14話 政務官劉璋
大変、お久しぶりです。目目連です。
密かに投稿します。
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「ところで劉璋さんの仕事なんだけど………」
「働きたくないでござる」
「……………………。どうしようか?」
劉璋の戯れ言はスル―され、劉備が玉座の間の一同を見渡す。
「とは言っても桃香さま。劉璋に何をやらせるつもりなのじゃ?」
厳顔の言葉にその場の全員が劉璋の顔を見る。
「ニシシシッ。何ですか?そんな見つめられたら照れちゃいますよ―」
(劉璋が働く……………いや、無いわぁ)
多くの家臣たちの共通意識としてそう思っていた。
「それで『コレ』に何をやらせるつもりですか?」
家臣一同を代表して劉備へと聞く法正。
「う~ん、それなんだけどね。とりあえず色々やってもらおうかと思ってるんだ」
「劉璋さんにはこれから各部署にてお手伝いをしてもらって各適正を見たいと思います」
劉備の言葉に諸葛亮が付け足す。
「さしあたってはどこからいきましょうか?」
「はい!」
そこで劉備の言葉を聞き、劉璋が手を上げる。
「………はい、劉璋さん」
「何故、皆僕の真名を呼んでくれないのですか―?」
「………とりあえず適当なところからいってみようか」
「えっ!?無視!?無視なの!?」
「――――で、先ずはここからですか………」
最初に派遣された場所は台所だった。
「とりあえず、ここで僕は何をすればいいのかな?」
「…………」
同行者へと話しかけたつもりだったが、相手からは反応がなかった。
「仕方ないですね―。…………サボりますか」
「私は一応監視役も兼ねているのですけど?」
ため息混じりに反応を示す同行者。
「うん、知ってるよ―。ちゃんとサボってましたって報告しておいてね、法正ちゃん」
「…………」
とりあえずお試し期間として各部署を回ることになった劉璋。そしてそのお目付役として同行させられたのは法正であった。
法正は各部署との調整が主な仕事だったので抜擢されたのだ。
「…………なんでこんなこと」
「ん?何か言いましたか、法正ちゃん?」
不機嫌そうな顔の法正に劉璋はホクホク笑顔で言うのだった。劉璋としては働くのはお断りであるが、好みの女性と行動を共にできる絶好のチャンスを逃すわけがなかった。
「………はぁ。これも仕事です。まずはここで調理番の手伝いをしてもらいます」
これも仕事であると割り切り法正は劉璋に説明をしていく。
「皿洗いに食材の下ごしらえ、そこらの子供でもできる作業です」
法正としては劉璋にいつまでの付き合ってられないため、誰でもできる仕事を割り振ってやろうとしたのだ。
「う―む………」
しかし、なにやら不満げな劉璋。
「何ですか、まさか仕事を選好みしているのですか?」
「うん?いやいや、そんなことはしませんよ。ただ――――」
劉璋は台所を見渡す。
「子供でもできるのに幼女が一人も居ないではないですか!」
『…………』
最近、更に自重しなくなった劉璋に法正だけでなく、臣下一同は頭を抱えていた。まだ前の方が部屋に籠って居たためよかったとさえ思うのであった。
「これはまず、幼女を雇うための予算の検討から――――」
「………次は厩です」
調理番一同からの苦情により台所から移動して、次に来たのは厩であった。
「馬の世話なら、まぁ最初はあれですが慣れればできると思いますし………」
「ふむふむ」
劉璋は意外にも馬の世話に対して意欲的に取り組んでいた。担当の者に注意事項などの説明を受け、実際に馬の世話をこなしていく。
(へぇ、意外と………性に合っているのか?)
その姿に法正は劉璋の評価を修正する。基本的に『無能な君主』として毛嫌いしていた節があったため、こうして真面目に働く劉璋は好印象なのであった。
「意外と真面目に仕事をするのですね」
少しだけ劉璋との間を歩みよる法正。
「ニシシシ。もしかしらたこれが僕の天職だったのかもしれませんね―」
袖で汗を拭きながら爽やかに笑う劉璋。
「そうなのですか。馬は好きなのですか?」
「そうですね―。最近気づいたのですけど、馬っていいですよね―」
そう言いながら馬の毛並みを整えるように腹を撫でる劉璋。馬の方も気持ちがいいのか、心なしか表情も和らぎ、せがむ様に体を寄せてきていた。
劉璋もそれに答えるように馬の全身を撫でまわす。特に下腹部を中心に…………。
「………ん?」
「どうかしましたか、法正ちゃん?」
「……いえ。ところであちらの馬の世話はしないのですか」
今までしていた馬の世話もそろそろ終わりだというのに次の馬のところに行こうとしない劉璋に法正は少し疑問を抱く。
「え?……あぁ、そうですね。でも――――そちらは牡馬ですし」
「?」
一瞬、劉璋が何を言っているのか理解出来なかった法正。いや、そんなことはあり得ないと心のどこかで否定しているのだろう。
「いやーいいですよね。こうして幼女(馬)のお尻を撫でまわしているのが仕事なんですから」
「おかしいですねー。なんでいきなり暴れだしたのでしょうね?」
劉璋の言葉を聞いた馬たちが一斉に暴れだし、劉璋から遠ざかったのだった。
「いや、おかしいのはお前の頭ん中だろ……」
「うん?間違ってないですよー。大体5、6歳なんですし………」
「だから…………いや、もういいです」
「うはっ。なんだか知りませんけど法正ちゃんか僕を見る目が絶対零度!!これはこれで興奮せざるおえない!!」
なんだか胃が痛くなり始めた法正は次の所に案内するか、それとも変態を処理するか悩み始めていた。
「あれ?劉璋様?このような場所でどうしたのですか?」
「……王累ですか」
この城の中で劉璋に対して『様』付けする人間は一人しかいない。王累だけは今までと変わらず劉璋に対して敬意を払っているのだった。
「もう王累はいつまで様付けなんですか?僕はもう君主ではないのですけど。同僚ではないですかー、呼び捨て、もしくは真名で構いませんよ」
「い、いえいえ!それは恐れ多いことです!」
パタパタと目の前で手を振って言う王累。
「そうですか?孟達ちゃんなんかは『蛆虫』呼ばわりなんですけど?ねぇ、法正ちゃん?」
「そこで私に同意を求めないでくれますか?」
ため息を吐きながら法正は劉璋を見る。君主であった時から思っていたがこの男に自尊心というのは無いものなのか。大抵の男の臣下たちは法正や孟達といった見た目幼い者たちを侮る傾向にあった。それは各部署の調整を行う法正であるからよく知っていた。
「あ。王累の所で人手は要りませんか?雑用でもなんでもいいのですけど」
「え?まぁ確かに、今は桃香様たちの兵と合わさったことで編成で忙しいけど……どこからか分けてくれるの?」
こういったことも法正の仕事である。
「えぇ。ちょうど一人余っていますから」
「そうだっけ?結構他も手一杯だったような」
「そうですね。ですが、ここに一人余り物が……」
と、法正は劉璋を見やる。それにつられて王累も劉璋を見る。
「……って、劉璋様を!?そ、それは無理!絶対に無理!」
「そうですか?王累は劉璋のこと気に入っているのですからいいではないですか」
「え?いや、確かに劉璋様は………って、そういう問題ではなくて!?」
なにやら顔を真っ赤にして王累は法正と劉璋を交互に見る。
「というか私の所は武官だし、劉璋様はどちらかと言えば文官だし……」
「ちっ。気付きやがったか」
「…………もしかして押し付けようとしたの」
もう既にこの仕事に嫌気が差してきた法正であった。
「ところで僕は法正ちゃんの所々で出る口の悪さにも萌えることに気づいたのだけど。おぉう、肥溜めを見るような視線!ありがとうございます!!」
本気で胃に穴が開きかねない法正であった。
「では、次の議題に移ります」
諸葛亮の進行で定例の軍議が進んでいく。
「えぇ、劉璋さんの配属先についてはまだ未定とのことですが…………」
あの後様々なところを見て回ったのだが、どこに決まることもなく今日まで至る。その劉璋と言えば……。
「孟達ちゃん、孟達ちゃん。お茶のおかわりはどうですか?今なら愛情たっぷり5割増しですよ」
「では頂くであります。愛情は要らないのでそこら辺の犬に食わせておけであります」
孟達に猛アタック即粉砕をしていた。
「当面は各部署の雑用を日替わりで………」
二人のやり取りを横目にため息を吐きながら諸葛亮がそう締めくくる。
「では軍議を進めます。先ず私たちが注意すべきは五胡に対してなのですが……」
そして軍議は滞りなく進んでいく。
「では次に周辺諸侯についてなのですが、おおよその方々は桃香様に従う形をとっていますがごく少数ですが反発もみられます。そこで直接各諸侯へと交渉を誰かにしていただきたいのですが………」
「普通ならば儂か紫苑が行くところじゃが、儂らは諸侯たちからはあまりいい印象を持たれておらんからの……」
厳顔と黄忠は民などには人気があるが、一部の諸侯たちには煙たがられていたのだ。
「とは言え、全くのよそ者の私たちが出て行っても、うまく交渉の席に着いてもらえるか」
「劉璋からもらった書簡はどうなんだ?それを交渉材料にすれば」
皆が頭を悩ませる中、公孫賛が提案する。
「それを使った交渉は進めているのですが、書簡に載ってない方も何人かいまして……」
「そ、そうか」
再び全員が頭を悩ませる。そんな中、劉璋と言えば………。
「月ちゃんは今日も可愛いね」
「へ、へぅ~」
一緒に仕事をしていた侍女を口説いていた。
「いや、この清楚感がたまらない。今日の下着は?下着は当然し―――――ぶべっ!!」
「この変態!月に近づくんじゃないわよ!!」
董卓との距離を縮める劉璋に賈駆が阻止する。
「ぐ、ぐぬぬ。……いや、これはこれで詠ちゃんの愛を感じる!」
「くっ。気持ち悪いわっ!?」
「………すみません。劉璋さんたち、少し静かにしていれもらえますか?」
だんだんと声が大きくなっていた劉璋たちを注意する諸葛亮。
「ちょっと、『たち』って何よ!?なんでボクたちまで!?」
劉璋と一纏めにされて、抗議する賈駆。
「ところで調略対象はここ辺りの人たちなのですか?」
いつもの間にか諸葛亮とホウ統の後ろに立っていた劉璋は広げられた地図を見ながら言う。
「ふむふむ。こちらの人を説得する前にここの人に話した方がいいですね。ここの領主さんはこちらさんの親戚筋ですからここ辺りから切り崩した方がいいですね」
『――――え!?』
劉璋は地図に何やら書き込んでいく。
「劉璋さん、もしかして全部覚えているのですか?」
「うはっ。下から見上げる幼女!……と、危ない危ない。まぁそうですね。僕は処理能力は致命的ではありますが記憶力はいささか自信があるのですよー」
幼女たちに見上げられ、体をビクビクさせながら答える劉璋。
(まぁ、実際は幼女関連で覚えていただけなんだけどね。ニシシッ)
「雛里ちゃん」
「うん、朱里ちゃん」
諸葛亮とホウ統が顔を見合わせて、頷く。
「劉璋さん、この件お願いできませんか?」
「はい、喜んで!」
間髪入れず答える劉璋。
「ちょ、ちょっと待て。劉璋だけで大丈夫なのか?」
「確かに劉璋だけでは不安が残るのも確かだぞ」
関羽の言葉に公孫賛が賛同し、皆も頷いていた。
「はい、それは確かです。ですので劉璋さんには補助という形をとって頂きます。実際に交渉、調略を行うのは……そうですね。白蓮さん、お願いできますか?」
「え?わ、私なのか!?」
「はい。一番無難にこの件に当たれそうなのは白蓮さんだと思いますので」
「ま、まぁ。し、仕方ないな、うん。任されたからには最善を尽くすよ」
「ちょろいですな、伯圭殿」
「う、うるさいぞ星」
「では、この件はこの方向でお願いします。では次に――――」
そして軍議は再開しいった。
「……はっ!?しまった、幼女の上目使いについつい承諾してしまった」
そんなこんなで政務官、劉季玉が誕生したのだった。
「劉璋!仕事をしてくれよ!」
「公孫賛くん、幼女が関わらない件は門外漢なのだよ」
ちなみに公孫賛の心労は日々上昇中である。
ご意見、ご感想頂ければ幸いです。
次の投稿はいつになるか分かりませんが頑張ります。




