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第2章:休憩時間

 カインは、三人の記録を持って職員休憩室へ戻った。

 神殿全体が石で作られているため、ここも例外ではなく、石造りなのであるが、神殿全体の中では割と静かな場所であることは確かである。

 カインは休憩室の椅子に座って、考え込む。

「う~ん、データは一応取ったんだがなぁ・・・、3人とも志望職種と全然かみ合ってないような気がするんだよなぁ・・・」

 ため息を漏らしていたカインをよそ眼に、他職員が割り込んでくる。

 その職員はパッと見スタイルは良く、どちらかというとお姉さんタイプな人物だ。

「君、今日から入ったんだってね。私はトローリー・バースていうの、よろしくね~。」

近い、近い!

カインはそのグラマラスな体躯に照れを隠せていない。

「よ、よろしくお願いします、トローリーさん。僕の名前はカイン・トーヌラといいます」

「ん~早速苦戦してるんだ、勇者志望に魔術師志望、戦士志望もいるんだな」

「はい、3人とも志望職種がばらけています。なので結構大変だと自分では思うんですが・・・」

 カインはトローリーという女性に教えを乞いた。

「僕としては、このデータをもとに各々の訓練メニューを作成し、能力を伸ばそうと考えているんですが、どうも魔術師志望と戦士志望の2人に関しては、元の職業のまんまでもいいんじゃないかと、残り1人は元魔王の娘という特殊な立場でして・・・」

 カインはそういうと、頭をくしゃくしゃ掻き出した。

「そんな頭かきむしると剥げるぞ!私もそこまで君にアドバイスは送れないんだけどガンバ!」

「ええええええええええええ」

 トローリーさんはにんまり顔でクールにこの場を去った。

「考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ考えるんだ」

 カインは明らかにパニックになった。

 ポクポクポク・・・・・と脳内で木魚の音が響き、チーンと鳴った気がした。

「うん、今どうやってもひらめかないから、飯だ、飯ィ!」

 カインは一時戦略的撤退(休憩)を図った。


 カインは、カツカツと石造りの通路を響かせ、食堂に向かう。

 日は建物内に差しているが、全体的に薄暗く寒々しい。

「えーと、食堂はこう行くのね、まるで迷路のような神殿だな」

 さすがに所見では迷子になりかねない転職神殿で事前に貰った神殿内地図を用いて、カインは食堂の位置を探る。

 突き当りの角を曲がり数十メートルほど前進すると、「食堂」と書いてある看板を発見した。

 料理の香ばしい香りがプンプンと匂ってきて食欲がさらに増進される。

「うん、ここか、腹が減っては何とかだもんな」

 香りにつられて気分がノリノリになる。

 カインは食堂の入り口から入場した。

 入り口に入ると食券売り場がある。券売機は魔術で動いており、お金を入れると食券が出てくるようになっている。

 この食堂は、価格が安く、その割には美味しいため、訓練生のみならず職員も利用している者は多いとのことだ。料理は季節の野菜、採れたての獣や魔物の肉などをふんだんに使ったフレッシュな料理が主流である。

 カインは食券を受け取り、料理を受け取って席を探す。

「席があんま空いてないなぁ・・・」

 キョロキョロと周りを探す。

「あ、あそこが空いてる」

 ここぞとばかりに、カインは空いている席に一直線で向かった。

「よっこらしょ、と、あれ?」

「「「あ、先生?」」」

 先ほど指導していた生徒たちが3人ともそろい踏みして食事していた。

「おー、お前らか、何食ってんだ?」

 カインのグルメな性分のためか、調子づいて3人の生徒たちになれなれしくつい聞いてしまった。

 サマンサは、小柄な割によく食べるようだ。空魚と呼ばれる天空高く飛ぶ魚類のソテーとチーズがちりばめられたサラダ、コーンスープに主食はフランスパンとバランスもとれている。

 続いて、リンのメニューは、ファイヤーバードの肉の入ったカレーライスにミニラーメンのセットと炭水化物オン炭水化物である。

 ちなみにカインのメニューは、ランドドラゴンと呼ばれる陸生の雑食のドラゴンの肉を燻製にしたベーコンが入ったクリームキノコパスタとコーンスープ、チーズ入りサラダである。

「リンのカレー、香ばしいな?」

「先生も一口どうです?間接キスになっちゃいますけど、はい、スプーン」

「だ、大丈夫だ自分用のスプーンあるからね?周り女の子だらけだからね?」

 少々顔を赤らめながらカインはリンのスプーンの受け取りを断り、カレーをすくった。

「あー、先生照れてんの?かぁいいい!」

「はいはい、俺、ガキには興味ないから・・・」

 そのとき、アルスとサマンサから鋭い視線を感じ取ってカインは若干怖気づきながら、

「ではいただきます!」

 カレーと肉を同時に口の中へ放り込む。

 う~ん、スパイシー。肉もトロトロでいい塩梅・・・と思っていたら、

「あ、先生それ激辛なんで・・・」

「な、何ィ・・・!?むぐぐ・・・・・・・・・・・・・・ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!み、みすうううう(水)!」

 カインはもだえ苦しんだ。

 ファイヤーバードが辛いことはカインも重々承知していたが、カレールーもかなり激辛で相乗効果で超激辛だったのである。

 緊急で水を飲み下し、安どの表情をカインは浮かべる。

 リンは相当の辛いもの好きなのかとカインはそう思った。

 カインはアルスのおぼんを見る。

 アップルパイが一つにヨーグルトとどこか寂しげだ。

「何見てるのよ、先生。」

 カインはじろりとアルスににらまれる。

「そんな怖い顔しなくてもいいんじゃないすかアルスさん。っていうのも、お前、それで足りるのかなぁ、て思ってさ・・・」

「私にはこれで十分なんです。食べ過ぎたらこの後眠くなるし・・・」

「おーおー、真面目で結構ですねぇ」

 カインはそう言い、小皿にちょこんと彼のパスタを取り分け、そしてアルスの目の前に置く。

「ちょ・・・わ、私はこれで十分なのに、結構です」

「お父様のこと気にしてたら、出るべきところが出てこないゾー」

 言われるとアルスは赤面した。

「お父様が太ってるからって、べ、別に遺伝的な意味で太るかもとか気にしてるわけじゃないんです!」

「ま、食ってみ」

 カインに勧められたので仕方なくアルスは渋々パスタを食してみる。

 ちゅるちゅると音を立てながら少女の口の中にパスタが投入され、ベーコンとキノコ、クリームとともに咀嚼され、ごくりと喉の奥に飲み下される。

「お、おいしいわ・・・」

「だろ?」

 自信たっぷりげにカインはうなずいた。

 するとカインは立ち上がり、

「おばちゃーん、パスタこの娘にぃ!」

「いつものおかわりかい?」

「!?べ、別におかわりしたいとは言ってないわよー!」

 アルスは赤面し、ぷりぷりと怒り出す。

 ただ、どこかやっぱりほしそうな目をしている。

「ジョーダン、ジョーダン、俺がおかわりしかたったのよ?あれ?あれれー?やっぱりほしいのかなぁ~?」

 カインがおばちゃんからパスタを受け取ると、フォークにパスタを巻き取り、アルスの口に差し出す。

「はい、あ~ん」

「せ、先生!?・・・・・あ、・・・・・・・・・あ――――――――――」

「お、おー!先生・・・!?だ、大胆・・・!」

「は、はぅううううう・・・・・」

 リンとサマンサは赤面し、怖気づく。

 カインの“はい、アーン”にアルスは応じて恥じらいに満ちた顔で応じる。

「あ―――うわあああん、パク!うん、やっぱ旨えなぁ、あっはっはっは!」

 アルスにお口にはパスタは入らず、フェイントをかけてカインが美味しくパスタをいただいていた。

「あれ?アルスさん?もしかして今のめっちゃ怒ってます?いやだなぁー、公衆の面前で本当に“はいアーン”するとでも?」

「先生!?・・・・・ちょっとそこに直りなさい?」

 ゴゴゴゴゴ・・・・・とわなわなと震えながらアルスは殺気とともに禍々しいオーラが彼女を包む。

 彼女の口から呪文が紡ぎ始める。

「轟け、雷雲よ・・・・・」

「ちょ、ちょっと!?アルスさん?ここは食堂ですよ?お気を確かにお気を確かに!?」

 食堂の天井に場違いと思うほどの暗雲が立ち込め渦を巻き、暗雲に電気が充電されていく。

「ミョルニルトール!」

「ちょ、待て?お、御身を守れ、フェノメノカーテン!ひっ、ぎょええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 ガラガラビシャーンと強烈な落雷電撃が展開された防御障壁ごとカインを襲った。

「「あは、あはは」」

 残る二人は苦笑いするしかなかった。


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