シロちゃんの実際にあった『神様』の話
私はシロ。
自己紹介は、まあいいだろう。
私は語り部ではあるが、物語の主役では無いのだから。
さて、1つだけ最初に言って起きますが、これは実話なので面白いオチなんてありません。
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私の父の故郷は田舎の漁村だった。
本当に何もない田舎。
お店なんて小さな雑貨屋が一軒しかない村。
父は、そんな村から出て街で暮らし、結婚して私が産まれた。
そんな父の故郷に毎年お墓参りに行った。
それは、まあ普通の事だとして、1つ不思議だったのは私たちの住んでる街から村の間にある家に両親が必ず立ちよった事。
その家には御神木のような大きな樹があり、寺か神社か何かだったのかも知れない。
そこに祖母くらいの年齢の女性が住んでいて、母は女性を『神様』と呼んでいた。
母の話によると彼女は霊能者だったそうだ。
母は彼女から御守りをもらって私にも持たせていた。
そんな『神様』の話なのだが。
『神様』は元々は父の漁村に嫁いで来た女性だったそうだ。
そんな、ある日。
とても天気が良くて晴れ渡った日。
漁村であるから晴れの日に海に猟に出るのは当たり前。
『神様』の夫も当然漁船で猟に出ようとしたのだが『神様』が「嵐が来るから今日は海に出たらいけない」と必死に止めた。
当時の天気予報は今ほどの精度など無く、空は晴れ渡っている。
夫は『神様』が止めるのを振り払い猟に出た。
そして漁船が沖合いに出た所で天気が急変し、嵐で漁船は沈み帰らぬ人になってしまった。
その後、夫の親族から「お前が不吉な事を言ったから夫が死んだんだ」と村を追い出され、大木のある家に移り住んだという話。
どこまでが本当なのかは解らない。
ただ母は『神様』の言葉を信じていたようだ。
そのはずなのだが…
どうにも謎な事がある。
わざわざ毎回『神様』の家に寄り占いのような事をしてもらって話を聞いていたし、御守りをもらって大事にしていた。
母に確認したが、『神様』と父に血縁は無く一時期同じ村に住んでいた事がある程度の関係でしか無い。
つまり親戚だから寄っているわけでは無く、占いや御守りが目的だった。
その程度には信じていたはずで、私が産まれた時にも『神様』の占ってもらったそうなのだ。
言われた事は三つ。
1、この子は産まれる前に先祖の霊に「これから◯◯一族に産まれます」と挨拶して来ている、だから先祖の霊が守ってくれるだろう。
2、この子が一族の墓守りになる。
3、その名前だけは絶対に止めなさい、その名前をつけると子供が苦労する事になる
結果…
私の名前は、その絶対につけるなと言われた忌み名である。
母よ…何故そんな馬鹿な真似を?
いや本当に苦労しているんですけど。
何しろ誰も読めないんだから。
そう今で言うDQNネームが私の本名なのだ。
そりゃ『神様』じゃなくても止めますよね。
もっと強く止めて欲しかったよ『神様』
実話だから山場もオチも意味もない。
いや意味(忌み)だけは私の名前にありますか。
それでは皆様ごきげんよう。