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罪を喰らう者  作者: アニトマ
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『第十三章 形見』

悪徳領主の悪行は瞬く間に全領土に知られることとなった。

地位の欲しさに前領主を暗殺し、その罪を彼の親友でもあった飲食店の店主に着せたという。

店主の弟子であった青年たちが無実の証明を集めようとしても集まらなかったのは領主が裏で手を引いていたとの事だ。

当然悪徳領主に加担した関係者は全て取り押さえられ、新たな領主は前領主のせがれ、セルディが受け持つこととなった。

「あのデブは国のお偉いさんの所に連れていかれて重い処罰を下されたんだとよ。」

「そうか。」

陰で悪徳領主を懲らしめたレイガは宿に戻り、庭でイフルを洗っていた。

「女の子なんだから綺麗にしなくちゃね。」

肩から出てるレヴィアスがレイガに洗い方を教えながら周りをふよふよしていた。

「つか教えながらじゃ効率悪いだろ。お前が直接洗ってくれ。」

「あ、そっか。それもそうだね。」

レイガは手をかざし詠唱する。

「『大罪顕現・嫉妬』!」

魔法陣が展開されると帽子をかぶった白髪の少女が現れた。

そして彼女の瞳は深海のように美しいサファイア色に輝いていた。

「ん~っ!久しぶりの外気持ちいい!」

ぐ~っと腕を伸ばす少女はそのままレイガの背中に乗っかった。

「えへへ。お兄ちゃんと肌で触れ合うの大好き♪」

当のレイガは平然とした表情でイフルを洗い続けると彼女のデリケートな部分に触れてしまいイフルはバッと股を押さえた。

「あ、すまん。」

「もう、レイガはエッチなんだから♪」

「・・・つか俺が女を洗う事自体がおかしいだろ。」

「今更かよ。」

体内からグリードがツッコんだ。

「後はお前に任せる。俺は少し用事を済ませてくる。」

「はーい♪」

イフルをレヴィアスに任せ、レイガはとある場所に向かった。

「ここだな。」

やってきたのは罪の魔物の記憶で見た飲食店だった。

「すみません!只今混雑していまして、席が空くまで外でお待ちください!」

忙しそうに料理を運ぶ小太りの男性。

そう、この男性は罪の記憶で見た当時の店主の手伝いをしていた青年だったのだ。

今は亡き店主から店を受け継ぎ店主として店を繁盛させていたのだ。

「いや、俺は客じゃない。ここの店主と話が合ってきたんだ。」

「俺に、ですか?」

レイガは客足が落ち着くまで待ち、誰もいなくなった店内に腰を降ろす。

「あの、俺に御用とは何でしょうか?」

店主がお冷を出しながら聞いた。

「これをアンタに渡したくてな。」

懐から一本の包丁を差し出した。

「っ⁉この包丁は⁉」

「前任の店主の物だ。」

店主は包丁を手に取りジッと見つめる。

「間違いない。これはオーナーの包丁!でも何故貴方が?」

「ある場所に捨てられてた所を拾ったんだ。落し物は元の居場所に返さなきゃと思ってな。」

そう言いお冷を口に含む。

すると店主は涙を流し始めた。

「ありがとうございます。これは、俺にとっても大切な包丁・・・。俺が料理人見習いだった頃、オーナーがこの包丁を使わせてくれて沢山修行しました。この包丁は、亡きオーナーとの大切な思い出です。本当に、ありがとうございます!」

頭を下げてお礼を言う店主。

「俺はただ落とし物を届けに来ただけだ。と、そうだ。この街の領主の事は聞いたか?」

「はい、領主殺人の真犯人は当時の領主の子弟であり、オーナーは濡れ衣であったと報道で聞きました。前領主に対して怒りが収まりませんが、どんなに憎くてもオーナーは帰ってきません・・・。」

「帰ってきたじゃないか。」

「え?」

レイガは包丁を指した。

「物には魂が宿る。俺に拾わせ届けさせたのも、そのオーナーの意志かもしれないぜ?」

レイガの言葉を聞いた店主は再び涙を流した。

「そうですね。オーナーはちゃんと帰ってきました。貴方には感謝しかありません。ありがとうございます!」


 店主との会話がつい長くなり、レイガが店を後にしたのはすっかり日が暮れた時間だった。

「こんなに人に感謝されたのは初めてだな。」

レイガがポツリと言葉を漏らす。

「別の街が指名手配されてるのにな。」

「だがいずれこの街にもレイガの手配が来るやもしれん。もうこの街に居座る理由はないであろう?」

「あぁ。罪もたらふく食ったし、そろそろ出るか。」

レイガは街の街灯に照らされる闇夜を歩いていったのだった。


 それから少し後の話。

ローディナの領主となったセルディは今も忙しそうに書類の後始末をしていた。

「セルディ様。少しはお休みください。いくら領主と言えどまだ成人なされてない子供です。」

「分かってる。でも父の領土を守るため、今は一秒でも時間が惜しいんだ。それに執事に貴方達がいてくれるおかげで不自由はない。父の代から仕えてくれて感謝している。」

「セルディ様・・・。」

するとそこへ給仕のメイドが一通の封筒を手に部屋に入ってきた。

「セルディ様、お届け物です。」

「ん?」


 同時刻、飲食店では大勢のお客さんで賑わっていた。

「お父さん!四番テーブル注文追加!」

「おう!」

店主の娘が大忙しでオーダーを取り店主が料理を作る。

すると食事を食べ終わったギルド職員が会計と同時にある封筒を渡した。

「落ち着いた時で構いませんが、お目通りをお願いします。」

「え?あぁ。」

休憩時間となり、店の裏で店主はギルド職員に渡された封筒を開ける。

「報告書と、手配書?」

領主のセルディも封筒の中身を開けて報告書を見ていた。

「これは・・・。」

手配書にはレイガの顔が描かれていた。

「セルディ様、その手配書の男は・・・。」

「あぁ、彼だ。」

店主も手配書のレイガを見て驚いていた。

「最近ギルドで話題になっている男ってのはこの子だったのか・・・。」

同封されていた報告書にはこの者を見かけた際には即ギルドに報告するよう義務付けされていた。

「セルディ様はこの者と会ったとおっしゃいましたよね?でしたらすぐにギルドに報告を・・・!」

「・・・いや。その必要はない。」

「っ⁉」

セルディと店主はフッと笑いを零した。

「彼が人殺しなど、恐らく偽りだろう。例え殺してたとしても、それはどうしようもない悪人にのみ対する話だ。僕は実際その光景をこの目で見た。」

それは店主も同じだった。

「ダンジョン化が進んだ廃坑の奥に捨てられたオーナーの遺品をわざわざ届けてくれる程だ。ギルドの連中は彼の悪い部分しか見ていない。」

二人は報告書と手配書をビリビリに破き、ゴミ箱に捨てた。

「「さて、今日も頑張りますか!」」


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