表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神へと至るまで  作者: 荒崎 秀平
7/8

第七話

非常に遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。本業の忙しさが激しいものですから、相変わらずの投稿ペースですが、今年もよろしくお願いいたします。


 俺は意を決して草むらから飛び出し、思いっきり腹の底から吠えた。効果は絶大なようで、今にも女の子に斬りかかろうとしていた男の手が止まった。そのおかげで、女の子と剣を持つ男の間に巨体を入り込ませんばかりに突進する。男はその俺の姿を見て、驚愕の表情を浮かべながら後ろに跳び跳ねて距離をとった。



「な、なんでこんなとこにドラゴンがいんだよ!?」


「聞いてねぇぞ!?この森からはほとんどの魔物が消えたって聞いたのによ!」


「……ということは、今まで隠れていたのか。それとも突然出現したのか……?」



 男達は俺の姿を見て、三者三様の反応をしめした。が、共通して、俺のことを最大級に警戒していることは丸わかりだった。


 一方の俺の方は、勢いよく出てきて一時的に女の子の危機を救えたのは良いのだが、間違いなく自分が今命のピンチである。戦闘経験は皆無で、自分にどんな能力があるのかまったくわからない。そんな状態でどう戦えと?という話なのだ。



(もう俺の中の選択肢は2つしかない!一つはこの()をつれて逃げる!もう一つは、思いっきりビビらせてこいつらを追い払う!それしかない!)



 幸い、彼らはジリジリと後ろに下がっている。逃げるなら間違いなく絶好のタイミングだった。



(……よし、今だっ!!)



 俺はそう思い、後ろを振り返って女の子を掴んで逃げよう……としたのだが……。



「ヒ、ヒィィィ、来ないでっ!!」



 女の子は、俺に対して想像以上にビビっていた。気付いたら男達よりも距離が離れていた。



(え、えぇぇぇー……)



 これには流石の俺もガックシである。少しこちらがジリッと距離をつめようとすれば、女の子はビクッと震えてさらにさらに後ろに下がってしまった。たぶん俺よりも早そうだし、なんなら無理に追いかけたら追いかけたでそれはそれで可哀想な思いをさせてしまうのやもしれない……ということを一瞬のうちにまとめた俺は、逃げる選択肢がこの場にないことを悟った。



(……というわけで、プランbってわけですか…)



 プランb・・・即ち、相手をビビらせて追い払うということ。


 まぁ今の時点で、男達はかなりビビっている。だが、あともう一押し足りない。俺がなにか力を示して、相手の戦意を完全に喪失させなければ、追い払うのは難しいだろう。果たして、漫画やアニメの世界のテンプレのように、うまくいくだろうか?



(……とりあえず第一手段としてやってみたいことは……)



 俺は覚悟を決めて男達の方に振りかえり、四つん這いの状態から、男達に向けて強烈に吠えた。



「(くらえっ!!ドラゴンブレス~的なやつ!)グロォォォォォォォォアァァァァッッッ!!」



 するとどうだろう。吠えるために大きく開いた俺の口からは、光輝く光線(みたいなやつだと勝手に思ってる)が………出なかった。



(……って、出ないんかぁぁいぃ!!) 



 幸いにも男達は俺の咆哮に怯み、ある程度の動揺を見せたが、俺の望みである逃げ出すという行為には至らなかった。三人とも武器を身構えたまま、逃げようとせずに俺から目を離そうとしない。もう完ッ全に警戒されている。



(……う、うーむ。かなり恥ずい思いをしたうえに、更にめんどくさいことになるなんて……)



 こうなりゃ、もう戦う他に手はない。果たして戦えるのか?多少は見かけがあれだけど、今ので俺自身への信頼は大分薄くなったぞ。



「……な、なんだこのドラゴン。吠えるだけでまったく攻撃してこないぞ……」


「それどころか、地味に後ろに下がっているような気もするような……」


「……恐らく、こいつには攻撃する力がないのかもしれない……」


(すんませんほとんどあってるんですけど、なんでわかったんですかぁ??)


 

 もう最悪だ、相手は段々と冷静さを取り戻してきているみたいで、こっちのことをよく観察できている。攻撃されるのも時間の問題だというのに、俺にはなんの対策も浮かんでこない。今更だが、あの時衝動的に叫びに反応した自分をとっても恨みたい気持ちでいっぱいである。


 だがこうなると四の五の言ってられない。俺は頭の中で瞬時にプランcを練り上げた。俺は前足をしっかりと地面に踏み込み、そして……、



「グッ、グラァァァァァァッッッ!!(お、おりゃあぁぁぁぁぁっっっ!!)」



 俺はもう一度、男達に向かって大きく吠えた。だが二回目だからだろうか、さっきよりも動揺しなくなっており、俺から目を離すことはない。しかし……、



「……!?うえっ!?なんだこれ!?」


「……ゲッホゲッホッ……め、目が開かねぇ……」


「……しまった……」



 俺はついでに前足を使って地面の土や砂を大量に男達にかけた。男達は俺の叫びの方に集中していたのか、ドラゴンの風上にも置けない卑怯な不意打ちを諸にクリーンヒットした。そのお陰で男達は動揺し、少し俺への警戒が緩んだ。



(よしっ、今だ!!)



 俺はその隙を見逃さない。俺は男達を攻撃……せずに反転し、女の子の方角へ猛ダッシュした。



「……えっ、ちょっ!?まっ………」



 そして女の子をなるべく握り潰さないように片足で掴むと、一目散に四足歩行で全力疾走ならぬ全力逃走をしていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ