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罪を喰らう者  作者: アニトマ
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『第十章 罪の記憶』

仕留めたブレイクボアを持って街に戻ろうとした時、フェニスが付近で罪の気配を感じ取った。

しかもかなり大きく、なんと罪の魔物が生まれる可能性が高いとの事だった。

罪は彼等にとって極上の食材。

急いでその現場に向かうと先ほどレイガが二人の冒険者を助けた鉱山にやってきた。

「ここは盗賊の根城になってた廃鉱山じゃないか?」

「だが罪の気配はここからしている。しかもかなり濃い。」

鉱山に一歩足を踏み入れた瞬間、確かに濃密な罪の気配が漂ってきてた。

「確かにいるな。」

するとついてきたエルフの少女、イフルがレイガのボロボロのマントを強く握りしめた。

彼女も濃密な罪を感じているようだ。

「・・・怖いか?」

イフルは恐怖で震えている。

すると身体からレヴィアスが出てきた。

「大丈夫だよ。それ!」

口を開くと魔法陣が現れイフルを包み込んだ。

「気配を遮断する魔法だけどこれならついてきてもこの子に悪影響は出ないと思うよ。」

「サンキュ、レヴィアス。」

はぐれないようイフルの手を握りレイガは鉱山の奥へと入って行った。

道中レイガから発せられる圧のおかげで魔獣に出くわすことなく最下層までやってきた。

レイガが倒した盗賊の亡骸は綺麗に片づけられていた。

(あの時やってきた冒険者たちが片したのか。)

辺りを見回しても罪の気配の大元は見えない。

「油断するなよレイガ?罪の魔物は通常の魔獣とは違い特殊な気配を放っている。」

「あぁ、罪の感覚を掴んでやるさ。」

目を閉じ意識を集中させるレイガ。

すると、

「っ!上だ!」

頭上の暗闇から黒い靄の塊が落ちてきた。

レイガはイフルを抱え距離を取る。

「ついにお出ました!」

肩からグリードが顔を出す。

落ちてきた黒い靄は不気味にうごめき手足が生えるように現れ赤い眼球がギョロッと開眼する。

この世の生き物とは思えない異形の怪物にイフルは恐怖する。

(こいつには刺激が強すぎるか。)

「ヴォォォォォ‼」

生き物とは思えない雄たけびを上げレイガに攻撃してきた。

その攻撃をかわし壁に空いたくぼみに降りイフルを隠す。

「ここに隠れてろ。」

不安がる彼女を残しレイガは罪の魔物に突っ込む。

「グリード!グラニー!」

「よっしゃ!」

「うん。」

レイガの両腕が竜の頭に変形し罪の魔物に噛みついた。

「グギャァァァ‼」

おぞましい声を上げ暴れまわる魔物。

靄の身体を引きちぎり魔物から離れる。

「モグモグ、極上とまではいかないけど、濃い罪。」

引きちぎった靄を食べる左腕のグラニー。

右腕のグリードも一口で平らげる。

「コイツ割と深い罪を持ってるな。この程度なら俺一人で食いきれるぜ!」

「独り占め、ダメ、グリード。」

「うるせぇよ。つか暴食のお前に言われたくないわ!」

両腕の会話を他所にレイガは悶える罪の魔物を見る。

「・・・グリード。アイツの記憶を食う事は出来るか?」

「あ?」

「さっき食った罪から感情的な何かを感じたんだ。もしかしたら、まだ人間だった頃の意志が残ってるんじゃないか?」

罪の魔物の正体は人間。

己の犯した罪や濡れ衣、恨みなどの大きな負の感情に飲まれあのような異形の怪物になってしまうのだ。

「例え感情が残ってたとしても、一度罪の魔物になってしまった者は二度と元には戻れん。一部例外を除いてな。」

背中から出てきたルシファードはイフルを見る。

「善良な心の持ち主なら我らが罪を食らえばその者は救えるが、アレはもう手遅れだ。罪に捕らえられ長い年月が経ちすぎてる。例え善良な心の持ち主で我らが食らっても、助けることは出来ん。」

「そうか・・・。」

時間が経ちすぎて二度と人間には戻れない。

もはやレイガたちに出来ることは、食らって楽にさせるのみ。

「お前の罪。俺達が食らい尽くしてやる!」

両腕を戻し手をかざす。

「グリード。頼むぜ。」

「あいよ。」

「『大罪顕現(たいざいけんげん)強欲(ごうよく)』‼」

かざされた手から魔法陣が展開。

そして魔法陣から巨大な鎌を持った筋肉質な青年が現れた。

「おらぁ!強欲のグリード様の復活だ!」

鎌を振り下ろし魔物の靄を一部刈り取った。

「チッ、外したか。」

靄を投げつけルシファードが食らいつく。

「ふむ。なかなかに美味だ。だが狙いの部位ではないな。しかも靄が多くその部位を刈り取るのは難しそうだ。」

「グリード!靄を刈り取り続けろ!主に頭を狙え!」

「おう!」

人間体のグリードは鎌を自在に振り回し罪の魔物の靄を順調に刈っていく。

刈った靄はレイガから出てる二頭の竜が食らい続けていた。

「ん!味が変わった。近いよ!」

グラニーが狙い部位の位置を割り出す。

靄が薄れた頭部だ。

「グリード!そこだ!」

「『デスライザー』‼」

魔力の纏った鎌が鋭い一閃を繰り出し頭部の靄が刈られ光の球体が露わになる。

「レイガ!」

一気に走るレイガは右腕にルシファードを宿し光の球体に食らいついた。

「ギャァァァ‼」

暴れて抵抗する罪の魔物。

「大人しくしてろ!」

グリードが魔物の足を切り裂き抵抗力を削ぐ。

「お前の罪、食らってやるぜ!」

眩い光に包まれ光の球体をかみ砕いたのだった。


 街の人々でにぎわう街『ローディナ』。

その街の中にある飲食店で忙しそうに働く一人の男性。

「オーナー!三番テーブル、ミートソースステーキ追加注文です!」

「分かった!」

厨房で豪快に料理をする小太りの男性。

この飲食店のオーナーである。

暫く忙しい時間が続き閉店時間が近くなった日没。

店に少し豪華な装いの男性が来店してきた。

「領主様!」

来店したのは当時ローディナを支えていた領主様だった。

店員の男性が緊張気味に冷水を出し下がる。

「毎日ご苦労だね。」

「これも全て領主様がサポートしてくれたおかげです。」

「ハハハ、そう言ってくれるとこちらも頑張った解があるよ。君の夢だった料理で人を笑顔にしたいという思いに私も心を打たれたからね。」

二人は楽しそうに世間話をし領主は料理を堪能。

何事もない平和なひと時が続いたのだった。

かに思われた。ある日、ぱったりと領主が来店してこなくなったのだ。

「お仕事が忙しいんですかね?」

「そんなはずは、あの人はどんなに忙しくても必ず一日一回は来てくださるんだぞ?」

不審に思いながら開店の準備をしていると、

「あれ?」

「どうした?」

「いつもここに仕舞っていた包丁がないんですよ。」

「何?・・・本当だ。」

包丁をしまう棚の一部が空いていた。

「そういえば、裏口の鍵がいつもより緩かったような気がしたな?」

「まさか、盗人⁉」

「あの包丁はそんなに価値がある物ではないが?」

その時だった。

突然店のドアが開けられらと思ったら街の自警団が乗り込んできたのだ。

「自警団⁉何でここに⁉」

「この店のオーナーは貴方ですね?」

団長らしき男性が話しかける。

「はい。そうですが?」

「お前を()()()()()()で連行する!」

「「はぁっ⁉」」

耳を疑う言葉をかけられ二人は反論する。

「ど、どういう意味ですか⁉私が殺人⁉それに領主様が殺されたって⁉」

「何かの間違いです!オーナーは四六時中僕と一緒に店の仕込み作業をしていたのですよ⁉」

「これを見ても否定できるか?」

兵士の一人が一つの出刃包丁を取り出し見せた。

「それは!」

「なくなったと思ってたうちの包丁⁉」

「これが領主様の胸元に刺さっていたのだ。調べた結果、この店の物だと判明。よって貴様に容疑がかけられている。我々と来てもらうぞ!」

数人の兵士が二人を捕らえ自警団本部へと連行されてしまった。

当然オーナーは自分ではないと否認する。

中が良く恩もある領主を殺すなどありえないからだ。

しかし何故か自警団は信用しようとはせず彼が犯人だと決めつける。

共に居た男性店員は容疑は晴れたがオーナーだけは容疑が晴れず、ついには死刑にまで発展してしまった。

解放された男性店員は常連客だった人たちを集め必死にオーナーの濡れ衣を晴らす証拠を集めたが()()()()()()()()()()()()()()()、結局オーナーは領主殺人の罪で処刑されてしまった。

男性店員と常連客の人達はオーナーを救えなかったを悔やみ絶望する。

そしてオーナーの亡骸は現在ダンジョンとなった廃鉱山へと投げ捨てられてしまったという。


 「・・・・・。」

気が付いたレイガは消滅しかけてる罪の魔物の前に立っていた。

「・・・哀れな。濡れ衣を着され自ら罪の魔物へとなったか。人間はいつの時代でも愚かな種族だ。」

「このおっさんは何も悪くねぇ。悪いのは、奴だ。」

食らった記憶を見て当時の領主殺人の真犯人をレイガは割り当てていた。

「どうする?今の記憶見て凄い胸糞悪いんだけど?」

崖上に隠してたイフルを乗せてレヴィアスが降りてくる。

「当然、そいつの罪も食らいに行くぞ!」

レイガは消滅した罪の魔物から出てきた光る何かを回収し、ダンジョンを後にしたのだった。


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