来訪者
朝起きると案の定昨日の手紙が置いてあった。やはり夢ではないと実感させられ、なんともいえない気持ちが再び湧き上がってきた。窓を見るとどんよりとした鈍色の雲が空に覆われていて、雨がすぐにでも降ってきそうな天気だった。
はぁ……と溜息交じりに吐いた息が少しだけ白く見えたのが冬が近いのを感じさせた。
「もうこんな季節なのですか……」
カレンダーを眺めふと思った事を口走った。今年も冬がやってくるのかと思うと気だるさが倍増。
この地域の冬は一月の半ばくらいには氷点下二十度近くになるため秋のは始めから半ばにかけてくらいから段々寒くなってくる。けれど暖房がつく日は病院内で決められているので、その日の一週間前とかは毎年部屋の中でも寒い。
だから、私達患者は基本ベッドから出ない。
リスが冬眠を始めるように私達も毛布にくるまって冬眠を始めるんです。
しかしそんな中でもうざったく感じるのがリハビリの時と来訪者という存在
。
前者は日時が決まっているので、しぶしぶ行くしかないので妥協してますが後者はなんといったって患者としてはずば抜けてだるいです。
いきなりやって来て長い間拘束されるのです。話を色々してくれるのは嬉しいのだけれど、こちらとしては寒いので早めにお引き取り願いたい。それか別の時に来てほしい。
この時期だけはやめてください。お願いします、神様。
昼頃になって、朝お願いした内容は叶うことなく散りました。──ああなんて神は非情なんだろう。
来訪者がやってきたのです。しかもその来訪者は、私が予想すらしなかった人だったのです。