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罪を喰らう者  作者: アニトマ
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『第一章 序章』

暗い夜の広い荒野。

その中心では悶え苦しむ影があった。

「うわぁぁぁ⁉」

一人の人間が黒い何かに飲み込まれる。

「ひっ!もうだめだ・・・。俺たちも()()()()()()()()‼」

複数の男たちが戦っていたのは黒い靄が不気味にうごめく謎の物体。

ぎょろぎょろと動く二つ点が残った二人の男たちを見る。

「まずい!狙いをつけられた!」

「逃げろ‼」

武器を捨て一目散に逃げだす。

だが黒い怪物はおぞましい動きで追いかけビュッと一本の触手を伸ばし二人のうち一人を捕まえた。

「うわっ⁉た、助けてくれ‼」

もう一人の男に助けを乞うが男は一度振り向きはしたが彼を見捨て、そのまま森の中へと逃げて行った。

「待て、置いてかないでくれ!ぎゃぁぁぁぁ‼」

ずるすると引きずられ捕まった男は暗闇に飲まれてしまった。

「ユ・・・ルサ、ナ・・イ・・・。マダ・・・アイ、ツ・・ラ、ハ・・・。」

するとどこからか足音が聞こえてきた。

雲が晴れ月明かりが大地を照らすとマントを羽織った一人の影が歩いてくるのが見えた。

「ウウ、ウ・・・?ウォォォォォ‼」

黒い靄の怪物はその人影を見つけると敵だと認識したのか襲い掛かってきた。

「・・・こいつの罪は?」

「善だ。」

一人の陰から何故か二人分の声が聞こえたが黒い靄の怪物は容赦なく掛かってきた。

「善か。ならこいつに食らわせよう。」

すると右腕が巨大な竜の顔に変形すると大きく口を開け黒い靄の怪物に噛みついたのだ。

「ギェエエ‼」

生き物とは思えない声で騒ぐ怪物。

「わめくな。お前も散々食ってきたんだろ?ただ今度はお前が食われる番てだけだ。」

竜の頭と化した右腕はそのまま怪物を噛みちぎり、怪物の身体はチリとなって消えた。

すると消えた身体から一人のエルフの少女が現れ、地面に倒れた。

「・・・エルフのガキだったか。しかも女。」

竜はゴクンと先ほどの怪物を飲み込み元の右腕へと戻った。

「・・・こんな見晴らしのいい場所じゃ違和感を拭えないな。」

マントを羽織った人物は少女を抱え森に入り根元に人が一人入れるくらいの樹木を見つけた。

「一先ずここに隠すか。」

すると両肩に着いた竜の頭の形をした装飾の右側がギョロッと目を開いた。

「お前、人は信じられないとか言ってたくせに女のガキには甘いんだな。」

少し笑った口調で話しかけてきた。

「うるせぇ。だがこいつは人間じゃなくエルフだ。人間よりかはマシな種族だといいんだがな。」

「あんまり期待しない方がいいんじゃねぇか?また同じ目に遭うかもしれねぇぞ?」

「そん時はそん時さ。もうそう言った仕打ちは、腐るほど味わってきた・・・。」

「・・・すまん。嫌な事思い出させたか?」

「おいおい、()()()()()()()様が俺の心配をしてくれるのか?

「チッ、お前はそういう奴だったな。」

男はゆっくりと立ち上がるとフードを取り、黒髪で左目に紫の刺青(いれずみ)が入った顔が出る。

「行くぞ。罪を食らいに。」


 冒険者が賑わう街『ローディナ』。

今日も変わらず冒険者で街が賑わっており人々の笑い声が響いていた。

そして街で唯一の冒険者ギルド、ローディナ支部。

そこに一人の少女が冒険者登録をしに足を運んでいた。

「今日から私も冒険者!いっぱいいっぱい稼ぎまくるぞ!」

レザー素材の防具を身に纏い白い髪をポニーテールに纏めた髪型の少女は勢いよく扉を開けそのまま受付まで直行した。

「冒険者登録お願いします!」

「はい、ではこちらの書類に記入をお願いしますね。」

優しそうなお姉さんが出迎えてくれた。

少女はすらすらと項目に記入をしていき、最後に魔石に触れた。

「はい、レシルさんですね。登録完了です。こちらギルド発行の身分証です。無くさず大切に持っていてくださいね。紛失しますと再登録の際に金善が発生しますので。」

「ありがとうございます!」

渡されたカードには自身の写真とFの文字が記されていた。

このイニシャルは冒険者のランクを表しておりランクが上がるごとにイニシャルの表示も変わる。

一番上のランクはSである。

レシルはお辞儀をして早速クエストボードに向かう。

「えーと、初心者用の依頼は・・・。」

「ねぁ君、もしかして新人?」

後ろから少し年上の少女が声をかけてきた。

「はい、そうですが?」

「そう。あ、ごめんね急に話しかけて!私はネナって言うの。二年前に冒険者になった貴女の先輩よ。よろしくね。」

「先輩・・・!よろしくお願いします!」

「そんなにかしこまらなくてもいいよ。年も近そうだし。ねぇ貴女。初めて依頼を受けるんだよね?」

「はい、でも何を受けたらいいのかよく分からなくて・・・。」

ネナはクエストボードに目を通すと一枚の依頼書に目が止まった。

「やっぱり初心者ってことだから、戦闘の必要がない採取系の依頼がいいんじゃない?」

一枚の依頼書を指さした。

その依頼書には『ファスト鉱山での鉱石採取』と書かれていた。


 レシルとネナの二人は鉱石採取の依頼でローディナの近くにあるファスト鉱山にやってきていた。

二人は整備された洞窟内でつるはしを片手に壁を少しずつ削りながら進んでいた。

道中、鉄や銅など比較的簡単に取れる鉱石を採取していく。

レシルは新人であったがネナの的確なアドバイスのおかげで危なげなく依頼をこなせていた。

「ネナさん。」

「どうしたの?」

「ずっと気になっていたんですけど、この鉱山魔獣は出現しないんですか?」

幾ら街の近辺にあるからと言ってもこの鉱山は決して小さくない。

魔獣が生息していてもおかしくないレベルなのだ。

「あぁ、その心配はないよ。昔はダンジョンだったみたいだけどある事件があってから魔獣が住みつかなくなったみたいよ?」

「事件?」

ネナはレシルに事件の事を話した。

数十年前、ローディナである殺人事件があった。

それはここの領主様の暗殺事件。

仕事で街にやってきた領主様が突然何者かに暗殺されてしまったという。

原因を調べた結果、犯人は飲食店のオーナ―だと判明したようだ。

オーナーは当然自分はやってない、心当たりはないと抗議したが暗殺の狂気であるナイフがその飲食店の物であるという証拠があった。

領主暗殺も罪を課せられそのオーナーは処刑され、ダンジョンの奥底へと放り投げられた。

するとオーナーの遺体はダンジョンの奥地で醜い怪物になりダンジョンを壊滅させてしまったという。

そして怪物となったオーナーは滅んだダンジョンに居座り、危機を感じたローディナの精鋭によってダンジョンのより奥地に封印されたという。

「・・・、それがいつしかダンジョンではなくなった洞窟を鉱山にして今のこのような状態になったのよ。」

ネナの説明が終わるとレシルは何故か涙を流していた。

「えっ⁉急に泣いてどうしたのレシル⁉」

「わ、わかりません・・・。その話を聞いたら、何故か・・・涙が、うわぁぁぁぁん‼」

突然泣き出してしまったレシルをネナは困惑しながらも優しく慰めた。

(どうしたらいいのよ・・・。)


そしてしばらく時間だ経った頃、鉱山の入口に誰かが立っていた。

「・・・罪の気配がする。」

人物の左目には紫色の刺青が不気味な光を放っていた。


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