそうです」
リンとサマンサはお互い結構苦手な分野の課題が出て、今後の不安を感じている表情を浮かべている。
一方、わなわなと震えながら少々怒りを表す少女がここに
「ど、読書・・・それも漫画ですって・・・。折角勇者になるための厳しい訓練ができると思っていたのに・・・・・」
アルスに出された課題は「勇者ものの漫画全巻(全10巻)セットの読破」である。
しばらくすると、カインが戻ってくる。
「よし!では各々のトレーニングについて説明する!よーく聞けよ!」
「「「よろしくお願いします」」」
トレーニングの解説が始まる。
「まず、リンには瞑想をやってもらう。お前は、魔力がまだうまく練れていない様だよ。そう!イメージするのさ、例えば風を起こしたい場合、どこからどこまでか風吹き抜けるイメージを脳に思い込ませていくんだ。目をつむると、より集中してイメージできるといわれている。リンは落ち着きがないようだから、一旦動きを止めて一つのことだけを考えろ!」
「と、とりあえずやってみます!」
次はサマンサの番である。
「サマンサは、まあ、こういっちゃ失礼にあたるかもしれんがはっきり言って運動音痴だな。そこでだ・・・・・。下半身の筋力・柔軟性の向上を目指してミニハードルのメニューにした」
「なんで下半身なんです?」
「いい質問だ!戦士の武器である刀剣を扱うにはもちろん腕力が必要だ。ただ、君の場合その腕力以前の問題だ。すぐつまずくんだ。足が上手く上がっていないからな。そもそも前線で動き回るに脚力が必要だし、刀剣を振るうときにも足腰が最もものをいう。現に小柄な戦士でも巨大な刀剣を振りまわすってのもいるが、ぶっちゃげ腕力っていうより、フットワークが最重要なんだ。まずは思ったところに足がちゃんと動かせるかのトレーニングをこれから君には行ってもらうよ」
「は、はい!わかりましたっ」
カインが各々のトレーニングメニューの解説を入れる。
そこに、ジトっとした視線がカインに突き付けられる。
「先生・・・。私は?」
アルスはカインを睨み付けながらそう言った。
「おっと、忘れてた!お前ね!えーっと、さっきの黒い稲妻なんだが・・・正直俺にはなんで魔術発動が黒く出てしまうのかが良く分からないんだ。なんていえばいいんだか・・・禍々しいって言えばいいのかなぁ?勇者って基本そんな禍々しい呪文とか技って使わないもんだと思うんだが。そんで、魔術ってのは先ほどリンに説明した通り、イメージなんだよ。まぁ、使用者本人の適性もあるから一概に同じように魔術が打てるってわけでもないんだが。お前は勇者を目指してるんだろ?じゃあ、勇者とは何なのか?っていうものをビジュアル・ストーリー両面からイメージしやすいと思って漫画にしたんだ」
「トレーニングとかじゃないんですか?」
「アルスさん。君は魔力も運動能力もすでに高いレベルにある。正直俺でもかなわないくらいには、ポテンシャルを持っているよ。でも勇者が禍々しい悪のオーラってあんまに合わないじゃん?だからそのトレーニングなんだよ!」
「はーい」
いやいやそうにアルスは返事をする。
三人のトレーニングが始まった。
先ほどの職員休憩室にいた女性が教室内に入ってきた。
「おーおー、順調にやってるねぇ」
「あ、トローリーさん。トレーニングメニューを3人に割り振ってたところです」
カインは軽く会釈しながらそう言った。
「どうよ?仕事一日目の感想は?」
「人を育てるのも簡単じゃないですねぇ。僕の担当3人とも希望職種の適性ゼロなんですから!」
「でもそれって逆に言えばチャンスだよカイン君。君の株を上げるのも下げるのもね。うん、君次第さ、大丈夫、仮にも“ラスボス”撃退したギルドのメンバーなんだから、自信もちなよ!」
「はーいっす」
ぽん!と背中を叩かれ、カインは生返事をして仕事に戻る。
「はぁーどんなもんかねぇ、俺って」
カインはため息をつきながら物思いにふける。
―――――1年前
俺は、とある冒険ギルドの臨時メンバー(賢者)として欠員の穴を受ける形で、所属し、魔王を倒すための旅をしていた。
旅を続けるうち、メンバーとは打ち解けあい、一丸となって魔王を倒した。そして、無事帰還し、高位の称号を得てハッピーエンドな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はずだった。
―――――「先生!先生!」
「先生!何ボーっとしているんですか!?」
カインはどうやら物思いにふけっていたらしい。
「うぉおう、ごめん、そんじゃ小休止入れてあとさっきのトレーニングメニューの続きだ!」
正気に戻ったかのようにカインは休憩の合図を生徒たちに贈った。