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りんね  作者: 小林マコト
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 りんね宛てに手紙が来た次の日から、やよいは暁を探し始めました。

 知り合いの遊女たちや、客たちに訊いてみるものの、中々情報は集まりません。

 もちろんりんねに隠れて探しているので、そう大きな動きは出来ませんし、そもそもやよいはあまり他人と関わりを持たない人間でしたので、人探しは難しいことでした。それに、本当は自由に外に出れないのですが、やよいは遊女屋で雑用的な位置に置かれていたので、外でこなす仕事のときにこっそりと抜け出していました。だから、あまり情報は得られません。


 それでもやよいは訊きまわりました。全てはりんねのため。きっと、りんねは初めて恋情を抱いたのだろうから、遊女としでなく、太夫としてでなく、ひとりの女として「恋」をさせてやりたかったのです。


「ああ、その男なら見たよ。裏の道をひとりで歩いているところをね」


 見たことがある、という言葉を聞けたのは、探し始めて一月(ひとつき)がたったある日でした。

 いつも通り訊きまわっていたところ、ひとりの遊女が教えてくれたのです。


「いつですか!? それはいつ!?」

「さっきだよ。まだ居ると思うけど」


 礼を言い、やよいは男が居たという道へ走りました。その道は確か、りんねが「輪廻ノ街へ続く道」と言っていたのを、やよいは覚えていました。

 吉原で一番怖れられている道。

 りんね以外の人間は、その道を『死神様の道』と呼びます。

 出来るだけ近づくな、といわれていたのですが、やよいは足を踏み入れます。

 その道には、幸か不幸か、暁がまだおりました。


「夜明け男! わたしを覚えているか!?」


 やよいの声に暁が振り向くと、まったく変わらぬ暁の顔が見えました。


「夜明け男といのは、俺のことか」

「そうだ。お前以外誰がいる」

「俺はそんな名は名乗ってないはずだ。暁だと名乗ったことはあるが」


 どうやら、暁はやよいのことを覚えてはいないようでした。


「りんね様を覚えているか」

「あの死んだ目の太夫か。一度喧嘩をふっかけたことがある。そのときだな。暁だと名乗ったのは」

「……りんね様が、お前に会いたがっている。どうか会ってやってくれないか」

「俺のことを覚えていたのか。予想外だな」

「当たり前だろう。あのように声をかけた者は、お前しかいない」


 呆れてやよいは言います。


「吉原の太夫が会いたがっているというのは、光栄なことだな」

「そうだ。光栄に思っていろ。だから、りんね様に会ってくれ」


 そう頼むと、暁は唇の端だけを吊り上げて、意地悪く笑い、言います。


「会いたければお前から来いと言え。明日の夜、またここに来るつもりだ。そのときに来い」

「しかし、わたしもりんね様も、自由に外に出られる身ではないのを知っているだろう? 太夫とはいえ自由ではない。しかもわたしはまだ独り立ちも出来ていないんだ」

「そんなこと俺には関係ないだろ。客のようなものだ。そっちから来ないと俺は会わん」

 それだけ言い残し、暁は街へと消えていきました。


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