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2章33話『再攻略』

 俺はエスクードさんに連れられて大急ぎで《アスタ・ラ・ビスタ》の本部に向かった。

 俺達がギルドマスター室に入った頃には、中には既に数名のギルドメンバーがいた。全員、天災級クエストを数多くこなしている猛者たちだった。そんな中で超級の資格しかない俺達が浮いている感じだった。


 まもなくラピセロさんがギルドマスター室に入ってきて点呼をとる。そして奥にいるアオイさんに寄り、「全員集合しました」と報告した。

 アオイさんは頷くと、俺たちの方を向いた。


「皆さん、よくお集まりくださいました。心より、感謝申し上げます」


 アオイさんは一礼する。


「さて、今回皆さんをお呼びしたのは他でもありません。『アンティゴ研究会』が先程行った電波ジャック。そこで放送された映像をご覧になられましたでしょうか。あの映像の通り以前から報告が耐えない彼らの最終作戦がいよいよ実行に移されるようです」


 俺は手を握る。冷たい汗がじわりと滲み出た。


「彼らの目的は世界の回帰…………文明を全て破壊し、かつての地球を取り戻すことです」


 それだけは絶対に避けなくてはならない。

 俺が脳内で思うのとほぼ同時にアオイさんが似たようなことを言った。


「先程の放送の直後から、『アンティゴ研究会』は活動を開始しています」


 街の人や飼育、養殖されているモンスターなどに片っ端から『EVOカプセル』を投与し、暴走させているとの事だ。

『EVOカプセル』をモンスターに投与するとそのモンスターは明確な意思や知識を獲得する。

 そうして人間やモンスターを洗脳、あるいは脅迫することで操作。自分達の奴隷にしているという訳だ。


「《アスタ・ラ・ビスタ》、《ブエノスディアス》、《ビエンベニードス》の各ギルドマスター間で行われたレムリア大陸緊急会議の末、各ギルド数名を選出し、そのメンバーは『アンティゴ研究会』の本拠地に乗り込み、残りのメンバーは『EVOカプセル』の使用者の対応を行うという結果に至りました」


 他の大陸でも、その大陸に本拠地を置くギルドが対応に追われているそうだ。

 そして各ギルドの調査班が『アンティゴ研究会』の本拠地の特定を急いでいるらしい。


「ここに選ばれたメンバーは、《アスタ・ラ・ビスタ》の中でも大きな力を持つメンバーです。私はあなた達の力を見込み、『アンティゴ研究会』の壊滅を依頼することにしました」


 もちろん、断ることも可能です。とアオイさんは続ける。確かに、『EVOカプセル』を製造しているような団体だ。俺達のような小市民を葬る兵器を開発することなど造作もないだろう。

 危険だと感じない方がおかしい。


 だが、俺はこの依頼を受けることにした。


 この戦いに勝利すれば『アンティゴ研究会』は消滅する。悲しみと憎悪の根源『EVOカプセル』を壊滅させられる。

 断る理由が思いつかなかった。


 そしてそれは、俺以外の皆もそうだった。

 ゼロ、ティリタ、タルデ、エスクードさん、ラピセロさん、他のギルドメンバー…………。

 誰1人、事態を名乗り出る者はいなかった。


「あなた達の覚悟と勇気は、きっとこの世界に刻まれるでしょう」


 アオイさんはそう言って笑った。


 その後は作戦の概要についての説明だった。

 まず他の2つのギルドの精鋭部隊と合流し、俺達を4つの部隊に分けるそうだ。


 まず1つ目の部隊が突入隊。猪突猛進にとにかく奥を目指し、内部の情報をかき集める部隊。

 ここにはエスクードさんが任命されている。


 2つ目は調査隊。突入隊が調べられなかった分かれ道等を調査し、見落としや隠し通路がないかを調べる。

 ラピセロさんがここに入っている。


 3つ目は特攻隊。先の2部隊が見つけた道の先に進み、中の『アンティゴ研究会』を殲滅する部隊。他の部隊より多くのメンバーが配置されている。


 4つ目は周辺警戒隊。突入後、後から入ってきた『アンティゴ研究会』のメンバーに背後をとられる可能性を考え、本拠地周辺を護衛する部隊。俺達はここに属している。


 いくらダンジョンを連続で攻略してるとはいえ、やはり重要な役割は回ってこないか。

 俺達は俺達のやるべき事を果たそう。


「私はギルドマスター間でまた会議があるので、あなた達に手を貸すことは出来ません…………ですが、これだけは言わせてください」


 アオイさんは胸に拳を当てて言った。


「『アンティゴ研究会』は強力な相手です。我々が知らない『EVOカプセル』を使用してくるかも知れません…………。もし危険だと察したら、すぐに退避してください。勇気を持って戦うことと、無駄な犠牲を出すことは違います」


 アオイさんは強く強く、そう言った。

 俺達全員はそれに頷いた。彼女のメンバーを思う気持ちをしっかりと受け止めたという意思表示だ。


 その数秒後、ギルドマスター室の扉が開いた。

 汗だくになり息を切らしているメンバーは、扉の前でこう叫んだ。


「『アンティゴ研究会』の本拠地が発覚しました!」














 1時間後、俺達は『アンティゴ研究会』から数百メートル離れた場所に集合していた。

 《アスタ・ラ・ビスタ》、《ブエノスディアス》、《ビエンベニードス》の3ギルドが集結した。人数は何倍にも膨れ上がり、作戦に希望が見出せた。


 そして、『アンティゴ研究会』の本拠地として炙り出された場所は《テララナの城》跡地。

 そもそも《テララナの城》自体、地下で『EVOカプセル』を開発中に、実験台の、『EVOカプセル』を投与されたアラーナが上のギルド跡地に脱走。

 そのまま巣を張り、ダンジョンとして成り立ってしまったようだ。


 確かにあの日は夜に攻略したから、地下への階段があっても見つけられなかっただろう。懐中電灯の明かりに頼ることしか出来ないのだから。


 周辺警戒隊に任命された俺達は他のギルドの同じ役職のメンバーと自己紹介を交わし、各々が担当する場所を決定した。

 他のギルドのメンバー達もパーティ制。周辺警戒隊に任命されたパーティは全部で8つなので本拠地の8方位に1パーティずつ配置するのが無難だろう。


 俺達はまず最初に本拠地に近づいた。

 最初は周辺警戒隊が本拠地の周りの研究会メンバー達を全滅させ、その隙に突入隊が突入。その後は順番に攻め入る感じだ。


 本拠地の周りには案の定、研究会メンバーが多くいた。彼らは全員アサルトライフルを装備している。

 ただの研究員に戦闘力はないだろうし、銃の固定ダメージに頼ったのだろう。


 俺は右手に手袋をはめ、3人と目を合わせる。

 物陰に隠れていた俺は一気に飛び出し、研究会メンバーの注意を引いた。


 ドドドドドドドッ!


 機関銃の音が辺りに響き渡る。俺はバーニングで銃弾の勢いを殺しながら接近した。


「バーニング!」


 俺は満を持してバーニングを放つ。研究会メンバーは炎に飲み込まれ、灰と化す。

 さらにその爆煙に紛れ、タルデが特攻した。


「ほらよっ!」


 サイドにいた研究会メンバーを縦一直線に斬りつける。真っ二つになった研究会メンバーは大量の血を吹き出して死亡した。

 さらに勢いを殺すことなく、煙を横に斬った。

 タルデはどうやら煙の中から彼を仕留めようとしていた研究会メンバーの気配に気づいたらしい。


 ティリタは1歩離れた場所から戦況を確認し、的確な強化魔法や回復魔法を俺達にかける。俺達に司令を出したり、アドバイスをするのも彼だ。


 そしてゼロは俺の肩を踏み台にして高く飛び上がる。さっきの俺の魔法の音に気づいて集まってきた研究会メンバーだが、空を舞うゼロを正確に銃で撃ち抜く事は出来ず、弾丸だけが消費された。

 ゼロは催涙スプレーを研究会メンバーの目に吹きかけ、そのまま銃を持って回転して殺す。さらに両サイドから接近してきた研究会メンバーを、まずは右側からアサルトライフルで撃ち殺し、反対側は拳銃2発で怯ませた後、これまたアサルトライフルでヘッドショットした。


 こうして本拠地周辺の研究会メンバーは全滅した。


 これから、作戦が始まる。

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