『第五章 大罪の亡霊』
崩落と共にダンジョンの地下深くへ落ちたレイガ。
彼が気が付いたのは薄暗い洞窟の中だった。
「ここは・・・?俺は確かロードを倒して、それから・・・。」
そこでレイガは両腕に纏っていた黒い靄が消えていたことに気づいた。
「思い出した!あの靄が俺の身体に入り込んで意識を失ったんだった。」
立ち上がろうとすると全身に痛みが走る。
「痛っ⁉身体がボロボロだ・・・。骨も何本か折れてやがる。」
軋む身体を何とか動かし洞窟を進んでいると目の前にし四~五メートルある巨大な扉を見つけた。
「何だこれ、デカいな。」
扉をよく見ると明らかに人為的な魔術がかけられているのに気付いた。
何となくその魔術印に触れるとあっさり解けてしまった。
相当古く劣化していたみたいだ。
「そんな昔からの魔術がこのダンジョンに?」
ボロボロの身体で必死に扉を押し何とか入れる程度まで押し開けた。
レイガは中に入るとそこには広い空間が広がっており、部屋の真ん中に七つの光る鉱石が置かれていた。
一つ一つ違う色を放つ鉱石。
「何だこれ?ダンジョンコアか?でも七つも必要ないはずなのに・・・。」
その時、どこからか声がレイガの頭に響いてきた。
「誰だ、お前は?」
レイガは突然の声に驚き腰を落とした。
「何だ⁉頭に声が・・・⁉」
すると鉱石の一つが強く光出した。
「こんなところに人間が来るなんて何千年ぶりだ?」
「お前、誰なんだ?」
「は?何も知らずにこんなところに来たのか?」
するともう一つの鉱石が光出す。
「どうやらこの人間は本当に我らの事を知らないようだ。
こいつの記憶を見た限り我らに関する情報は見られなかった。」
大人な女性の声が響いた。
(え⁉記憶を覗いた⁉マジかよ・・・。)
レイガは気味が悪そうな顔をした。
「じゃぁこいつはただ単に迷い込んだだけか・・・。なら丁度いい。」
最初に光った鉱石が話を続けた。
「お前、俺達をここから連れ出してくれよ。」
「・・・は?」
レイガは首をかしげる。
「もう長い事ここに閉じ込められて退屈してたんだ。いい加減外で大暴れしたくて仕方がねぇ。な、頼むよ。」
「突然そんなこと言われても、俺の身体はボロボロだしここがどこかも分からないし、それに・・・。」
「それに?」
レイガはあの三人の事を思い出し、苦い表情をする。
「・・・小さいころからずっと一緒にいた仲間に、捨てられたばかりだから・・・。」
特にショックなのは一番仲が良かったアミンに突き落とされた事だ。
操られていたことは分かっているがやはり傷に答える。
「・・・事実だな。記憶を見るにこれまでもその者どもから残酷な仕打ちを受けている。人間とはいつの時代も愚かな生物だな。」
大人な女性の声が言う。
するとまたもや鉱石が光出し、今度は可愛い少女のような声が聞こえてきた。
「うぅ、そんなの酷過ぎるよ!この人から見えるオーラは凄く綺麗だよ⁉何も悪いことしてないのに!」
レイガは驚いた。
ここまで自分に同情してくれた事はアミン以外で初めてだったからだ。
「私、そいつら許せない!ねぇ!貴方は悔しくないの⁉今までそいつらのために頑張ってたのにこの仕打ちって、あんまりだよ!」
涙声で訴えてくる。
「悔しくない・・・て言ったら、嘘になるな。でも正直どうすればいいか分からないんだ。こんな身体になるまで必死に生き延びる事しか考えてなかったから・・・。」
もう腕を動かす力も残っていない身体。
こんな身体でどう生きろと言うのか、レイガは分からなかった。
「でも・・・、嬉しかった。」
「え?」
「俺は昔から誰かに心配されたことがあまりない。でも君は、初対面である俺にそこまで思ってくれて、言いたいことを全部言ってくれて、凄く嬉しかった。だから・・・ありがとう。」
少し気恥ずかしい笑顔で笑った。
「・・・っ‼そ、そんなお礼を、言われる・・・程じゃ・・・!」
恥ずかしそうにごにょごにょと声が縮んでいった。
「・・・あぁ、まぁ何だ?お前の事情は分かった。で?お前はこれからどうしたいんだ?そいつらに復讐でもするのか?」
その言葉にレイガは反応する。
「復讐・・・。でも、こんな身体じゃ外に出るまで魔獣の餌になるのがオチだ。復讐以前にくたばってしまう。」
するとまた一つ鉱石が光出し、何だかだるそう少年の声が聞こえた。
「ふぁ~っ、細かい事考えんな。お前はここでくたばりたくはないんだろう?」
「あ、あぁ。」
「だったら俺達と一緒に外に出ればいいじゃねぇか。そこの強欲バカはお前の体内に入って外に出ようと企んでたんだからな。」
「おい‼言うなよ‼」
(俺の体内に入る⁉どういうことだ⁉)
言っている意味が分からず、混乱していると鉱石が話を続けた。
「・・・まぁそういう事だ。俺はお前の身体に移って外に出ようと考えていたんだが、どうだ?」
「どうだと言われても・・・それは俺に何のメリットがあるんだ?」
「そうだな。俺の力がお前に宿るってところだろうな。あ、もし俺をそっちに移してくれたらお前の身体も直してやろうか?」
相手は取引をしてきた。
力が宿る点についてはあまり理解はできないが傷を治すという言葉に引っかかる。
そこでレイガはフリック達を思い出し、覚悟を決める。
「・・・じゃぁ、俺からも取引だ。」
「何だ、言ってみろ。」
「外に出す代価として、俺の復讐に協力しろ!もう良心なんか持っている余裕はない。俺は、アイツらが犯した罪をその身をもって味合わせてやりたい!アイツ等に俺を裏切ったことを後悔させてやる‼」
ふつふつと憎しみの感情が高まっていく。
その感情からか、レイガから黒いオーラが出ているように見えた。
(ほう、この人間・・・闇の魔力を宿していたのか。しかしこれ程の魔力量、この量ならあるいは・・・。)
「ハハハッ!良いぜ良いぜ!暴れられるならお前の復讐に付き合ってやるよ!それじゃ早速・・・!」
「待て!」
女性の声が止めに入った。
「うわっと⁉何で止める‼」
「少しこの人間と話をさせろ。」
女性の声はレイガに語り掛ける。
「人間。本当に復讐をするのか?」
「あぁ、腹はくくった。これ以上良心で生きていても何も得られそうにないからな・・・。」
レイガの目は完全に覚悟を決めた眼差しをしていた。
「では我ら全員、お前に力を貸すとしよう。」
その言葉にさっき身体に入ろうとした声が騒いだ。
「はぁ⁉お前何言って⁉」
「黙ってろ。人間、今お前には膨大な闇の魔力が流れている。それも我ら七人全てを取り込めるほどに。」
「何⁉」
「ウソ⁉」
「・・・んぁ?」
闇の魔力。
そんなものを取り込んだ覚えはないレイガだが、ふと思い出した。
(そういえばスケルトン・ロードを倒した際に黒い靄が身体に入り込んでいったが・・・あれか?)
思い当たる節はそれしかない。
女性の声は話を続けた。
「こやつだけでは何かと心配なもんでな。」
「おいコラっ!」
「そこでここにいる者全員でお前に移り、共に外へ出ようと思うのだが、どうかな?」
レイガはしばらく考え込み、出した答えは、
「・・・分かった。お前らがここにいる理由は分からないけど、何だか信頼できそうな気がするんだ。だから、よろしく頼むよ!」
女性の声はフッと笑う。
「異論はないか皆の者!」
そう声をかけると部屋にある七つの鉱石が全て光出す。
「異論はねぇ!派手に暴れられるならな‼」
「久々に、外の食べ物、食べたかった気分・・・。」
「数千年ぶりの地上かぁ。どんな風になっているか楽しみだわ。」
他にもいたようだ。
既に聞こえていた声たちも騒いでいる。
「じゃぁ私も一緒に行っていいの⁉やったー!」
「ちょちょ、ちょっと待て⁉全員ついてくるのか⁉」
「ふぁ~っ。お前だけいい思いさせるわけねぇだろ。」
随分賑やかなメンバーだった。
とても鉱石が喋っているようには思えない程に。
「アハハ、・・・皆、よろしくな!」
「「おう‼」」




