『第四章 再戦』
溝に落とされたレイガはそのまま落下し続け、大きな水たまりに落ちた。
何とか岸まで泳ぎ切ったものの立ち上がることが出来ないでいた。
「ハァ・・・ハァ、アミン・・・何で?」
まさかアミンに突き落とされるなんて思わずあまりにも大きなショックにレイガはその場で泣き崩れてしまった。
一頻り泣いた後、冷静になって考えた。
「いや、俺は見逃さなかったぞ。」
確かにレイガを突き落としたのはアミンだったが冷静に思い返してみるとアミンの瞳に光がかかっていなかったことに気づいた。
恐れく操られてのだろう。
そして操った張本人は分かっている。
セリネだ。
「あいつ自身も俺を嫌っていたからな。しかしアミンを利用して俺を落とすとは・・・。」
ふつふつと怒りの感情が沸き上がるが今は押さえる。
まずはここを脱出しなくてはならないからだ。
幸い荷物はたくさんある。
何か使える物はないかとバッグを漁ると、
「何だこれ?」
一冊の日記帳を見つけた。
フリックの物だった。
「アイツ日記付ける習慣あったの?」
まさかと思いながらもその日記を覗くとレイガは黙りこくってしまった。
「・・・何だよ、これ・・・?」
その内容はレイガに対する暴言や心のない言葉ばかり。
一番最悪だったのはフリックはレイガをただの身代わり人形としか見ていなかったことだった。
ずっと一緒に過ごしてきた幼馴染に裏切られ、レイガはまた泣き崩れてしまった。
「・・・泣いてても埒がアカン!まずは使えそうな道具の整理!」
要らない物を投げ捨て厳選した道具はこれだ。
「小型ナイフにロープ。火打ち魔石に水魔石。そしてこの・・・魔法封石。」
ごろッと置かれている三つの魔石。
この魔法封石は一つの石に魔法を封じ込めているかなり貴重な代物だった。
以前フリックに無理やり買わされた物が三つ残っていたようだ。
「この魔石が俺の生命線だな。」
ふうっと安心のため息をつくレイガ。
必要最低限の荷物をバッグに詰め洞窟内を進んでいった。
道中何度も魔獣に出くわしたがこれまで荷物持ちであったため危険を防ぐべく魔獣についてはかなり勉強した。
幸い今いるダンジョンは事前に調べ上げた魔獣しか出てこなかったのでうまく掻い潜り難を逃れて言った。
「貴重な魔法封石を使いたくないからな・・・。」
だが一つ問題があった。
食料だ。
今までは魔獣に見つからないよう逃げて進んでいたので食料を確保していなかった。
荷物にも入ってなくレイガは常に空腹状態だった。
「くそ、腹が減ってイマイチ力が入らない。どうしたもんか・・・。」
戦闘経験もないレイガが魔獣と戦うのは自殺行為に近い。
途中洞窟内に生えていた薬草や鉱石を食らうしかなかった。
「このままじゃ俺が魔獣みたいになっちまう。」
無我夢中で洞窟を進んでいくと見覚えのある空間に出た。
「あれ?この部屋って・・・。」
その時、通ってきた通路が突然塞がってしまった。
「⁉」
そしてレイガが見るその先にはアイツがいた。
「オオオオオオオオ‼」
「スケルトン・ロード⁉」
最初に入った入口とは別の入口からスケルトン・ロードの居る部屋に入ってしまったようだ。
ハッキリ言ってかなりまずい!
「オオオオオオオオ‼」
「うおっ⁉」
振り下ろされる剣を避け壁に背をつける。
「くそっ!ロクに武器も持っていないのに!」
小型ナイフでは話にならない。
何か使える物はないかと急いでバッグを漁る。
すると三つの魔法封石が目に止まった。
「三つしかないけど、出し惜しんでる場合じゃねぇ!」
レイガは魔石を一つ握りつぶした。
すると魔法陣が展開され炎の槍が無数に出現した。
「くらえ‼」
槍が数本はなたれスケルトン・ロードの足の部位に直撃する。
スケルトン・ロードは体勢を崩し倒れる。
「第一ラウンドの攻略法はわかってんだ!なるべくこの槍だけで切り抜ける!」
宣言通りレイガは槍を数本残した状態で第一ラウンドを突破した。
だが本当の戦いはこれからである。
「オオオオオオオオ‼」
光に包まれ、ガシャスケルトン・ロードへと変化した。
「あの咆哮を使われたら終わりだ!その前に倒しきる!」
もう一つの魔石を砕き、今度は氷の大剣が三本出現した。
「オオオオオオオオ‼」
「うおぉぉぉぉぉぉ‼」
レイガは無我夢中で戦った。
生きるために必死だった。
そして、
「ハァ・・・ハァ・・・。」
「グゴゴ・・・。」
大剣は砕かれ残り一本、炎の槍も残り二本だけしか残っていなかった。
対してスケルトン・ロードはほとんどの骨を砕かれもはや左腕しか動かせる部位はなかった。
「あと一歩・・・、奴の急所を!」
「ゴゴ、ゴ・・・。」
「?」
「オオオオオオオオ‼」
「なっ⁉」
この咆哮は例のあれだった。
スケルトン・ロ―ドの足元からスケルトンの大軍が出現した。
「しまった!先に顎を破壊すれば良かった‼」
後悔してももう遅い。
大軍はじりじりとレイガに迫る。
四人でも敵わなかった相手に一人で立ち向かわなくてはならない。
「もう、これにかけるしか・・・!」
レイガの手には最後の魔法封石が握られていた。
そしてスケルトンが襲い掛かる。
「もうどうにでもなれ‼」
そう叫ぶを同時に魔石を砕いた。
そこにスケルトンがガシャガシャとレイガに積み重なっていく。
しばらく沈黙が続いた。
その時、山積みになったスケルトンが凄まじい爆発によって吹き飛ばされたのだ。
そしてそこにいたのは黒い靄を両腕に纏ったレイガが立っていた。
「オオオオオオオオ‼」
スケルトン・ロードがすぐさまレイガに襲い掛かるがレイガの繰り出した拳はいとも簡単にロードの左腕を砕いた。
「ガァァァァ‼」
衝撃で後ろに倒れるスケルトン・ロ―ド。
「ハァ・・・ハァ・・・、何だこれ?凄い力が湧いてくる!」
最後の魔石を割った瞬間どす黒い魔力が体内に入ってきた。
だが不思議と嫌な感じはしない。
むしろ、
「身体になじむ。これなら!」
レイガは走り出す。
残ったスケルトンの大軍を蹴散らし大きくジャンプする。
「生きるため、勝たせてもらうぞ‼」
レイガはスケルトン・ロードの頭上から凄まじい連撃を繰り出した。
無数の黒い拳がロードの身体を砕いていく。
「うおぉぉぉぉぉぉ‼」
そしてスケルトン・ロードはチリとなりダンジョンへ吸われるように消えていった。
全てを出し切ったレイガはその場に落ち、倒れた。
「ハァ・・・ハァ・・・俺が、倒した?・・・一人で・・・。」
無理な魔力消費で指一つ動かせず身動きが取れない。
その時だった。
「ぐっ⁉何だ⁉身体が・・・⁉」
突然身体中が握り潰されるような痛みに見舞われた。
意識を失うほどに。
「ぐぐ、ガァァァ‼」
腕に纏った黒い靄がレイガの体内に入っていき、入るたびに痛みが増していく。
そして全ての靄が身体に入りきると同時にレイガは気を失ってしまった。
更に悪い事は続き、部屋の床が崩れレイガは崩落と共に暗い穴の底へ落ちていった。




