『第六章 復活』
レイガが奈落に落とされてから数日後、近くの街ではフリック達がギルドの酒場で悠々と食事をしていた。
「かぁ~っ!生還した後の酒は格別だぜ!」
「砂や土埃ですっかり装備が汚れたわ。新しく新調しようかしら?」
レイガの事なんかすっかり忘れて食事を楽しむ二人の側でただ一人、アミンだけはずっと俯いていた。
「おいアミン食わねぇのか?なら俺がもらうぜ!」
料理を取られても俯き続けるアミン。そこにセリネが話しかける。
「・・・まだアイツの事なんか考えてるの?アイツはトラップに落ちたんだからもう生きていないわよ。」
心のない言葉を言われアミンはぎゅっとスカートを握る。
(違う・・・レイガは落ちたんじゃない・・・私が突き落としたんだ。)
アミンは操られていたものの彼女の意識はかろうじて保っていた。
だから自分がレイガを突き落としたことも覚えていたようだ。
操ったセリネ本人はそのことには気づいていないようだが。
アミンは二人の行いと自分のしてしまった事に感情が入り混じり息を殺して泣いていた。
すると他の席の冒険者の話声が聞こえた。
「なぁ、聞いたか?近くにある洞窟のダンジョン、あそこのダンジョンボスが消えたらしいぞ?」
その言葉に三人は耳を傾けた。
「えっ⁉あのダンジョンボスはAランク冒険者でも手こずるレベルのはずだろ?Aランク以上の冒険者がやったのか?」
「いや、最後のパーティが生還してから誰も入っていない。なのにボスの反応が消えたってギルドは大騒ぎだったぞ。今調査騎士団が調査でダンジョンに向かっているって話だ。」
「はえ~、不思議なこともあるもんだ。」
その話を聞いたフリック達は不審に思った。
「・・・最後のパーティって私達よね?」
「あ、あぁそのはずだ。俺たちはついこの間あのダンジョンから帰ったばかりだ。そんな短い期間にあのボスが倒されるなんてありえない・・・!」
フリックはハッと気づく。
「まさかレイガが⁉」
「そ、そんなはずないわ!あいつは死んだはずよ⁉」
「そ、そうだな。それにあいつが一人であんな化け物を倒せるはずがない!」
まさかの可能性を否定し続ける二人。
だがアミンだけはどうしてもそれがレイガだとしか考えられないでいた。
「・・・行こう。」
「は?」
「確かめに行こう!本当にそれがレイガなら助けないと!」
そう言うアミンにフリックは怒鳴る。
「馬鹿言ってんじゃねぇ!あいつは死んだんだぞ!レイガがあのボスを倒したとでも言いたいのか⁉」
それでもアミンは退かず言い返す。
「それを確かめに行くんです!本当に彼が死んでいたのなら、私は諦めます!」
アミンの強気の眼差しにフリックは一瞬手を出しそうになったが周りには他の冒険者もいるので大人しく従った。
「次に俺に口出ししたら承知しねぇぞ!」
一方、例のダンジョンの中には三人の冒険者が足を踏み入れていた。
「ここのボスが消えたって噂らしいな。」
「今まで無限に湧くスケルトンに苦戦していたけどボスが居なくなりゃ怖くねぇ。」
「調査が入らないうちに宝を集めるぞ!」
宝を狙いに三人の冒険者はダンジョンを進んでいき、スケルトン・ロードがいたボスの部屋にたどり着いた。
「おいおい、宝なんて一つも見当たらねぇぞ?」
「もしかして俺達より先に誰かが入ったのか?」
「いや、それはないはずだが・・・?」
しかしどこを探しても宝物らしき物は見つからなかった。
「なんだよ無駄足かよ。」
「大金が手に入ると思ったのによ・・・。」
すると冒険者の一人がとんでもない提案を出してきた。
「・・・なぁ、これから調査で何人か冒険者が入ってくるよな?」
「あ~、かもしれねぇが・・・お前まさか・・・⁉」
冒険者は不気味な笑みを浮かべる。
「ここで待ち伏せて、そいつらの身ぐるみを剥がないか?」
その目は欲に眩んだ目をしていた。
「お前ら、金に困ってんだろ?もうちまちま稼ぐのはいい加減面倒になってきたんだよ。だから他のパーティを待ち伏せるぞ。」
次第に残り二人も同意し始め二人の目も欲に満ち溢れてきた。
「・・・そうだな。」
「へへへっ!」
その時だった。
部屋の中心に空いた大穴からどす黒い影が出現する。
「な、何だ⁉」
影は三人の前に降り立つと左目に紫色に光る刺青が入った男だった。
レイガである。
「な、何で大穴から人間が飛んで出てくるんだ⁉」
「おい、こいつもしかして・・・最後に出てきた冒険者が死んだって言っていた奴じゃねぇのか⁉」
その言葉に反応したレイガは冒険者に詰め寄る。
「その冒険者の名前はフリックと言うか?」
今までの彼とは違い冷酷な声で質問する。
冒険者はレイガから凄まじい恐怖を感じ取り大慌てで答えた。
「そ、そうです!確かフリックって名前の冒険者でした!」
「・・・そうか。」
何かを諦めたかのような声で返事をすると冒険者から離れ、側に落ちていたボロボロの布を羽織った。
(ロクに探しにも来ず死んだことにしている辺り、やっぱりあいつ等にとって俺はいらない存在だったんだな・・・。)
期待はしていなかったがこれが確信に変わると流石に応える。
レイガはゆっくりと出入り口に向かおうとした。
その様子をただ茫然と見続ける三人の冒険者。
「な、何なんだこいつ?ほんとにフリックって奴が言っていた死んだメンバーなのか?」
「そ、そんな訳ねぇだろ!大体そいつは荷物持ちでしか役に立たないって言われてたじゃないか!」
本人が目の前にいるにも関わらず好き放題いう冒険者。
するともう一人の男が言い始める。
「そんなことはどうでもいい。タイミングからしてさっきの会話を聞かれたかもしれねぇ!このまま帰すわけにはいかねぇぞ!」
「っ‼」
三人はそっと武器を取りレイガの背後に回り込む。
「・・・今だ‼」
一斉にレイガに襲い掛かる。
だが、
「・・・救いようのないとこまで落ちたか。」
その瞬間、レイガの背中から巨大な竜の頭が大きく口を開けて出現した。
「えっ?」
そのまま三人の冒険者は竜の頭に食われた。
「小さくてまずい罪だが、まぁ食えなくはないな・・・。」
人を殺しておきながらもレイガには罪悪感もまったく感じなかった。
(これでいい、俺は人を辞めたんだ。)
すると洞窟の奥から金属がこすれる音が複数聞こえてきた。
そしてレイガの前に現れたのは国の調査騎士団だった。
「な、何だこれは・・・⁉」




