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2章24話『アトランティスへ』

「よし、これで君は今日から《アスタ・ラ・ビスタ》の一員だ」


ラピセロさんがタルデの加入手続きを済ませてくれた。タルデは深呼吸をし、返された電子職業手帳を受け取る。


「君のことは知っているよ。数々の超級クエストをこなしているにも関わらずギルドに加入していない冒険者がいると噂になっていたからね」


そうだったのか。

確かに、以前の緊急クエストや《クン=ヤン》攻略の時、俺達をすごくよくサポートしてくれた。

それどころか、近接攻撃使いとして重要な戦力になった。


「へへっ。武器の修理費を稼ぐのに必要でしたからね」


そういえばタルデの剣は貰い物だっだっけ。修理費の為に超級クエストに赴くとは…………よっぽどその剣が大切なんだな。

一体誰から貰ったんだろう?


「グレン君達と同じ寮を用意してある。今日からはそこで寝泊まりするといい。エスクードにもそう伝えてある」


あの寮、結構人入れるんだよな。

今でさえ40人近くいる。


「《クン=ヤン》の攻略もご苦労だった。後日報酬金は手帳に振り込まれるから、しばらくゆっくり休むといい」


ダンジョン攻略依頼の報酬金は莫大だ。超級クエスト5〜6回分はある。

何日かはクエストに出なくても大丈夫そうだ。


と、ここでラピセロさんの手帳が振動した。

どうやら電話がかかってきたようで、ラピセロさんは席を外した。


数分後、ラピセロさんは慌てた様子で帰ってきた。


「すまない、君達にはもうひと仕事受けてもらうことになった」


ラピセロさんが俺達を応接室に案内する。

対面に座ったラピセロさんは手を組んで口元を隠す。


「君達は《ビエンベニードス》というギルドを知っているね?」


俺達は頷く。

《ビエンベニードス》は武器や防具を専門にしている商業系ギルド。ゼロの銃弾はここで買うことが多い。

値段も品質も悪くないし、武器の幅も広いから多くの冒険者が利用しているギルドだ。


「その《ビエンベニードス》のギルドマスターが、君達に依頼を下さったんだ。ムー大陸での君達の活躍を受けて、との事だ」


ダンジョンの攻略情報は割と早く出回る。

ボスを倒した俺達の名前がどこかで公開されていてもおかしくない。


「今、ギルドマスター室にいらっしゃるそうだから向かってくれ。疲れているところ大変だとは思うが、くれぐれも失礼のないようにな」


その後俺達は応接室を出てギルドマスター室に向かった。

扉を2回ノックし、中に入ると、そこにはアオイさんともう1人、背の低い女性がいた。

ドストレートに言うなら幼女。ピンク色のミディアムヘアーに小さな王冠を乗せ、服は高級感溢れる紅いドレスを来ている。


「失礼します」


俺達が一礼すると、


「あ、皆さんお待ちしておりました。こちら、《ビエンベニードス》のギルドマスター・ディエスミルさんです」


「ごきげんよう。会えて嬉しいぞよ」


俺達は各々挨拶したりお辞儀したりして対応した。


「では、私はこれで失礼します」


そう言ってアオイさんは退出した。

俺達はディエスミルさんに促されて椅子に腰掛け、膝に手を置いた。


「そう緊張するでない。頼みをするのは、わらわの方なのじゃからな」


ディエスミルさんは足を椅子の上に上げ、膝に肘を置いて頬杖をつく。

武器を品定めするような目で俺達を見た後、彼女はふふっと笑った。


「お主らは、《テララナの城》に続き、《クン=ヤン》までも攻略して見せたらしいな」


「えぇ。楽な戦いではありませんでしたがね」


俺は苦笑いした。


「そこで、お主らの腕をわらわに貸してもらいたいのじゃ」


ディエスミルさんは端の方に寄せてあった資料を机の中心に持ってきて、それを俺達に見せた。どうやら、地図のようだった。


「これはアトランティス大陸の地図じゃ」


アトランティス大陸か。レムリア大陸やムー大陸と比べると発展していないと聞くが、実際に行ったことは無い。


「このアトランティス大陸の内陸部に、多くの滅びた都市があるのじゃ」


アトランティス大陸には強力なモンスターが多いことや、物資の輸送が困難だったことから内陸部の街は全て滅びてしまったらしい。

そのうちの1つをディエスミルさんは指さした。


「特にここにある都市は、このインスマス程に発展していた巨大な都市だったらしいぞよ」


知らなかった。アトランティス大陸にもそんな大きな街があったとは。


「その跡地の少し手前に、大きな砂漠があるのじゃが…………ここの調査をお主らに頼みたい」


「砂漠の調査を、ですか?」


ディエスミルさんは「うむ」と頷いた。

それにしても意外だ。《ビエンベニードス》のギルドマスターが直々に俺達を訪ねに来たと言うから、新しいダンジョンの攻略を任されるのかと思っていた。


「でも、なぜわざわざ俺達に?」


《ビエンベニードス》にも、調査隊はいるはずだ。わざわざ《アスタ・ラ・ビスタ》の、それも下っ端の俺達に依頼する意味とは何だ?


「その件なんじゃが……この砂漠、少々訳ありでな」


「訳あり?」


「この場所は地図からも分かる通り、完全に砂漠。何も無い場所なんじゃ。だが、この場所を訪れた調査隊がここで街を見たと言って止まないのじゃよ」


「幻の街…………ってわけですか」


ディエスミルさんは頷いた。


「もちろん、本当に幻の街だとは思っておらぬ。そこには何か原因があるはずなんじゃ。だから、その調査をお主らに任せたい。2つのダンジョンを攻略し、《エンセスター》を打ち破ったお主らなら、わらわ達には気づけない真相にたどり着けるかも知れないと思ってな」


なるほど。やはりダンジョンの攻略は実績として残るんだな。

ボスモンスターを2匹も打ち倒していればそりゃそうか。


「そういえばさっきから気になっていたのじゃが、お主は誰じゃ?」


ディエスミルさんはタルデを指さして言った。


「俺はタルデです。今日アスタ・ラ・ビスタに入った剣士です」


「彼はゴブリン大量発生の緊急クエストや《クン=ヤン》攻略の時に俺達をサポートしてくれた、信頼出来る仲間です」


「なるほど。足でまといにならないなら人数は多ければ多い方がいい。わらわは異存ない」


ディエスミルさんは、頬杖をつき直した。


「では、今回はお主ら4人への依頼じゃ。移動費は《ビエンベニードス》が負担するし、報酬金も期待しておれ」


「よろしくお願いします」


俺は一礼する。


「そういえば、アオイさんには依頼していらっしゃらないんですか?」


いくら俺達がダンジョンを複数個攻略したとはいえ、二グラス歴の長いアオイさんの方が適任だと思うけど。


「アオイは、《ブエノスディアス》と仕事があると抜かしていたぞよ」


先程まで、ディエスミルさんもその話をされていたらしい。ギルドマスター間で何か重要な事が進んでいるのだろう。


「まぁ、お主らはまだ気にしなくてもよい。今は砂漠の調査を頼むぞよ」


ディエスミルさんはそこまで言うと退出し、《アスタ・ラ・ビスタ》を後にした。


『まだ』気にしなくてもよい…………?

どういうことだ?いずれ気にしなきゃいけない時が来るってことか?













それから3日後。

俺達は《ビエンベニードス》の手配した船に乗ってアトランティス大陸に上陸した。

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