ゲーム監督から勇者へ
「疲れた」
それが俺の一言で、今日を締めくくれる最高の一言だ。
決して、うちの会社がブラックと言う訳ではない。
今回も、午前七時に出勤し、午後七時に帰れたのだ。
だが、今日は自分が監督を務めるゲーム《アウト・ワールド》納品最終日だったのだ。
初めてのゲーム監督は新鮮で面白かったが、それは最初の頃。
一言で言えば、そう、「疲れた」
やる事が多すぎる。一つの問題が終わったと思ったら、流れる様に新たな問題が俺を襲う。
そう言う理由で、俺は今にでも寝てしまいそうな程、疲労が溜まっているのだ。
だが、今日はいつもとは違う。大事な使命があるのだ。
明日の午前〇時から、俺が一から最期まで、作ったゲーム。
《アウト・ワールド》
が、発売される。
誰しも、自身が作成したゲームは手にしときたい。
そして、友人とどちらが早く全クリ出来るか、と言う、子供かよ、と思うが、
俺だけで作り上げたゲームではない、イラスト担当、シナリオ担当、プログラム担当、そして、副監督の友人。
だから、買うしかない。監督の意地を賭けて、そして、友人と感想を言い合う為、誰よりも早くクリアしなくてはいけない。
そう思い、俺は発売されたばかりのゲーム《アウト・ワールド》を手に持ち、いつもの帰り道で家へ帰るはずだった。
ゲームショップの扉をまたいだ瞬間、そこは、腐る程見る、都会風景ではない。
俺が寝ずに作り上げたゲーム《アウト・ワールド》世界観と同じだった。
そして、その光景は、俺が精魂込めてこだわった、勇者召喚のシーンと同じだった。
「おお、勇者よ」
聞きなれたセリフだ、シナリオ担当の井口かいたのだから。
最初の頃はぎこちなかったが、中盤からは井口と飲みに行く仲になったもんな。
それに、そのセリフを口にする王。
その王は、イラスト担当の倉本が…。
「は?」
だが、何かがおかしい。俺は自分で作った《アウト・ワールド》に感動して、理解していなかった。
「なんで…俺が《アウト・ワールド》の世界にいる?」
それは、困惑じみた声で誰かに助けを求めた、一言だった。
だが、誰も、助けてはくれない。
それどころか、王は…
「勇者よ、どうか。私の国を悪魔どもから救ってくれ」
そう、井口が書いた、セリフで俺に言ってきたのだった。




