表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/168

4月ーーシン。新しい日常(後編2)

シン視点

エドさんと別れて酒場を後にした俺は、続いて依頼完了の報告の為にフィリアさんの元へと向かった。


「フィリアさん、ただいま戻りました」


「…………あら。おかえりなさい、シンさん」


「依頼完了の報告をしたいんですけど、大丈夫ですか?」


「はい! 大丈夫ですよ!」


まだ書類作業の途中だろうに、(こころよ)く頷いてくれる、フィリアさん。

そんなフィリアさんに、俺は今日受けた2件の依頼の詳細を説明していく。


「-ーと。報告は以上ですかね」


「…………はい。報告に不備はありませんね。本日は、依頼を受けていただき、ありがとうございました。こちらが、報酬になります」


本来なら依頼完了の手続きの際には、討伐対象の部位などが必要になるのだが、ギルドから一定以上の信頼を得ている冒険者なら、部位の提出が免除される。

当然、俺も免除の対象だ。報告に不備も無いようで、今回受けた2件の依頼の報酬として、フィリアさんから銀貨9枚を受け取る、俺。


「ありがとうございます、フィリアさん。それでは、俺はこれで失礼しますね」


報告も済んだし、後は商店街で買い物をして、さっさと帰るとしよう。

そう考えた俺は、フィリアさんへの別れの挨拶もそこそこに、(きびす)を返してギルドの出口へ向かおうとしたのだが-ー


「-ーあっ! ちょっと待ってください、シンさん!」


俺が1歩を踏み出す前に、フィリアさんから呼び止められてしまった。


(? 何か忘れてる事でもあったかな?)


疑問に感じつつも、再度振り返る、俺。

そんな俺を出迎えたのは-ーフィリアさんの、どこか拗ねたような視線だった。

…………何だろう? フィリアさんが、視線で俺を責めているのは分かる。分かるのだが…………理由の方はさっぱり分からず、俺は困惑してしまう。


「え、えーと…………フィ、フィリアさん?」


「シンさん。アイリスちゃんの為に、急いで帰りたいのは分かります。ですが、そんなにあからさまでなくても、いいではないですか。私とも、少しお喋りしましょうよ」


「……………………はい?」


フィリアさんが口にした予想外の言葉に、思わず間の抜けた声を上げてしまう、俺。

だが、それも仕方ないだろう? フィリアさんとは、もう6年以上の付き合いになるが、俺達の関係は冒険者とギルドマスター。それ以上でも、それ以下でも無いはずだ。


(……………………いや。最近は、そんな事も無かったか…………?)


たしかに、以前までならそうだったが…………俺がアイリスを引き取ってからは、フィリアさんとの関係が少し変わってきた気がする。

アイリスとフィリアさんが、まるで実の姉妹のように仲が良いからな。その分、アイリスの父親である俺も、フィリアさんと世間話をする機会が増えたのだ。


(…………まあ、それでも、こうして改めて「お喋りしましょう」なんて切り出す事は、俺からもフィリアさんからも無かったよな…………)


そんな風に、困惑のあまり言葉に詰まってしまう俺に構わず、フィリアさんは目だけが笑っていない、器用な笑顔で続ける-ー


「それとも、あれですか? エドさんとはお喋りしていたのに、私とは出来ないのですか?」


「何ですか、その面倒臭い女の人みたいなセリフは!? いったい誰に嫉妬してるんですか、フィリアさん!?」


「ふふふっ。冗談ですよ、冗談」


「…………いや。もちろん、冗談だと分かっていますが…………」


それでも、フィリアさんの口から飛び出したまさかのセリフに、ツッコまざるを得なかったのだ。


(…………っていうか、フィリアさん今、「エドさんとはお喋りしていたのに」って言ったような…………)


もしかして-ー


「あの、フィリアさん…………? もしかして、俺がエドさんと話していたのを、見ていたんですか?」


「はい。それ以前に、シンさんがギルドに入って来た所から気付いて、見ておりましたよ」


「…………なるほど。そういう事ですか…………」


それなら、先程のフィリアさんの言い分も理解できる。

エドさんとはお喋りしたのに、フィリアさんとはお喋りしないとなれば、意地悪なセリフの1つや2つ、言いたくなるだろう。


(…………まあ、そういう事なら仕方ない。フィリアさんとも少しお喋りしていくか)


悪酔いしたエドさんとは違い、俺の事情を理解してくれているフィリアさんなら、すぐに解放してくれるだろう。

そう判断した俺は、フィリアさんに了承の返事を返す。


「…………分かりました。少しで良ければ、お付き合いしますよ」


「-ーえっ!? 本当ですか!?」


「? ええ。…………あっ。ただ、ちょっとだけ待ってもらえますか」


誘ってきた張本人であるはずのフィリアさんが、どうしてそんなに驚いた表情をしてるのか?

不思議に思いつつも、俺は再度頷くが…………とはいえ、このまま立ち話を続けるのも何だな。

俺は、フィリアさんに1度断りを入れると、近くに置かれていた椅子を引き寄せ、彼女の正面-ーカウンターの向かい側に腰掛ける。

と、そのタイミングを見計らい、フィリアさんはしみじみと感慨深げに言葉を紡ぎ始めた。


「…………いやはや。それにしても、本当に変わられましたねぇ、シンさん。今朝もそうでしたし…………今も、以前のあなたなら、このようなお誘いは断って、真っ直ぐ家に帰ってたでしょうに」


なるほど。だからフィリアさんはさっき、あんなに驚いた表情を浮かべていたのか。

それにしても-ー


「…………以前、エドさんとヴィヴィさんも似たような事を言ってましたが…………俺って、そんなに頑固者なイメージなんですか?」


「ええ。そうですね」


おそるおそる尋ねる俺に、即答で返すフィリアさん。


(…………むぅ。本当は、すぐに否定したい所なんだけど…………いろいろと身に覚えがありすぎて、否定出来ない…………)


とはいえ、この話題をこのまま続けても、俺の肩身が狭くなるだけだろう。

バツの悪さを感じた俺は、話題転換のついでに、先程フィリアさんの話しにも出た『今朝』感じた疑問について、尋ねてみる事にした。


「そ、そういえば! フィリアさん、『今朝』で思い出したんですが…………!」


「…………ふふっ。はい。何でしょうか?」


俺のあからさまな話題転換に対しても、何も指摘する事なく、微笑み1つで合わせてくれる、大人なフィリアさん。

俺は、恥ずかしさやら、いたたまれなさを感じつつも、話を続ける。


「今朝の依頼受理の手続きの時に、何だかフィリアさん、凄く嬉しそうにしていましたよね。俺はてっきり、売れ残っていた依頼を全て受けなかった事に、小言を言われてしまうかと思っていたんですが…………」


「…………そうですね。たしかに、シンさんの言う通りです。冒険者ギルド『コノノユスラ』支部のギルドマスター、フィリア・エルルゥとしては、依頼が残ってしまうのは、正直に言えば困り事で-ー頭痛のタネですね」


「うっ…………! す、すいません…………」


フィリアさんから、非難するような目で居すくまれてしまい、俺は反射的に頭を下げる。


「ですが-ー」


「? ですが?」


どうやら、フィリアさんの話しには、まだ続きがあるようだ。

それを察した俺が顔を上げると-ーフィリアさんは、先程までの非難するような視線から一転(いってん)、優し気な微笑みで俺を見詰めていた。


「ですが-ーシン・シルヴァーさんの1人の友人、フィリア・エルルゥとしては、シンさんの『人間味が薄い』1面に良い変化が見られているようで、とても好ましく思っておりますよ」


「…………ゆ、友人…………です、か…………」


フィリアさんの口から飛び出した予想外の言葉に、俺は呆気にとられて絶句してしまう。


(……………………そうか。俺はフィリアさんとの関係を、冒険者とギルドマスターとしか思っていなかったけど…………フィリアさんは、俺を友人だと思ってくれていたのか…………)


意外に思うものの…………だが、思い当たるフシがあるのも事実だ。


(たしかに、フィリアさんは以前から、他の冒険者と比べて、俺には良くしてくれていると思っていたけど…………)


その理由を、俺がSランクの冒険者だからと思っていたが…………よくよく思い返してみると、俺がこの街に来たばかりの駆け出しの頃から、フィリアさんは俺に親身に接してくれていたように思う。

この街に来たばかりの俺は、強さを追い求める事に手一杯で。フィリアさんが親身に接してくれている事に、気付きもしなかった。

あいつとコンビを組んでからは、心に少し余裕も出来て。時々、『フィリアさん、俺にだけ特別良くしてくれるな』とは感じていたけれど、自意識過剰だと思い、すぐにバカな考えを振り払っていた。

けれど-ー


(……………………そうか。俺の自意識過剰じゃ無かったのか…………)


そうして、無言で物思いに耽っていたのがイケなかったのだろう。

先程まで優しく微笑んでいたフィリアさんの表情から笑顔が消え、悲しそうに(うつむ)いてしまう。


「……………………分かっています。シンさんは私を、友人だなんて思っていませんよね。シンさんにとって私は、冒険者とギルドマスター。それだけでしかないって、分かってはいるんです…………」


「ち、違っ-ー」


悲しそうに呟くフィリアさんの言葉を、俺は反射的に否定しようとしたけれど…………出来なかった。

だってそれは、その場しのぎの嘘でしか無かったから。俺と長い付き合いのフィリアさんなら、俺の嘘を見抜いてしまうだろう。

ならば、ここで嘘を吐いて否定した所で、意味なんか無い。

それなら、本当の事を言おう-ー


「そうですね。俺は今まで、フィリアさんを友人だなんて思った事はありません」


「…………そう、ですよね…………」


「だから-ー今この瞬間から、フィリアさんを友人だと思ったら、ダメですか?」


「-ーえ…………!」


俺の言葉を受けて、先程まで俯かせていた顔を上げる、フィリアさん。

そんなフィリアさんに、今度は俺から、ある誘いをかける。


「さしあたっては、先程エドさんと話している時に、ヴィヴィさんも交えて、近いうちにお酒を飲む約束をしたんですが…………フィリアさんも、一緒にお酒を飲みませんか?」


「-ーえっ!? シンさんが、お酒をですか!?」


俺からのお酒のお誘いを受けて、驚愕に目を開く、フィリアさん。

どうやら、あまりの驚きに、先程の悲しみが吹き飛んでしまったようだ。


(まあ、フィリアさんのあのとんでもない驚きようも、理解出来るけどさ…………)


お酒は体にも悪いし、酔えば思考も鈍ってしまう。

そう断じた俺は、これまで頑なに、1滴たりともお酒を飲まなかったからな。

だが、約束したのは事実なので、俺は自信を持って「はい」と頷くが-ー次の瞬間、はたと気付いた。


「あっ…………。でも、ギルドマスターであるフィリアさんが、冒険者とお酒を飲むのはマズイですかね?」


ギルドの職員は、冒険者には平等に接しなければならない。

たしか、そんな暗黙のルールがあったはずだ。

だが、俺の心配をよそに、フィリアさんは不敵に微笑んでみせる。


「ふふふっ。何を言っているんですか、シンさん。そんなの、今更ではないですか」


「…………まあ、たしかにそうですね」


「それに、私はこのギルドのトップですよ。誰にも文句なんて言わせません」


「はははっ。何ですか、それ。職権乱用じゃないですか」


「ふふふっ。…………ええ! 職権乱用ですとも!」


俺の指摘を受けても一切悪びれる事なく、あまつさえフィリアさんはふんぞり返ってみせた。

そうして、俺達はしばらくの間2人して笑い合い-ーそして、お互いの笑い声が止まったタイミングで、俺はフィリアさんへと右手を差し出す。


「それでは、改めて-ーフィリアさん。これからも、冒険者とギルドマスターとして、よろしくお願いします。そしてこれからは、友人としても、よろしくお願いしますね」


「ええ! こちらこそ、よろしくお願いします、シンさん!」


そうして、俺とフィリアさんは固い握手を交わす。

ふと見ると、フィリアさんの目尻に涙が(にじ)んでいた。

だが、フィリアさんの表情には満面の笑みが浮かんでいるので、それは決して悪い涙では無いのだろう-ー


…………

……………………

…………………………………………


今度こそ冒険者ギルドを後にした俺は、エドさんやフィリアさんと話した事で(しょう)じた遅れを取り戻す為、ギルド近くの商店街にて、大急ぎで買い物を行っていた。


「-ーよし! こんなものかな!」


肉屋や魚屋、八百屋やパン屋を回り、今日の夕食を含めた2~3日分の食材を購入した。

収納(アイテムボックス)』があるから、荷物が一杯になる心配は無いからな。本当は、もっと沢山の食材を買いたいのだが…………いくら冷蔵庫の魔道具があるとはいえ、これ以上は鮮度が心配だ。


(万が一にも、アイリスのお腹を壊す訳にはいかないからな!)


まあ、これから2~3日は、買い物に行く必要が無いという事だからな。

その分、アイリスと過ごす時間が増える訳だし、それでよしとしよう。


(さて、今の時間は…………6時ちょっと過ぎか。よし! 急いで帰るか!)


この時間なら、6時半までには家に帰れそうだ。

そう判断した俺は、沢山の人で賑わう商店街の中を早歩きで移動しながら、出口を目指す。


(本当は走りたい所なんだけど…………この人混みの中で走ったら、迷惑になってしまうからな)


そうして、早歩きで移動すること数分。商店街の出口が見えてきた。

俺はこのまま、商店街を出るつもりだったのだが-ー


(-ーん?)


視界の端にふと、いつもは見慣れない物が映った為、俺は足を止める。


(あれは…………のぼりか。なになに『新商品始めました』?)


のぼりが出ていたのは、洋菓子店『ジュエリーボックス』。

以前、アイリスと一緒に訪れ、シュークリームや誕生日にイチゴとチョコのケーキを買った、ケーキ屋さんだ。


(新商品か…………ふむ。寄るだけ寄ってみるか)


のぼりに書かれている新商品が気になった俺は、ケーキ屋さんへと足を向ける。


「-ーあっ! シルヴァーさん、いらっしゃいませ!」


店頭のショーウインドーに並んだ商品を眺めていると、すぐに俺の存在に気付いた店員さんが声をかけてきた。


(しかし、相変わらずSランク冒険者のブランドは凄いな。こんな、冒険者とは何の縁もなさそうなケーキ屋の店員さんまで、俺の名前を知ってるんだもんな)


とはいえ、やはり冒険者と縁が無い事に変わりはない。

他の冒険者やギルド職員なら、俺を見てコソコソ噂話をしたり、萎縮してしまうものだが、このケーキ屋の店員さんを始め商店街で店を営んでいる人には、それが無い。


(むしろ、気さくに接してくれるからな。俺としても、気楽に話せて、ありがたいよ)


そんな事を考えつつ、俺は店員のお姉さんへと声をかける。


「こんにちは。『新商品始めました』って書かれたのぼりを見て来たんですが-ー」


「ああ、はいはい! 新商品ですね。…………ジャーン! こちらの、ミルクレープになります!」


どうやらこのお姉さん、かなりノリが良い人みたいだ。


「いやー! 以前シルヴァーさん、うちの商品を買ってくれたじゃないですか。それで、『Sランク冒険者シン・シルヴァー行きつけの店』って評判になりましてね! おかげで、ここ最近売り上げが良くて…………こうして、新商品を出せるようになったんですよ!」


その上このお姉さん、かなり(したた)かなようだ。まさか、Sランク冒険者のブランドを利用するとは…………。

まあ、それはともかく、俺はお姉さんが指し示す先を見る。そこには、1つのケーキが置かれていた。

クレープ生地とクリームの層が幾重にも交互に折り重なっているようで、カットされた断面が実に美しい。


「へぇ~。キレイなケーキですね」


「でしょ! でしょ! どうです? 娘さんのお土産に、買っていかれませんか?」


俺は過去に2回、アイリスと一緒にこのケーキ屋さんを訪れている。

その時はアイリスはまだ、俺を「シンさん」と呼んでいたはずだが…………どうやら、冒険者だけでなく、商店街の中にまで俺とアイリスの関係は広まっているらしい。

まあ、それはともかく-ー


「…………うーん。どうしようかな…………」


普段の俺なら、アイリスへのお土産と言われたら、即決で購入していただろうが…………今回は腕を組んで、悩む素振りを見せる。


「そう言わず! サービスしますから、買って行きましょうよ! ねっ! ねっ!」


このお姉さん、大分押しが強い。まあ、俺が買えば、更に評判が広がるからだろうが…………。

まあ、それが嫌な訳では無い。むしろ、そういうなりふり構わない姿勢は好きだ。

が、俺には、購入を渋る理由があった。それは-ー


「…………いえ。以前俺、ここでイチゴとチョコのケーキを、ホールで買ったじゃないですか。勢いで買ったのはいいですけど…………あれ、俺と娘の2人では、食べきるのに3日かかりましてね。おかげで、何というか…………俺も娘も、しばらく甘い物はいいかなーって感じになってまして」


店員のお姉さんへと説明しながら、『じゃあ、なんでケーキ屋に来たんだ』と自分でも思ったが…………何となく足が向いたとしか、言いようがなかった。

だが、俺の支離滅裂な説明を聞いても、お姉さんは気分を害した様子は見せず、むしろ笑顔を浮かべる。


「そういう事なら、ご安心ください! 実はこのミルクレープ、クリームの層にフルーツが入っておりまして、果物の酸味が良い具合に甘さを和らげてくれますよ」


「え? …………あっ、本当だ」


1つ1つの層がとても薄いので気付かなかったが、よく見れば確かに、クリームの層に小さくカットされたフルーツが入っている。

入っているのは、イチゴにキウイにパイナップル。どれも酸味が強いフルーツで、店員のお姉さんの言うように、ケーキの甘味を和らげてくれるだろう。


「まあ、そういう事なら…………じゃあ、俺と娘の分で、ミルクレープ2つ下さい」


「はい! まいどあり~! です!」


そうして、店員のお姉さんに背中を押してもらった俺は、アイリスへのお土産として、ミルクレープ2つを購入したのだった-ー


…………

……………………

…………………………………………


ケーキ屋さんでミルクレープを購入した後、俺は今度こそ商店街を出て、家への帰路に着いていた。

俺は現在、ミルクレープが入った箱のみを手に持っている。商店街で買った他の商品は全て、『収納(アイテムボックス)』に仕舞っているのだが…………どうしてかこれだけは、『収納(アイテムボックス)』には仕舞わず、直接手に持ちたいと思ったのだ。


「…………ふふふっ。アイリス、喜んでくれるかな~」


ミルクレープが入った箱を顔の高さまで掲げた俺は、かわいい愛娘が喜ぶ姿を想像して、1人でニヤニヤと微笑む。


(何だか、店員のお姉さんに勧められるまま、勢いで購入してしまった気もするけど…………でも、1人で留守番しているアイリスの寂しさを紛らわす意味では、良いサプライズプレゼントになったかもしれないな)


これを受け取ったアイリスは、一体どんな反応をするのだろう?


(きっと、最初は凄く驚いて…………だけど、すぐに満面の笑みになって、「ありがとう、お父さん!」ってお礼を言いながら、俺に抱き着いてくるのかもしれないな)


そんな親バカ全開な事を考えつつ、俺は足取り軽やかに家を目指す。

だけど-ーどうやら俺とアイリスは、かなりの似た者親子だったらしい。

俺だけで無く、アイリスもサプライズプレゼントを用意していて-ー

結局、俺の方がアイリス以上に笑顔になって、俺の方から「ありがとう、アイリス!」とお礼を言って、かわいいかわいい愛娘を抱き締める事になるのだった-ー


~4月編 あとがき~


アイリス視点2ページに対し、シン視点が6ページと圧倒的に多くなってしまいました。

『新しい日常』というタイトルである以上、アイリスよりもシンと方が変わった点が多いので…………。

次の5月編では、アイリス視点の話も増やす予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ