『第七章 爪痕』
到着した調査騎士団が見たのはあまりにも無残な人間の死骸、その中心に立っている一人の少年だった。
「・・・君がやったのか?」
団長らしき大男がレイガに問う。
「・・・襲い掛かられたからな。返り討ちにした。」
兵士の一人が大男に話しかける。
「団長、奴は危険です!あの少年から恐ろしい魔力を感じます!」
団長はしばらく黙りこみ。
そして・・・、
「・・・殺す必要はあったのか?」
「殺らなきゃ殺られていたからな。もう俺は相手を信じることを辞めた。」
「・・・そうか。」
団長は背中の大剣を取り構えた。
「君は罪を犯した。我々と共に来てもらうぞ‼」
「罪、罪ねぇ・・・。いいじゃねぇか!罪を食う俺が罪に纏われる。最高じゃねぇか!」
狂っている。
もはやこの少年は人であることを捨ててしまった。
団長はそう思いレイガを敵視する。
「やはり君を生かしておくのは危険と判断した!今ここで討つ‼」
「せっかく生き延びたんだ。意地でも生かさせてもらうぜ?」
両者が睨みあう中団長は他の兵士に告げる。
「俺が押さえとく。お前たちは王都に戻り、このことを報告しろ!」
「だ、団長を一人になんてできません!」
「行くんだ!奴は人類にとっての脅威だ!国の全戦力を持って奴を倒さねばならん!早くいけ!」
「団長がここまで言うなんて・・・。わかりました。ご武運を‼」
全兵士は一斉に来た道を引き返していった。
「まぁ、そうなるわな・・・。」
そしてしばらくの沈黙の後、二人はぶつかり合った。
「うおぉぉ‼」
大剣を振り回しレイガに切りかかる。
レイガは次々と繰り出される斬撃をかわし、いなし、余裕の表情を見せる。
対して団長の方はかなり必死さが伺える。
「ハァァァァ‼」
大剣で地面を大きく叩きつけレイガの態勢を崩れさせる。
「⁉」
「もらった‼」
すかさず大剣を振り下ろし、レイガのこめかみを捉える。
だがその一撃が決まることはなかった。
レイガの背中から現れた二頭の竜の頭が大剣に噛みつき受け止めていたのだ。
「な、何だこれは⁉」
団長は突然の出来事に混乱している。
「こいつに死なれては我らが困るのでな。」
「レイガお兄ちゃんには絶対傷つけさせないから‼」
竜の頭が口をきき更に驚く団長。
「ルシファード、レヴィアス。助かったぜ。」
バキンと大剣をへし折りレイガは団長の懐に入る。
「グリード‼」
瞬時に右腕が竜の頭に変形し団長の腹部を狙って重い一撃を食らわせた。
「がはっ⁉」
団長は殴り飛ばされ壁に強く叩きつけられた。
「ふぅ・・・。」
「いい一撃だったぞ。レイガ。」
右腕の竜が口を聞く。
「そいつはどうも。」
レイガは重傷を負い動けない団長の前に立つ。
「・・・。」
「どうした?俺を、殺さないのか・・・?」
掠れた声で言ってくる団長。
だがレイガは彼を無視し、出口に向かおうとした。
「待て!何処に行く・・・⁉」
「・・・アンタからは罪を感じない。まぁ当然か。民を守る騎士団がそんな罪を背負うなんてほとんどないからな・・・。」
「何を、言っている・・・?」
「分からねぇか?殺す価値がないってことだよ!」
そう言い残し、レイガは部屋から出ていった。
「・・・殺す価値がない、か。騎士にとっては屈辱な言葉だな・・・。」
団長はフッと笑いをこぼし意識を失った。
ダンジョンの通路を歩くレイガ。
ボスであるスケルトン・ロードを倒したことで道中魔獣の襲撃は一切なかった。
「・・・。」
「何だ?ずっとだんまりじゃねぇか。」
体内から声がした。
「グリードか。いや何、俺が調査騎士団の団長を倒したことが今だに信じられなくてな。というか勝てたのはお前らのおかげだったな。ありがとう。」
「礼なんかいらねぇよ。気持ちわりぃ。」
「そう言うなグリード。だがレイガよ。奴に勝てたのはお前が我らの力を使いこなしたからだ。今の我らはお前の剣であり盾だ。もっと自分を誇っても良いぞ。」
「ルシファード・・・、分かった。俺もお前らの力に恥じないよう頑張るわ。」
「うむ。慢心しない心意気、大いに結構。」
そんな会話をしている内にレイガはダンジョンの外へと出た。
「・・・久々の外だな。」
突き落とされた時は酷く絶望したが、今は新しい仲間もいる。
ここからレイガの再スタートだ。
「うぉぉぉぉぉっ‼数千年ぶりの外だーー―‼」
突然のグリードの叫びが脳内に響く。
「おいフェニス!お前も出て来いよ!久々の外だぜ?」
ダルそうな声も聞こえてきた。
「やめろ。俺は別に外に興味はない。お前こそガキみたいに騒ぐんじゃねぇよ。」
「おぉ~⁉テメェ喧嘩なら買うぜ?引きこもり野郎!」
「上等だ・・・!」
「はいストーップ‼アンタたち、出てきて早々喧嘩しないの!今は外に出れたことに喜びましょう?」
「「・・・ウス。」」
これだけ騒がしいが全部レイガの内での出来事。
声だけが響いている状態だ。
「サンキュー、アスモデニス・・・。それ以上騒がれたら身が持たなかったぜ。」
軽くげっそりするレイガだった。
それから数時間後、新たな兵を連れた調査騎士団と数名の冒険者が再びダンジョンにやってきた。
戻ってきた兵士の報告では団長が未知の殺人鬼と交戦中とのこと。
急いで冒険者を雇い、やってきたのだ。
冒険者の中にはフリック達も同伴していた。
「何だってまたあんなダンジョンに潜らなきゃいけないんだ!しかも殺人鬼?」
「もしレイガが生きていたとしてもその殺人鬼に殺されてるんじゃないの?」
愚痴をこぼすフリックとヘラヘラと笑うセリネ。
その後ろでレイガが生きていることを信じてやまないアミン。
(大丈夫、レイガは絶対に生きている!)
突き落とした本人が言うのもなんだがこのまま生き別れればきっと後悔する。
(もう君に会う資格はないかもしれないけど、絶対に会って謝るんだ!)
一行はボスの居た部屋にたどり着いた。
そこには冒険者三人の遺体と壁で気を失っている団長を見つけた。
兵士は急いで団長の手当てをし、冒険者は周りを警戒する。
「ボスの部屋にこんな大穴が?」
「ここまで来るのに魔獣も一匹も出くわさなかった。ボスが討伐されたってのは本当だったんだな。」
冒険者が口々に言う。
「ありえない、あのスケルトン・ロードを倒した奴がいるなんて・・・。まさか、ホントにレイガが?」
「ば、馬鹿言わないで!あの荷物持ちがあんな化け物を倒せるわけないじゃない!それに、まだアイツが生きてることもこれをやったってことも分かってないのよ?」
「そ、そうだな・・・。まだ生きてると決まったわけじゃないからな。」
二人をよそにアミンは必死にレイガの痕跡がないか探し回っていた。
(レイガ、ホントに君がやったの?お願い生きていて!)
すると手当されていた団長が目を覚ました。
「団長!」
「・・・お前ら?」
「無事だったんですね!良かったです!・・・あの、団長がここまでやられるなんて、あれから何があったんですか?」
「・・・見ての通り、俺は彼に負けた。殺す価値がないと言われ、そのままここを去って行ったよ。」
「団長・・・。」
すると一人の兵士が申し立ててきた。
「団長!その男を指名手配しましょう!このまま奴を野放しにしておくのは危険かと思われます!奴の特徴、出来れば名を知れれば良いのですが。何かわかりませんか?」
団長は謎の竜の頭が言った言葉を思い出した。
(レイガお兄ちゃんには絶対傷つけさせないから‼)
「確か・・・レイガ、と言ったはずだ。」
その名前を聞いたフリックとセリネ、アミンが振り向いた。
「レイガ・・・だと⁉」




