その4-2
王都はそれほど広くはないが王城を中心にして整えられていた。
入口から馬車道が突き抜けるように城へと伸びており両側に家が立ち並んでいる。
ティナは馬車から己の姿が見えないようにしながらも注意深く家々を見つめていた。
アルフレッドは時々外を見ながら、正面に見えてきた城を前に固唾を飲み込んだ。
アウェイである。
言わば敵地の真ん中なのだ。
もちろん、先頭をいくフィリップも両側の家々を警戒しながら前を進みかけた。
その時であった。
一つの影が彼らの前を横切ったのである。
フィリップは慌てて馬を止めて剣を構えた。
が、そこに倒れ込むようにいたのは子供を抱いた母親であった。
「…あ、ああ…」
申し訳ありません
「その先の病院へ…急ぐあまり」
彼女はそう言い子供を懸命に抱きしめた。
周囲の道では小さなざわめきが起こり一人の医師が駆け寄ると頭を深く下げて
「申し訳ない」
というと女性に抱かれた子供を抱き上げて端へと寄った。
フィリップは剣にかけていた手を戻すと
「以後気を付けるように」
と言い前を進み始めた。
ティナとアルフレッドは一瞬停車した馬車の中から外を見て医師と子供と母親の様子を見た。
ティナはその様子を見て御者に
「止めて」
と声をかけるとアルフレッドが
「え?」
と驚いている間に馬車から降りて子供と母親と医師の元へと走った。
その様子に誰もが目を見張ったのである。
フィリップも驚いて馬を止めると部下に馬車を守るように指示しティナの元へと馬を走らせて彼女の横に降り立った。
医師は驚きながらぐったりと口元から泡を零して倒れている子供の様子を見て
「これは…だめかもしれん」
と脈や呼吸を見ながら呟いた。
ティナはそれに
「待って」
というと、瞼を開けて手を左右に振って光を当てたり影を作ったりした。
「まだ、瞳孔反射があるわ」
生きている
医師はティナを見て
「貴方は医師か?」
と聞いた。
ティナは首を振ると
「いいえ」
でも多少の知識はあるわ
と答え、母親に
「この子がこうなる前に何か口にしませんでしたか?」
と聞いた。
母親は首を振り
「いいえ、ただ遊びに行っていて…戻ってっ来るなり」
喉が渇いてたらしく慌てて大量の水を飲んだだけで
「そしたら急に」
と涙ながら告げた。
ティナは目を細めると
「その水を持ってきてください」
というと
「それから牛乳はありませんか?」
と呼びかけた。
医師はハッとすると慌てて
「すまないが持ってきてくれ」
というと直ぐに人々が自宅から牛乳を持って現れた。
ティナはそれで子供の口を漱いで飲ませると毒が与える影響を和らげて、心臓マッサージをしたのである。
そして、隣のフィリップを見て
「私の薬品箱を持ってきて」
急いで!!
と告げた。
アルフレッドも馬車から降りて彼女の横に立ち
「ティナ」
と呼びかけた。
ティナは心臓マッサージをしながら
「間に合って」
と小さく呟いた。
医師も人工呼吸を仕掛けたが、ティナはフィリップが持ってきた箱から紙を出すと
「これを介して人工呼吸をしてください」
猛毒ではないけれど
「毒であることに違いがないので」
と告げた。
医師は頷いて紙の真ん中を破きそこから息を吐き入れた。
ティナは母親が大急ぎで水を持ってくると近くで覗いてた男性に
「悪いけど、手を貸して」
鳩尾から指二本
「ここをこのように押してちょうだい」
と押して見せた。
「一定の間隔で」
男性は慌てて言われた通りに押した。
ティナは周囲の人々の顔を見ながら水を嗅ぎ、一滴を舌に乗せると顔を顰めて
「これは…いつも飲んでいる水なの?」
と母親に問いかけた。
母親は頷き
「は、はい」
と答えた。
ティナは蒼褪めて
「恐ろしいことだわ」
というと
「この王都の水源の場所は知っている?」
王都の外の水源よ
と聞いた。
それに男性が
「この王都の水はあの山の中腹の湧き水だ」
だから綺麗なはずだ
と告げた。
ティナは子供が息を吹き返すのを見て
「アルフレッド、この男性に案内を受けて誰かに直接そこの水を持って来させて頂戴」
と告げた。
「一刻を争うわ」
アルフレッドはフィリップに頷いて男性を馬に乗せると袋を持たせて兵士を二名向かわせた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




