表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クマさんの"とくべつ"なさがしもの【童話+短編+挿絵有】

 ここは仕事(しごと)(ひか)えたサンタさんのおうち。

 そして、(ぼく)はぬいぐるみのクマさんだ。

 それもただのクマさんじゃないんだ。


 クリスマス仕様(しよう)のとびきりおしゃれなクマさんなのさっ!


挿絵(By みてみん)


()てよ!この(あか)いサンタの帽子(ぼうし)!キラキラと(ひか)金色(きんいろ)(いと)()られた(ほし)マーク!(ほか)のクマさんのぬいぐるみとは(わけ)(ちが)うよ!」


 (ぼく)はサンタさんが子供達(こどもたち)(くば)予定(よてい)のプレゼントの(ひと)つだ。

 けど、(ほか)のプレゼントのクマさんと(ぼく)(ちが)う。


「いいなぁ……。(ぼく)もその帽子(ぼうし)がいい。だって(ぼく)のは普通(ふつう)のサンタの帽子(ぼうし)なんだもん」

自慢(じまん)したくなるのは()かるけど、その(はなし)さっきもしてただろ。何回繰(なんかいく)(かえ)すんだよ……」


 (ほか)のクマさん(たち)(とが)自慢(じまん)帽子(ぼうし)(ぼく)はつい自慢(じまん)してたんだ。

 それも何度(なんど)も。


 だって、(ぼく)はとびきりおしゃれなクマさんだからね!


「いいなぁ……」

「もう、ほっとっけって。……たく」


 (ぼく)はそんな(たの)しい日々(ひび)(おく)りながら、サンタのおじさんが子供(こども)にプレゼントを(くば)()()っていたんだ。

 (ほか)のクマさん(たち)(ちが)特別(とくべつ)(ぼく)は、特別(とくべつ)()のプレゼントで(なが)大事(だいじ)にしてもらえるんだ。

 そうに(ちが)いないそう(かんが)えていたんだ。


 ただ、その(とき)(ぼく)(かんが)えは間違(まちが)いで、(ぼく)調子(ちょうし)()っててそれに気付(きづ)(こと)出来(でき)なかったんだ。


「ふぁ~あ。みんな、おはよう」

「おはよう……。あれ?」

「というか……、お(まえ)どうしたんだ?」

「どうした?ってどういう(こと)?」


 12月23日の(あさ)(こと)だった。

 (ぼく)()きて、(ちか)くのぬいぐるみのクマさん(たち)挨拶(あいさつ)したんだけど、いつもと反応(はんのう)(ちが)っていたんだ。


「いつも自慢(じまん)してた帽子(ぼうし)はどうしたの?」

「えっ?」

「そうそう。いつもつけていた帽子(ぼうし)どこやったんだ?」

「……」


 (ぼく)(こころ)(きゅう)(こわ)気持(きも)ちが()()がって、言葉(ことば)()なくなって(だま)ってしまった。

 そして、ゆっくり(あたま)()()せて、そこにあるはずの帽子(ぼうし)確認(かくにん)したんだ。


「……な、ないぃ~~~!!!!」


 (ぼく)()(なに)かに邪魔(じゃま)される(こと)なく、(ぼく)(あたま)(うえ)()っかった。

 いつもなら(さわ)心地(ここち)のいい(ぬの)()れるはずだった。

 (ぼく)()自慢(じまん)帽子(ぼうし)(さわ)(こと)出来(でき)なかった。


 そう、(ぼく)自慢(じまん)帽子(ぼうし)がなくなっていたんだ……。


「ど、どど……。どうしよう!!」


 (ぼく)(あたま)(なか)()(しろ)(なに)(かんが)えられずに、その()(あたま)(かか)えてゴロンゴロン。

 (みぎ)(ひだり)(ころ)がってしまったんだ。


「おちつけって」


 お、()()いてなんていられるわけがない。

 あのサンタの帽子(ぼうし)のない(ぼく)なんて、ただのクマのヌイグルミでしかない。

 ()(まえ)のサンタ(ふく)()たクマさん(たち)にも()けてしまう~!


 (いま)(ぼく)じゃ、プレゼントされた子供(こども)もきっと残念(ざんねん)がらせてしまう!そして、きっと大事(だいじ)にもしてもらえないに()まってる!

 きっと、子供(こども)父親(ちちおや)(くさ)靴下(くつした)とかブリーフと一緒(いっしょ)洗濯機(せんたくき)()れられるんだぁぁー!!


「うわぁぁぁ~~~!!」

「な、()かないで。そうだ!一緒(いっしょ)(さが)そうよ!きっと()つかるよ!」

「はぁ……。しょうがない、(おれ)()()ってやるよ」

「うわぁぁん!あじがどう!!」

(あじ)がどうしたって?」

「あじがどうだよぉぉ!!」

「たぶん、ありがとうって()ってるんだよ」


 (ぼく)(あたま)()(しろ)で、どうしたらいいかも分からなくなっていた。

 (さが)せばいいじゃないかって、()たり(まえ)(こと)すらすぐに()てこないくらいに。

 それを(おし)えてくれた(うえ)に、一緒(いっしょ)(さが)してくれるというクマさん(たち)本当(ほんとう)感謝(かんしゃ)したんだ。


 この(とき)(ぼく)()かってはいなかったけど、きっとこれが(ぼく)にとって(はじ)めての友達(ともだち)だったんだ。


「ねぇ、ロボットくん。この()帽子探(ぼうしさが)してるんだけど(なに)()らない?」

「シラナイ。シラナイ」


 僕達(ぼくたち)(ほか)人形(にんぎょう)やロボット(たち)(はな)しを()いて(まわ)(こと)にしたんだ。


「なぁ、コイツの帽子知(ぼうしし)らないか?」

(なに)かの事件(じけん)?なら迷宮入(めいきゅうい)必至(ひっし)迷惑探偵(めいわくたんてい)メイキューン!にまかせなさーい!」

(まか)せるわけないでしょ!!」


挿絵(By みてみん)


 (なに)かのギャグアニメの人形(にんぎょう)らしいが、どんな簡単(かんたん)事件(じけん)迷宮入(めいきゅうい)りにしていく迷惑探偵(めいわくたんてい)人形化(にんぎょうか)される(ほど)人気(にんき)があるらしく、(ぼく)はちょっと(おどろ)いたのだった。


「……面白(おもしろ)そうだし、一応(いちおう)やらせてみようぜ」

次回(じかい)迷宮入(めいきゅうい)りに()うご期待(きたい)ぃー!」

「やめてぇーーー!!」


 でも、なかなか(ぼく)帽子(ぼうし)()つからない。


「ふむふむ。(あか)帽子(ぼうし)か」

「そうなんだ。こう金色(きんいろ)(いと)(ほし)マークがついてて」

「なるほど、なるほど」


挿絵(By みてみん)


「じー」

「き、(きみ)。なぜ(わたし)のパンツを()てるんだい?」

「いや、(あか)くて三角(さんかく)金色(きんいろ)(ほし)マークがついてて、いい(かん)じに(みみ)()(あな)があるなーと(おも)ってな」

「だ、ダメだぞ!(わたし)のこの(あか)いパンツはスーパーなマンの(あかし)なんだぞ!」

「なぁ、これを代用(だいよう)すればいけんじゃないか?」

「や、やめろーーー!!」


 そして、(ぼく)手渡(てわた)された(あか)三角(さんかく)(ほし)マークのついたパ……。


「こんなバッチィの(ぼく)はかぶりたくないよ!!」

君達(きみたち)は……。(いま)(わたし)()(なに)()(こと)があるんじゃないかな!?」


 (あか)いパンツは丁重(ていちょう)にお(また)()(かく)していたスーパーなマンにお(かえ)して、僕達(ぼくたち)はちゃんとごめんなさいしました。

 (ぼく)はかぶりたくなかったし、やっぱり(ひと)(もの)をとっちゃうのはいけない(こと)だしね。


 でも、どんなに()いて(まわ)っても(ぼく)帽子(ぼうし)のゆくえは結局分(けっきょくわ)からなかったんだ。


「どうしよ……。やっぱり()つからないよ……」

「だね。ほんとうにどこにいっちゃったんだろうね……」

「もう、(あきら)めた(ほう)がいいんじゃないか?」

「うわぁぁぁん!!」


 (ぼく)(あきら)めた(ほう)がいいって言葉(ことば)()いて、また()()してしまったんだ。


「そんなに()いて、一体(いったい)どうしたんだい?」


 そこに、サンタのおじさんが(かえ)って()たんだ。


「ぼぐのぉー!ぼうじぃがぁぁ!」

「じ、(じつ)はこの()のキラキラの(ほし)マークの帽子(ぼうし)()くなってしまって……」

「ほっほっほ。なら()かなくていい。また(あたら)しいのを(つく)ってあげよう」

「い、いいの……?」

「もちろんだとも。それに(わたし)はね。みんなの帽子(ぼうし)完成(かんせい)させるためにここに()たんだよ」


 帽子(ぼうし)(あたら)しく(つく)ってくれるのは素直(すなお)(うれ)しかった。

 だけど、1つだけ()からなかったんだ。


 みんなの帽子(ぼうし)完成(かんせい)ってどういう(こと)なんだろう?


「みんなの帽子(ぼうし)完成(かんせい)ってどういう(こと)なの?」

君達(きみたち)クマさんの帽子(ぼうし)(じつ)はどれも未完成(みかんせい)でな。帽子(ぼうし)(ほし)(つく)るキラキラの(いと)()くなってな。そのままだったんだよ」


「「「え?」」」


 (ぼく)(ふく)めて3(びき)のクマさんは、(おどろ)いたんだ。


 (ぼく)は、(ぼく)だけがキラキラの(ほし)のある特別(とくべつ)なクマさんだと(おも)ってたから。

 (ほか)の2(ひき)のクマさんは、あの(あか)帽子(ぼうし)未完成(みかんせい)だと(おも)ってなかったから。


「じゃあ、(ぼく)だけが特別(とくべつ)じゃないの?」

「ほっほっほ。特別(とくべつ)()はいない。みんな(おな)じだよ」

「そ、そんな~……」


 (ぼく)はガックリと(かた)(おと)とした。

 自分(じぶん)だけがみんなと(ちが)特別(とくべつ)なクマさんだと(おも)ってたからだった。

 けど、(ちが)っていた。


 そして(かた)(おと)とした(あと)自慢(じまん)してた(とき)(こと)がとても()ずかしくなったんだ。


特別(とくべつ)()はいない。(いま)のところはな」

「?」

特別(とくべつ)になるのはこれからなんだよ。みんなね」

「どういう(こと)?」

「それはね――」


 『バンッ!』という(おお)きな(おと)がこの(いえ)()(ぐち)(ほう)から()こえてきた。

 そして、『タタタタッ~』という子供(こども)(はし)るような(おと)()こえた。


「ねーねー!おじいちゃん!あたしのクマさんは!?」

「すまんな。まだ出来(でき)てないんだよ」


 どうやらその子供(こども)はサンタのおじさんの(まご)のようだった。


「ねーねー!このクマさんはなんで帽子(ぼうし)がないの?」

帽子(ぼうし)()くしたらしくてね。(いま)から用意(ようい)する(ところ)なんだよ」

「そうなの?でも、一人(ひとり)だけなんか可哀想(かわいそう)だよ?」


 可哀想(かわいそう)()われて(ぼく)()()んだ。

 (ぼく)はみんなよりも(おと)っているんだと(おも)ったからなんだ。


「そうだね。なるべくいそいであげよう」

「ねーねー。あたしの帽子(ぼうし)をこの()にあげてもいい?」

「でもいいのかい。サンタの帽子(ぼうし)じゃなくて?」

「んー?サンタの帽子(ぼうし)はおじいちゃんのだし、こうすればこのクマさんは世界(せかい)(ひと)つだけの、あたしだけのクマさんになるでしょ?」

「ほっほっほ。(たし)かにそうだ。じゃあ、(あたま)(かぶ)せてあげるといいよ。ただし、このクマさんをプレゼントするのはクリスマスになってからだけどね」

「うん、わかったー!」


 (ぼく)不思議(ふしぎ)気分(きぶん)だった。

 あれだけキラキラの(ほし)のついたサンタの帽子(ぼうし)(さが)して、そして()つからずに()いていた。

 なのに、キラキラもない(すこ)(ふる)くなったニットの帽子(ぼうし)(もら)って(うれ)しい気持(きも)ちが(こころ)(なか)から『ポンッポンッ』と()()してきたんだ。


 そして、帽子(ぼうし)をくれた子供(こども)(かえ)って()った。


「いいのか?キラキラの(ほし)マークの帽子(ぼうし)じゃなくて?」

「……うん。でも、なんか(すご)(うれ)しい()がするんだ」

「こういう(こと)なんだよ。(いま)君達(きみたち)特別(とくべつ)でも(なん)でもない、(おな)じクマさんなんだ。でもね、君達(きみたち)はこれから子供達(こどもたち)出会(であ)いみんな(ちが)った(おも)()(つく)っていくんだ。その(もら)った帽子(ぼうし)のようにね」


 なんか、なんとなく、なんとなーくなんだけど()かった。


 特別(とくべつ)なんていない。

 いないんだけど、みんな特別(とくべつ)なんだ。

 特別(とくべつ)になっていくんだ。


 一人一人違(ひとりひとりちが)出会(であ)いや(おも)()(つく)って(おな)じなんてない特別(とくべつ)()わるんだ……。


「ま、(とき)にはジュースをこぼされ(いろ)()わったり、その(いえ)(いぬ)()まれて綿(わた)()たりするかもだけどね」


 それは(いや)だなぁ……。


「それでも、その子供達(こどもたち)との(おも)()君達(きみたち)だけのもので、それが(おな)じなんてない特別(とくべつ)君達(きみたち)をしていくんだよ」

「つまり、(ぼく)はこの帽子(ぼうし)特別(とくべつ)になったの?」

「そうだよ」


 (ぼく)(うれ)しい気持(きも)ちがこころの(なか)一杯(いっぱい)になったんだ。

 ただ、(ぼく)帽子探(ぼうしさが)しを手伝(てつだ)ってくれた1(ぴき)のクマさんの(かお)はつらそうだった。


「ごめん!!!!」


 そのクマさんが突然大(とつぜんおお)きな(こえ)でそう()ったんだ。

 でも、僕達(ぼくたち)には(なに)がなんだか()からなくて、ちょっと(こま)ってしまった。


「じ、(じつ)は、お(まえ)帽子(ぼうし)をかくしたのは(おれ)なんだ……」

「なんで、そんな(こと)……」

「うらやましかったんだ。(おな)じクマでクリスマスのプレゼントなのに、なんでお(まえ)だけが特別(とくべつ)なんだよっ!ってくやしくなって……。でも、そうじゃなくてみんな(おな)じなんだって()かって、でもこんな(こと)をした(おれ)(おな)じじゃなくて、……最低(さいてい)のクマだって(おも)ってすごく後悔(こうかい)した。ごめん!!」


 そう()って、自分(じぶん)のサンタ帽子(ぼうし)(なか)から()りたたまれた(ぼく)帽子(ぼうし)()()し、(かえ)してくれた。

 (ぼく)はもう(おこ)()はなかった。

 だって、(ぼく)にはもう(ぼく)だけの帽子(ぼうし)があるし、(ぼく)特別(とくべつ)だって自慢(じまん)したのが(わる)かったんだしね。


 そして(ぼく)(あやま)ったんだ。自慢(じまん)してしまっていた(こと)を。


「その帽子(ぼうし)(きみ)にあげるよ。(ぼく)にはもうこの帽子(ぼうし)があるからね」

「ありがとう!絶対(ぜったい)大事(だいじ)にする!」

「ほっほっほ。さて、仲直(なかなお)りできて()かった。だが、これからが本番(ほんばん)なのは(わす)れてないかな?」

大丈夫(だいじょうぶ)()かってるって!」

(ぼく)()かってるよー!」

(たの)しみだねー!」

(おそ)かった!迷宮入(めいきゅうい)りし(そこ)なってる!!ジーザスだよぉ!」

「しなくていいと(おも)うぞ!」

「タノシミー。タノシミー」

「ほっほっほ」


 僕達(ぼくたち)はこれからバラバラになって、それぞれの子供達(こどもたち)出会(であ)って(いろ)んな経験(けいけん)をして、僕達(ぼくたち)特別(とくべつ)なクマさんになっていくんだ。

 僕達(ぼくたち)も、そして僕達(ぼくたち)とであった君達(きみたち)も、みんなが一人(ひとり)だけの(みち)(すす)んで()わりなんてない特別(とくべつ)(ひと)になる。


 (ぼく)はそれを(まな)んだこの()(こと)を、そして(おな)じクマさんの友達(ともだち)(こと)(わす)れない。

 これも大事(だいじ)(ぼく)特別(とくべつ)(おも)()だから。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 星帽子のクマさんがカップラーメンの容器を足場にしている絵はちょっと笑いました。 サンタさん、それちゃんとゴミ箱に捨てておいてーw 自分は特別だって何度も何度も上から言う人がいたら、誰だって…
[良い点] >どんな簡単な事件も迷宮入りにしていく迷惑探偵 なんて恐ろしい!!! [一言] コメディタッチで非常に面白くて、楽しい物語でした。挿絵も可愛らしくて笑いがこぼれました。スーパーマンは本当に…
[一言] お話も挿絵も可愛らしい! 楽しく読ませて頂きました。
2021/01/14 22:46 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ