伍
翌朝。
りんね宛てに一通の手紙が届きました。
送り人は「夜明け」。
りんねとやよいにはすぐに分かりました。
あの、暁という男。
すぐにりんねは手紙を読みます。
「……りんね様」
「やよい、ぬしの言いたいことは分かった。心配ない。ただの戯言でしかない」
「戯言、とは一体……?」
りんねが見せた手紙を、声に出してやよいは読みます。
「……『死んだ目は生き返ったか。おまえの目を見るたびに吐き気が出る。だからまた会うときまでに、生き返らせておけ』。……なんですか、これ」
「ただの戯言。それ以外に考えられんだろう」
りんねは声を上げて笑いました。以前のりんねならばここまで笑わなかったので、やよいはまたも違和感を覚えます。
盛大に笑っても、りんねは暁から来た手紙を大切そうに撫でました。
「……………………恋情」
「ん? 何か言ったか、やよい」
小さく呟いたやよいの言葉が聞き取れず、りんねは聞き返します。
「……いえ、何も」
そう答え、やよいはりんねから離れました。
やよいは理解しました。
りんねがこのように楽しそうにする理由を。
それは昔、知り合いが「恋をした」と言って笑っていた表情と、同じそれでした。
遊女でも惚れた腫れたの色恋沙汰は耳にします。しかし、まさかあのりんねが、その感情を抱くとは思いもよりませんでした。
ふぅ、と息を吐いて、りんねの前に出ていた緊張を解きます。
嘘のようなことでした。
まさかあのりんねが。
前々から少し感じていたものの、本当にそうだと確信すると、信じられぬ気持ちが溢れます。
喜ばしいことでもないのですが、悲しむべきことでもありません。怒るべきことでも、哀れむべきことでもありません。どういう感情を抱けばいいのか、やよいには分かりませんでした。
ただひとつ、分かることは、りんねを暁に会わせねばならないということだけでした。




