『第八章 七つの大罪』
さて、無事に外に出たはいいがこれからどうしたものか。
ギルドに戻ることも考えるがまだフリック達がいるかもしれない。
奴らとは二度と会う気もないのでそれはパス。
となれば、
「別の街に行くか。そこで冒険者登録をやり直そう。」
「ほう、数千年たった今でも冒険者は居るのか。」
ルシファードが話しかけてきた。
「お前らの生前からあった稼業なのか?」
「うむ、あの頃は種族別の戦争の真っ只中だったからな。我らの元にどれ程冒険者や勇者が乗り込んできたことか・・・。」
「あぁ、あの頃はホント最悪だったぜ!俺たちは何もしてないのに魔王だの邪神だの好き放題言いやがって!特に勇者とか言う人類共がとにかく酷かったぜ!」
愚痴をこぼすかのようにグリードも話に加わってきた。
「そういや昔本で読んだことがあるんだが、古の七人の勇者が七つの大罪と組み分けされた人ならざる存在を激闘の末、打ち倒したって話を聞いたことがあるんだが?」
「あぁ、それ俺達。」
「・・・はい?」
レイガは耳を疑った。
「だ~か~ら、その七つの大罪ってのは俺達の事だって言ってんだよ!」
「はあぁぁぁぁ⁉」
「キヒヒヒッ!あの時のお前のリアクションは最高だったぜ!」
「ほっとけ・・・。」
鉱山を歩くレイガと気を失っているネナを背負うレシル。
鉱山から出るまでは彼女は警戒しながらも同行を許したのだ。
「七つの大罪・・・、伝説でしか聞いたことがない七人の魔王の総称。それが今、貴方の中に全員いるってこと・・・⁉」
レシルはレイガたちの昔話に耳を傾けていた。
「こいつらが言うにはそうなんだろうな。俺が唯一信頼し合える大切な仲間だ。」
「・・・そんな伝説の魔王が仲間だなんて、本当に貴方は何者なの?」
レシルが警戒しながら質問をしてくる。
「話を聞いてたんなら分かるだろ。俺は仲間だと思っていた奴らに裏切られて人を信じる事を辞めた。そういう人種だ。」
嫌なことを思い出したのか、レイガの言葉に重みがのしかかっていた。
無事ダンジョンの外に出ることが出来たレシルとネナ。
そしてレイガ。
「はぁ~、生きて帰れた!」
安心からかネナを下ろし腰が抜けて座りこむレシル。
(街は近そうだな。後はこいつらで帰れるだろう。)
すると向こうから何人かの冒険者がこちらにやってくるのが見えた。
「ん?おい!向こうに負傷者がいるぞ!」
冒険者たちは急いで駆けつける。
「大丈夫か、君?」
「は、はい・・・。私は大丈夫ですけど、私より彼女を。」
レシルはダンジョンで盗賊に襲われた経緯を話す。
「・・・やっぱり盗賊が巣くっていたか。俺達はその盗賊の討伐でやってきたんだが・・・。」
「リーダー!盗賊の反応がない!恐らく全員死んでるぞこれ⁉」
「何⁉君たちが討伐したのかい⁉」
「い、いえ、私達ではなく彼が・・・。」
レシルが振り向くとそこには誰もいなかった。
「あれ?さっきまでいたのに・・・?」
「その人物が盗賊を倒したのか?その人物について何か知ってるか?」
冒険者の問いにレシルは答える。
「確か・・・左目に紫に刺青があったと思います。」
その言葉を聞いた冒険者たちが驚いた表情で一斉にレシルに振り向く。
「紫の刺青⁉も、もしかして・・・その人物はこんな顔をしてなかったか⁉」
バッグから一枚の紙を取り出して見せる。
「手配書・・・?えっ⁉この人って⁉」
その手配書には『殺人竜』と書かれたレイガの似顔絵が描かれていたのだった。
早々に姿をくらませたレイガは現在、まだ手配書が広がっていない街に向かって歩いていた。
「・・・様子はどんな感じだ?フェニス。」
「大丈夫だ。この先にある街ではお前の事は知れ渡っていない。しばらく滞在しても問題はなさそうだ。」
「そうか。手配されてる以上、冒険者としてはもう無理だがアイテムの換金は出来るだろうな。」
最初は別の街で冒険者登録をやり直そうとしたレイガだがフェニスの予知能力で自分が指名手配された事を教えてくれた。
目的地としていた街では既に手配書が広がっていたらしく、再登録は断念してそのまま別の街を目指したのだった。
「登録したら行方を追われる可能性があったからな。俺は放浪者として世界を回るか。」
「俺らにとってはそっちの方が好都合だ。で?前にいるアレはどうするんだ?」
「前?」
レイガが前方を向くと、サイのような大きな魔獣が唸り声を上げて威嚇していた。
知らずの内に奴の縄張りに入ってしまったようだ。
「身の程知らずだな。俺達に挑んでくるとは。」
フェニスが鼻で笑いながら言った。
するとグリードがワクワクした声で話しかけてきた。
「丁度いい。レイガ、俺を出せ!竜じゃなくて俺自身を!」
「分かった。お前に任せる!」
レイガが手をかざすと影が広がり始める。
中から青年の人影が飛び出す。
「大罪顕現『強欲』‼」
「オラァァ‼」
出会い頭に鎌のような棒状の武器を手に取り魔獣のこめかみに突き刺した。
魔獣はしばらく悶絶し、力尽きて倒れた。
「雑魚だな。これじゃぁ準備運動にもならねぇ。」
鎌を引き抜きため息をつく青年。
「けどこいつはデカい。売ればしばらくの資金にはなる。ルシファード、頼めるか?」
「仕方ない。」
レイガの方から竜の頭が現れ、仕留めた魔獣を飲み込んだ。
「グリードも戻れ。これから街に行くからよ。」
「メンドクセェ。何で俺達がこそこそしなくちゃいけないんだよ。」
するとレイガの背中からもう一体の竜の頭が出てくる。
「今やレイガは指名手配中のお尋ね者だ。痣は色を変えればしばらく誤魔化せるが俺達のように力が強すぎる亡霊は気配でバレてしまう。極力レイガの体内で力を抑える必要があるんだよ。まぁ脳みそバカ野郎が面倒事に巻き込まれたいのなら話は別だが?」
「テメェ喧嘩売ってんのかフェニス、おぉう⁉テメェが顕現されたら真っ先にぶっ殺してやろうか?」
青年とドラゴンが睨み合っているとまたレイガの身体から三体目の竜が出てきて二人を殴りつけた。
「やめなって言ってるだろ!全くアンタらは飽きもせずに・・・。」
アスモデニスが二人を止めてくれた。
「全くアイツ等は。」
ルシファードも呆れていた。
「さて、俺の手配書が広まる前に街に行くとしようぜ。」
ドラゴンたちと青年はレイガの中に戻り、再び街に向かって歩き出した。
だがこの時、彼らの後を追いかける小さな影にレイガは気が付かなかった。




