第二話
今回かなり短いです………(;_;)
「人じゃなきゃ駄目なのか?」
唐突に俺から発せられた言葉に部屋の中に静寂が訪れる。燃える暖炉のパチパチという音と、外?らしきところで吹いている風が窓を打ち付ける音が、何度も何度もこの空間にこだましていた。
「……お前それ本当で言ってんのか?」
しばらく経って動揺が治まったのか、ようやく青年が話し始めた。
「…………」
俺は無言で青年を見ることで、肯定をアピールする。
青年はそれを見ると盛大に溜め息をつき、突然何もない空間からスマホを取り出した。
驚いている俺に構わず、青年は誰かに電話をかける。
「………あー、もしもし、俺だ。………お前今日非番だろ?…………じゃあちょっと頼みたいんだけどー、順番待ちの死者の面接頼んでいいか?……え?いやあのな、ちょっと訳あり物件があってな……うん……うん……悪ぃな、今度なんか奢るから……そうか?…………すまんありがとな……うん、じゃあな……。よし、これで心置き無く話せるぞ」
……いや、『よし、これで』じゃねぇよ。どうやら、仕事を他の人に頼んでくれたみたいだけど、これはこれで罪悪感があるぞ。
「………あぁ?今更"罪悪感"とか言ってんじゃねぇぞ。てめぇが"自殺"した時点で色んな人に迷惑かけてるッつうの。」
………心を読んだうえにしかも傷口を抉ってきやがった……。
「まぁそんなわけだ。なんで"人間以外"がいいのか、説明してみな」
……いや説明してみなって言われてもな……。
「え?単純に人間が嫌だから」
「いやそれはわかるんだけど、具体的に何に成りたいんだ?」
「……別に?人間以外だったらなんでも……」
「えっ?」
「いや、だから別にこれといってこだわりはない」
「じゃあ何でだよ?」
「……単に人間を見ると吐き気しかしないから……」
あれから、人間を見ると、胃が締め付けられるように痛い。それで学校へも行けなくなったし。
だからできれば、人間以外がいいなぁって思ったりしたんだよなぁ。
「……なんだよ、至極まともな理由じゃん。てっきり違う理由かと思ってた」
「違う理由って?」
「"モフモフマニア"か"ケモナー"か、"ミジンコなりたがり人間"?」
「いやちょっと待て!?最初の二つはともかくで最後のはなんだよ!?」
「いや、そういう人間もいないとは限らないからさ。なんか、ミジンコの素晴らしさに惚れちまった人間もいないとは限らないし」
「いや俺は違うからな!!ミジンコには絶対するなよ!?」
そんな笑えない冗談を交わしつつ……、
「じゃあ結局、"人間が嫌だから"っていう理由だけなんだな?」
「……あぁ、そうだ」
俺は真面目な顔で返答する。
「……なんで嫌なのかねぇ」
「嫌だからだ」
「いやそれはわかってんだよ!!……でもそこまで毛嫌いしなくてもなぁって思ったり思わなかったり……」
青年に言われても、俺は考えを改める気は一切ない。
俺はもう人間を好きになれない……、心からそう思っているからだ。
「……お前そう言うけど、人間皆ひどいヤツばかりじゃねぇぞ?たまにはいいヤツもいたりするんだよ。お前が出会わなかっただけでな……」
「……………」
「……だんまりかよ……。……ハァ、わかったよ……。どうしても人間が嫌なんだな?」
「………(コクン)」
「……いいだろうよ。てめぇがそんなに拒否するなら俺はてめぇの要望に応えるまでだ。ただせめて、てめぇがもう一度、人間に生まれ変わりたいと願えるようになってることを祈るぜ」
青年はそう言うと、指をならした。
その瞬間、青年の手元にあった書類が消え、俺達の間にあったガラス机が消え、暖炉の火が消え、明かりが消え、そして青年が消え……、
最後に俺の意識が消えた………。
次回もよろしくお願いします。