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りんね  作者: 小林マコト
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 毎日のように、りんねは指名が入ります。

 たまには指名がかち合ってしまうときがあるのですが、そのときは、りんねは必ずやよいを行かせます。

 それは、やよいが遊女なんぞになりたくないと言うから。

 やよいはりんねに育てられたようなもの。「やよい」という名も、りんねからもらったものです。

 りんねの傍でずっと、やよいは吉原を見ていました。遊女たちの疲れた目も、やってくる男どもの下品な目も。

 男どもの中には、下品な目などしていない者もいましたが、やよいの見る限り、それはほんの一握りの人でしかないのです。

 そう考えるやよいを、りんねは良しとしませんでした。

 やよいの肩にかかる借金は、やよいの両親が負ったものですが、やよいが払わなければならないものです。

 やよいが払わなければ、その分やよいの両親に借金が戻されます。

 だから、どんなに遊女になりたくないとしても、遊女になって借金を返すしか道はないのです。りんねは、そのことをよく知っていました。そして、やよいが嫌がる理由もよく知っています。

 それでも、やよいは遊女になるしかないと、りんねは思ったから。

 下手に他の花魁にやよいを渡して、無理矢理に客をとらせたとしたら、やよいは自ら命を絶つような真似をするかもしれないと、りんねは思ったのです。

 だから、遊女になることに抵抗を感じないよう、自分に入った指名がかち合ったときのみ、やよいを行かせるようにしたのです。


 やよいもまた、そんなりんねの思いに気がついていました。

 だからこそ、りんねのかわりとして客のところに行くことを断らなかったのです。

 知っていたのです。自分は遊女になるしかないのだと。

 吉原(ここ)に売られたときから、ずっとそれは決まっているのだと。

 ならば、遊女になるとしたら、何を支えに生きればいいのだろう。

 そう考えると、答えは簡単に出てきました。

 両親のため?

 いいえ、りんねのために。

 りんねがここまで育ててくれたようなものだから、りんねのように太夫になって、借金を全て返すのです。

 遊女になったら、そうして生きていけばいいのだろうと、やよいは思いました。

 今はまだ客をとることはできません。

 しかし、やよいはりんねのために、借金を返すため、芸事を必死で勉強しています。

 禿のころから、やよいが苦手だった芸事。

 それは、りんねの得意とするものでした。



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