冤罪で追放された日、私は悪役令嬢になった
「こいつは俺とは別の男を作っていたんだ!!!」
とある舞踏会の皇族たちのスピーチ中、
ホール中に響く声で言う皇子、また私の婚約者。
「あのリィ様が!??!」
「アレフ様!!それは間違いではないのですか!??!」
「あぁ、リィの別邸は男子禁制というのは知っているだろう。男はいないはずなんだ。だが!!私は見た!男が中良さそうに話していたところを!!」
確かに私の住む別邸は男子禁制の?屋敷だ。
一昔前、別邸にいた執事の1人が突然興奮しだして全裸で刃物を振り回したのだそう。
一回だけならまだいいものの、呪われたかのようにそのような事件が相次いで起きた。
……………これを聞いた時、私は笑い転げてしまったが。
「リィ様!!!何故そんなことを!?!!」
因みにいうがこれは皇子が言っているハッタリに過ぎない。
というか、他の人間と隠れて交際しているのは皇子の方だ。
婚約者の皇子は精神年齢が幼く見逃していたのだが…………
おそらく本気で恋に落ちてしまったんだろう。
「しかし、私が男性と話していた、などのような証拠は他に出ておりません。
第三者が見ていたとなれば話は別なのですが………」
うっと言葉に詰まる皇子。もう少し偽の証拠を集めてきてほしい。
「私、見ていましたよ」
と、1人のメイドが言った。
………金欲しさに目が眩んだか。
「ふむ………皇子の他にも証言者はいる…何よりそれはリィ様に支えているメイドだ。
確定で、よろしいでしょうな」
あの後、複数の歯車が噛み合ったように、多くの偽の証言が出てきた。
私が隠れて交際したという男。
そいつは私に言い寄られ、家族を人質にされ渋々交際していたと話した。
そして他の貴族たち。
話し声が聞こえた、予定を以前より確認するようになった、自分も交際している姿を見た
……………などと言っていた。
半数が皇子の私金欲しさ、他は愉快な頭の中の勝手な妄想や想像の世界で繰り広げられた結果の証言なのだろう。
こうも最悪に噛み合ってしまう。
後者はまだ良いとしても一つの目的に集いたい人間の協力は凄まじい。特に人の不幸。
「どうなんだ!!リィ様………いや、ビッチの小娘!!!!!」
ひどい言われようだな。
貴様が四股してるの、私は知ってるぞ
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あの後、なりゆきで私は裁判にかけられた。
もちろん有罪。
ここまで来ると笑えてくる。多分笑ったら叩かれるけどね。
かなりの大貴族ってことで死刑は免れ国外追放だけ。
次の日、私の追放を見ようと多くの野次馬達が見にきていた。
「悪役令嬢!!!皇子様の気持ちを考えろ!!!!!」
みたいなことが色々言われている。
いや私そんなことはなからやってないんですけど。
いや「やってない」とは言ってないけどね??
でもそれは偽の証拠が出ちゃってるからね。悪あがきをするほど気力はないのだよ。
…………私、貴族の立場を自覚した時から問題は起こしてないはずなんだけどな〜………
私が追放されてやってきたのは奥地の村。
疫病が流行した時期から貧しくなり、誰も助けようとはしなかった村。
だって名前の通り奥地というのもあって疫病が広まったりはあまりしなかったからだ。
まぁもちろん、私も助けようとはしなかった1人。
別に私は悪人でもないけれど善人でもない。
私に関係がなかったから無視した。それだけだ。
だけど、私がここに住むとなったら話は別。
さっさと疫病の原因を突き止めてある程度不自由なく暮らせるような街にしないとね。
さて、慈善活動に励むとしましょうか。
何人かついてきた使用人がいるから手分けをして道の掃除。
ネズミやダニを殺すための薬も用意してある。
昨日から追放先は知っていたからある程度の物資などは買って来させた。
「見て………あれが中央の国の“悪役令嬢”よ」
「気にしないの、どうせ暮らしもカツカツの私たちには関係ないわよ」
聞かれてないと思っているのだろうな。
バリバリ聞こえてますよ。
というか陰口は本人がいないところでやってくれ
「……いや、一周回って聞いてほしいのか…?」
かまってちゃんなのだな、奥地の村人は。
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ある程度掃除をして街を回っていたからか、気付いたことがある。
家の地盤が傾いているのだ。
元々雨の多い土地と聞いたことがあるし、木が腐ったのだろう。
そこをネズミが齧っていって傾く…………
ありえない話ではない。
………となると、復興はどうしても遅くなってしまうな……
しかし、遅くなればなるほど建物が崩壊する確率が上がる………
「リィ様。との家から手をつけるのが良いでしょうか」
………家?
……そうすれば「早くこっちも」となる人が多くなるに違いない……
ならば、
「………いや、家は後回し。先に教会と井戸を同時進行で直す」
「え………?ですが人が足りません」
「足らせるのです。持ってきた荷物の中にシチューの材料があったでしょ?大量に。あれを餌にします」
「おい、なんか良い匂いしないか?」
「あの追放された女のとこからだ…!」
「まま〜、あれ、おいしそうだね」
グゥ~
誰かのお腹の音。それに続くかのようにさらにお腹が鳴っていく。
「お腹の大合唱…………フッ…」
「?リィ様?」
「あぁ、なんでもないわ。みなさま!!!この料理が食べたいのならば交換条件があります!!…そう嫌な顔をしないで。教会と井戸の立て直しを手伝ってもらいたいのです!
教会は避難所ともなりますし、絶対に必要な場所。井戸の水もなくなればそれこそ生きていくことはほぼ不可能になってしまう!!だから、立て直しを手伝って貰いたいのです!」
怪訝そうな顔、怪しんでる顔から驚いた表情に変わり、顔を見合わせる村人達。
「……わかった!俺は手伝うよ!!何をすれば良いんだ?」
「ありがとうございます!!まず初めに私の隣にいる使用人から地面を石で固めるやり方を教えてもらってください!!地盤が傾いているから本体を直してもまたダメになってしまうから!!」
それからは簡単だ。皆シチューのために手伝ってくれることになった。
まず井戸。井戸水がなくならないよう慎重に本体を内側から壊し、
周りの地面を極限まで水平にする。なめらかな棒が動かなければOK。
それから本体を作り直す。井戸は仕組みをわかって作ればわかれば簡単だ。
雨水の逃げ道などを最優先に作りながらなんとかやっていった。
問題は教会。壊すのも一苦労だし立て直すのも大変だ。
まず、齧られている木材付近の壁などを集中して叩く。これで結構大部分が壊れる。
もちろん安全のために盗ん…………持ってきた衛兵の兜をつけてもらった。
そこから地面を水平にして地面を固める。そして木材で骨組みを作りそこに石を敷き詰めて。
崩れることがないように泥のようなものを接着剤代わりに塗った。
私では指導ができない屋根は都合よく元職人といわれる人が中心となってやってもらった。
奥地の村の住人は約700人。2ヶ月で終わった。
教会を作る時に習得した建築術を使い、村人の各々は自分の家や店なども立て直していった。………やはりこれで正しかったな。
その後、村人のノミやダニが酷かったので体を洗ってもらうことにした。
お湯はなんとあった。
火山が少し離れたところにあったため、お湯が自然に沸いていたのだ。
そこに男女別の50人ずつで入りにいってもらった。
その間使用人達や教会の人間が道の修復をして、街は復興したと言っても過言ではないくらいに整っていった。
疫病もネズミによる感染だったり衛生面のことでなってしまっていたのでそこはほとんど解決。病弱の人は私と使用人1人が出向き看病した。
「ねぇ、リィ様って悪役令嬢と言われていたんでしょう?」
「そうは見えないよなぁ……やっぱり中央の国は援助してくれないしおかしい人間が多いのだろうか…」
「りぃさま、ままのこと助けてくれた!!!!」
そんなこんなで私は見事、村からの信用を得たのだった。
そして元気になったことで出稼ぎに隣の街へ行く人間も複数人いた。
そこから次第に私の噂は流れていき…………
後から聞いた話によると、「リィ様は無罪にも関わらず“頭のおかしい帝国の連中に化け物、人の心を病ませた悪徳な人間“と言われた哀れなお方。でもあの奥地の村をたった1人で復興してしまった優秀なお方」
と、ちょっとオーバに離れた街などでは言われていたらしい。噂ってどうしてこんな変わるんだろう。
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それから皇子の二股が発覚。
それを待ってましたと言わんばかりに革命が起きた。
もちろん、奥地の村中心に。
私は教えてもいないのに村人達が作った馬車に乗り、ゆっくりと革命が起きていく様子を楽しみながら中央の国に戻った。
半壊した城を周りの叫び声や剣が交わされる音とは裏腹に静かに歩く。
王室には縄で縛られている皇子、二股相手がいた。
王と王妃は早々に逃げたらしい。
「お、おい!!!!皇子の俺に許可なく戻って革命など、死刑では済まされないぞ!」
「おや、まだそんなことを言っておいでで?あなたが巻き起こした革命です。
自分で責任くらいは取るべき。…………それに」
私は衛兵の死体の横の剣を手に取り、皇子の首元に置いた。
「私は別に、自分で手を下してやったわけではない。村人に連なる皆んなが私の思いを汲み取って動いているんだ。指示を出したのは私だが、行動を起こしたのは私ではない」
皇子………いや、アレフの足元に勢いよく剣を刺し、私は実家に帰ることにした。
そういえば「勉学は女にとって無駄」と、
____そう言ったのはあなた方でしたね。
けれど、無駄ではなかった。
建築術の知識があったから村の復興をできて信頼を得ることができた。
考える頭と知識があったから、追放までにしっかりと準備ができた。
結果として、私は自分の手を汚さずに革命を起こし、冤罪の恨みを返すことができた。
「ざまぁみろ、ですわ♪」




