第0話 プロローグ
皆様、連載スタートした『神々の遊戯に巻き込まれ無双した件』楽しんでいってください。
悠久の昔、神すら存在しない世界に二柱と呼ばれることになる双子神が虚無より生まれる。
全ての世界を創造し全ての命を生み出した最高神パルセルス。世界を光で照らし命を育んだ光神カナルカス。
神界を始めとする数多くの世界が生まれ命を育み安寧の時代が永遠に続くと思われたが突如、光神カナルカスが邪神化してしまう。
神界を二分化する戦いに発展し多くの神々が命を落とし、巻き込まれた幾つもの世界が消滅した。
激しい戦いは、百年ほど続くもパルセルスが九つの世界を結界核とした多重次元結界にカナルカスを封印したことにより戦いは終結へと向かう。
戦いが終結し二千年の時が経過したある時、多重次元結界の核とした八つの世界が消滅しカナルカスの封印が解けかけていることにパルセルスは気がつく。
そしてその消滅した世界はある共通点が存在していた。
神戯。
百年に一度開催される神々の娯楽、遊戯神に選ばれし十神、神戯が開催される世界の神、総勢十一神が自身で選んだ九人の守護者と共に戦いを繰り広げる。
前回より九十五年、神戯の舞台となる世界が決定する。
その世界の名はセクレシア。
その世界こそ最後の結界核、そして光神カナルカスが封印されている世界。
封印が解ければ神界を含む全ての世界が戦いに巻き込まれ多くの命が失われてしまう。しかし神戯は遊戯神に全権が委ねられており最高神パルセルスといえど干渉することができない。
自ら動けばセクレシアにカナルカスが封印されていると封印を解こうとする者に公言しているようなもの。
一計を案じたパルセルスは、敵の正体を探り開封を阻止するべくセクレシアに自身の代理者とも呼べる亜神を送り込み神戯に参加させることにした。
幸いにも神戯が開催されるセクレシアに未だ亜神は誕生しておらず、亜神を送り込むこと自体パルセルスの力をもってすれば容易いが幾つかの条件に合致する者でなくてはならない。
その条件とは、どの神にも属さず、どの神も知らず、最低限の戦闘能力を有している。
そこでパルセルスは、魂格の高い人間をセクレシアに転生させることを思いつく。魂格が高い者は神になる資質を持ち転生させることで下級神レベルの力に目覚めるからだ。
そして神戯開催の五年前、ある辺境の世界にセクレシアに類似した小さな世界が生み出される。
その世界の人々は、生み出されたその世界をVRMMORPGユリウスと呼んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「これより先は戦火の海。強大な敵、多くの苦難が待ち受けているだろう・・・・・・」
暗闇に浮かび上がる炎が文字へと姿を変え聞いたような定番の言葉を男の声で読み上げていく。定番の文言、代り映えせず想定の域を出ない。
だからと言って今、起きている事象も想定できていたかと問われれば想定外としか答えようがない。何故なら今、ログインしているユリウスというゲームは明日、サービスが終了するからだ。
RMMORPGユリウス、通称ユリウスは仮想空間に五感を接続しゲーム内アバターと同期することで操作する一般的にフルダイブ型と呼ばれるゲームで五年前にサービスをスタートさせた。
現行機種の数世代先の技術を使用されていると言われるほどのクオリティーと自由度、そして高い没入感に加えてログインに必要なダイブギアが無料提供されたこともあり絶大な人気を誇る。
そんなユリウスで建国することを目標に努力を積み重ね続けていたのだが突然サービス終了が発表される。そしてサービス終了を明日に控えた前日の早朝、ログインすると先程のようなガイダンスが表示された訳だ。
今までイベントの類を一度たりとも開催したことがないユリウスでサービス終了目前にイベントを開催するだろうか。
ましてや課金システムすら存在せずログインしているプレイヤーがほぼ居ない現状でイベントを開催することでの旨みが運営側に何一つとしてない。ログインするためのダイブギアですら無料提供なのだから今更金儲けに走る可能性も低いと考えるほうが自然だろう。
イベントの開催でないとすれば続編、ベータ版への招待という可能性。サービス終了間近ということを考慮するなら、こちらが正解のような気がするが確信を得るには情報が不足している。
バグやウイルス感染、ハッキングの可能性も考えてみたが限りなくゼロに近いと言っていい。
ダイブギアもオーソドックスなヘッドギア型ではなく見知らぬ老人の刻印が入った五百円硬貨ほどの大きさのコイン型。更に驚くことに破壊不可能な未知の金属で作られているらしく原理すら解明されていない。
運営会社の情報すら誰も知らず数世代どころかオーバーテクノロジーとまで言われるゲームなのだからウイルス等の可能性を考えるよりイベントやリリース前のベータ版だと考えた方が現実的だという訳だ。
「・・・・・・ 扉の先へ進むのならばこの世界へ戻ること叶わず、進まぬ者は二度と扉の先へと進むこと叶わず。心して覚悟を示せ」
状況を考察しているうちに説明パートは終わったようで進むかログアウトするかの選択を迫られていた。進まなければ二度と新たな世界へ進むチャンスは訪れずサービス終了の時を待つだけとなる。
(たぶんベータ版だと思うけどユリウスみたいに建国システムってあるんだろうか。頑張って強くしたのに、またゼロからなんだよな・・・・・・)
サービス終了というプレイヤーにとって回避不可能な絶対的な死を待つだけより新たな可能性にかけてみるのも悪い話じゃない。
そもそもユリウスには死という概念がありゲーム内で死ぬということは、二度とログインできなくなり即引退を意味している。だからと言って死を恐れて戦いを避ければ強さは手に入らない。
生産職なら一流の職人になる為に経験を積み努力を重ねる、スキルの習得条件も基本スキルこそ全プレイヤー共通だがレアスキルになるとプレイヤーごとに違っており他者と同じように行動しても必ず修得できるという訳ではない。
俺が修得している数多くの魔法やスキルは幾つもの死線を越え修得した努力の賜物だと言える。その中でも特に【叡智の深淵】というスキルの存在が新たな世界へ進むことを躊躇させる最大の原因とも言っていい。
このスキルは三年前に発見した絶域という地下五十層からなるダンジョンで発見した一冊の魔導書を開くことで習得した。スキル効果は見聞きした知識や技術、全て記憶し理解する叡智吸収と思考速度を上昇させる思考加速の二つを常時展開する。
その効果はゲーム内だけに留まらず現実世界にも影響を及ぼした。様々な分野の専門書を読破し知識を深め格闘技など戦闘に役立つ技能を一度の見聞きで完璧に修得してしまうのだ。
多種多様な知識や技術を得たことでの成長力は凄まじく魔法、体術、剣術とあらゆる面で大きく力を伸ばし絶域を完全攻略することができた。「叡智の深淵」なしでは完全攻略どころか十階層すら攻略できなかっただろう。
サービス終了となればゲームの消滅と共にこれらのスキル効果もなくなってしまうと理解しているのだが・・・・・・
「・・・・・・ さあ決断せよ。先へ進む覚悟があるのなら扉の先へ進み、覚悟無き者はこの地を去れ」
「俺は・・・・・・ 新しい世界へ行く」
「汝の決意しかと受け取った。其方に共に戦う仲間を授けよう・・・・・・ な、なんじゃ・・・・・・」
驚いたような声、何かブツブツと呟いているが声が小さく何を言っているのかまでは分からない。かなり焦っているように感じたがハプニング音声をそのまま使用する可能性は低く、伏線だと考える方が妥当だろう。
また仲間のNPCが配布されたことを考慮すると新しい世界で建国という概念が存在している可能性がある。
ユリウスにおいて建国時に必要な要件、「必要参加人数九名」がそのまま適用されるか分からない。だが建国可能であるならステータスを引き継げないとしても十分にモチベーションを維持できる。
楽観視、希望的観測だと理解していても、このまま終わりたくないという感情に突き動かされ新たな世界へ行くことを決めた。
そして男の声が聞こえなくなると辺りは静寂と暗闇に包まれ意識が少しずつ薄れていった。
先週連載スタートしたパラサイトシングルに続く第二弾『神々の遊戯に巻き込まれ無双した件』本日より連載スタートしました。
それに伴い本日「第0話 プロローグ」明日「第1話 違和感」を公開したいと思います。
パラサイトシングル共々、よろしくお願いたします。