漫才『小説家になろう』
二人「はいどーも」
ツッコミ「突然なんだけど、小説家って憧れるよね」
ボケ「あー分かる。確かにカッコいいよね。僕もいつか飼ってみたいと思ってるんだ」
ツッコミ「ん?」
ボケ「小型犬が人気なのは分かってるけど、やっぱり黒くてスラーとしたあの胴体はたまらないね」
ツッコミ「あー、それは小説家じゃなくてドーベルマンだね。僕が言ってるのは小説家だから」
ボケ「じゃあ地面を掘り返したりする機械は…」
ツッコミ「それはショベルカーだね」
ボケ「来客を通す部屋のことは…」
ツッコミ「それは応接間だね」
ボケ「声だけでやり取りする行為のことは…」
ツッコミ「それは音声通話だね。いや僕、広辞苑じゃないのよ」
ボケ「え、君って野球少年の憧れだったの?」
ツッコミ「甲子園とは言ってない。広辞苑って言った。…、話全然進まねえな」
ボケ「大変そうだね」
ツッコミ「お前のせいでね」
ボケ「でも小説家も大変なんだよ」
ツッコミ「ちゃんと聞こえてたんだね」
ボケ「だってさー、日本に小説家が何人いるか知ってる?」
ツッコミ「いやまあ知らないけども…。何人いるの?」
ボケ「え? 僕も知らないよ」
ツッコミ「じゃあ何故聞いた」
ボケ「いや何人いるんだろうって思って」
ツッコミ「嘘でしょ。もう会話が下手じゃん」
ボケ「そんなことより小説家になりたいの?」
ツッコミ「まあなれるならなりたい気持ちはあるかな」
ボケ「なれねえよ。調子乗るな。メロスに激怒されろ。この調子こきニンティウスが」
ツッコミ「急にすっごい言うじゃん。調子こきニンティウスって謎の太宰造語も出たし」
ボケ「でも憧れる気持ちがあるなら目指してみなよ。僕は応援するよ」
ツッコミ「え、二重人格なの?」
ボケ「せやかて、文才と同じくらい売れるアイデアも重要やで」
ツッコミ「どの君が本当の君なの?」
ボケ「というわけで今日は小説家を題材にした漫才をしていきたいと思います」
ツッコミ「いやずっとしてるから」
ボケ「じゃあ僕が八百屋の店主するから、君はレジの金を盗もうとする泥棒やって」
ツッコミ「小説家の設定どこいったんだ」
ボケ「はい安いよ安いよー」
ツッコミ「いやコントに入らないでくれる?」
ボケ「なんだよ。せっかく相方が八百屋の店主を演じてるのに」
ツッコミ「頼んでないのよ。めちゃくちゃ発注ミスだからそれ」
ボケ「お待たせしましたー。こちら猿の睾丸です」
ツッコミ「え、どういうこと?」
ボケ「え、東野圭吾ってこんなんでしょ」
ツッコミ「もうちゃんと偉い人に怒られろ」
ボケ「うそうそ」
ツッコミ「いや何が」
ボケ「デーモン小暮閣下の年齢」
ツッコミ「それはみんな分かってんだよ」
ボケ「だよな。流石にサバ読んでるよな」
ツッコミ「サバ読んでるとかいう次元じゃないけどね。いやもう話脱線し過ぎてるから」
ボケ「まあ“ショウセツカ”だけにね。話も“脱線”するよ」
ツッコミ「ん? …………、…え、これ……かかってる?」
ボケ「かかってない」
ツッコミ「何がしてえんだよ」
ボケ「何もしたくない」
ツッコミ「もうおうちに帰れよ」
ボケ「いや僕、織田信長じゃないから」
ツッコミ「本能寺じゃねえよ。もうおうちと言ったから。明智光秀になって、てめえを燃やしてやろうか」
ボケ「やったぜ」
ツッコミ「嬉しいのかよ」
ボケ「いや、昔から熱い男になりたくてさ。熱い男って憧れるよね」
ツッコミ「あー分かる。確かに良いよね。Fateとか空の境界とかめっちゃ読んだもん」
ボケ「いや奈須きのこじゃなくて熱い男だから。小説家の話してないじゃんか」
ツッコミ「してたんですけど。これ小説家になりたいって題材の漫才なんですけど。まあせっかく無理やり小説家に話題戻したんだから、最後ぐらいちゃんとやろう」
ボケ「あー、でももう残ってないよ」
ツッコミ「え、なにがよ?」
ボケ「漫才の」
ツッコミ「小節が?」
ボケ「ちょっとぉ! なんで先に言ってんの? オチだぞ今の!」
ツッコミ「君がオチ言ったら漫才が終わるじゃん」
ボケ「終わらすために言うんだよ」
ツッコミ「実は隠してたんだけど、今日ずっと君のオチの台詞を先言ってやろうと思ってたんだよね」
ボケ「目的を言ってくんない? 曲がりなりにもツッコミでしょ君は」
ツッコミ「でも君のおかげで最後、小説家になれたよ」
ボケ「え、どういうこと?」
ツッコミ「だって、小説家は“カクシゴト”だからね」
ボケ「……え、今オチ言った?」
ツッコミ「うん」
二人「どうもありがとうございましたー」