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4月-ーアイリス。新しい日常(後編)

アイリス視点

-ーカーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン


皆が真剣に課題に取り組み、静寂に包まれていた教室の中に、授業の終わりを告げる鐘の音が響き渡る。

鐘の音は6回。今日の授業は全部終わり、下校の時間だ。


「-ーあら、もうこんな時間なのね。それでは、本日の授業はこれで終わります。皆さん、気を付けて帰って下さいね」


「「「「「はい! 先生、さようならー!」」」」」


「はい、さようなら」


今日の最後の授業に参加していた生徒の数は、わたしを含めて約30人。

みんなが一斉(いっせい)に立ち上がり、タイミングを合わせて、教卓の前に立つシスターさん(先生)へと頭を下げる。

シスターさん(先生)も、わたし達に別れの挨拶を口にすると、一足(ひとあし)先に教室を出る為、出入り口へと向かう。

だが-ー


「-ーああ、そうそう」


教室を出る直前、ふと何かを思い出した様子で立ち止まる、シスターさん(先生)

そして、シスターさん(先生)は今1度教室内へと振り返ると、先程までわたし達が取り組んでいた課題の用紙を手にしながら、口を開く。


「この時間で皆さんが書いた作文は、ぜひご家族の方に見せてあげて下さい。きっと、喜んでくれますよ」


それだけを口にして、今度こそ教室を出て行く、シスターさん(先生)

瞬間、先程までの静寂がウソのように、教室の中が賑やかになる。


「はー! やーっと、終わったー!」「なー、どっか遊びに行こうぜ」「わりぃ。今日はこの後、店の手伝いをしなくちゃいけないんだ」「ねえねえ、この後買い物に行かない」「いいね。行こ行こ」


思い思いの放課後の予定を語り合いながら、下校の準備を始める、クラスメイト達。

わたしも、自分の教科書やノートを『収納(アイテムボックス)』の中に仕舞っていると、1人の女の子が声をかけてきた。


「アーイちゃん! 一緒に帰ろー!」


「あっ、モモちゃん! うん! 一緒に帰ろう!」


彼女の名前は、モモちゃん。

薄紫色の長い髪が特徴の女の子で、この学校で出来た、わたしの新しい友達だ。


「…………あっ…………モモちゃん…………」「じゃ、じゃあな!」


「うん! じゃあねー!」


と、突然、男子2人組がぶっきらぼうな口調で、モモちゃんへと声をかけてきた。

その男子2人組に、モモちゃんが笑顔で手を振ると…………男子2人組は、照れた様子で顔を赤くして、そそくさと教室を出て行った。


(…………まあ、あの男子2人の気持ちも、分からないじゃないけどね…………)


モモちゃんは、同性のわたしが見てもドキッとする程の、女の子らしい容姿をしている。

この学校の男子にとって、モモちゃんはまさにアイドルのような存在なのだ。


(…………あっ。だからといって、モモちゃんが女の子から嫌われてる訳じゃないよ)


モモちゃんはとても人懐っこい性格で、同性の友達も凄く多い。

男子が居ない所では、女の子同士で「男子って子供だねー」なんて、言い合っているぐらいだ。

そんな、男女共に人気のあるモモちゃんだけど、この学校に通い始めたばかりのわたしと、とても仲良くしてくれている。

今では、「アイちゃん」「モモちゃん」と呼び合う仲だ。


(モモちゃんって、わたしと同じ位の背丈だから-ー小っちゃい者同士、お互いに親近感が湧いたのかな?)


なんて、冗談交じりに、そんな事を考えていると-ー


「ラーナちゃん! ラナちゃんも、一緒に帰ろうよー!」


モモちゃんが教室中に響き渡るような大きな声で、もう1人の女の子にも、「一緒に帰ろう」と呼び掛ける。

すると、その呼び掛けに反応し、1人の女の子がわたし達の方へと向かって来た。


「…………まあ、一緒に帰るのは構わないのだが…………何度も言ってるが、あたしを『ちゃん』付けで呼ぶのは止めてくれ、モモ」


わたし達の元へ辿り着くなり、苦い顔でモモちゃんに苦言を呈している女の子の名前は、ラナ。

わたしにとってラナは、この学校で出来た2人目の友達だ。まず最初にモモちゃんと友達になって…………その次に、モモちゃんの幼なじみだというラナとも、仲良くなった。

わたしよりも短い黒髪と、男子顔負けの高い背丈が特徴で、男口調も合わさって、よく男の子に間違われるけれど-ーラナは、れっきとした女の子だ。


(ただ、ラナ自身が、自分が女の子扱いされる事を、あまり快く思っていないみたいなんだよね…………)


だから、わたしを含めたクラスの子は皆、ラナの事を呼び捨てで呼んでいるのだけれど…………ラナと幼なじみのモモちゃんだけが、めげずに「ラナちゃん」と呼び続けていた。

…………ちなみに、ラナはわたしの事を「アイ」と呼んでくれている。わたしの事を「アイちゃん」と呼ぶモモちゃんに、倣ったようだ。


(…………っと、イケない、イケない! いつまでも2人と仲良くなった経緯を思い出してないで、わたしも急いで片付けないと!)


モモちゃんもラナも、既に教科書やノートをカバンに片付け終わっている。

いつまでも2人を待たせる訳にはいかない。わたしは、急いで机の上の物を『収納(アイテムボックス)』へと仕舞うと、立ち上がりながら2人に声をかける。


「お待たせ、モモちゃん、ラナ。それじゃあ、帰ろうか!」


「うん! 帰ろう、帰ろう!」


「ああ」


そうして、わたし達は3人並んで教室を出る。

教室から廊下へ。校舎の中から、校舎の外へ。移動の途中途中で、たくさんの生徒やシスターさんに「バイバイ」「さようなら」と別れの言葉を交わしながら、わたし達3人は正門から学校の敷地の外へと出る。


「-ーあっ、そうだ! ねえねえ、アイちゃん!」


しばらく歩くと、同じ学校の生徒の姿も見えなくなり、声をかけられる事も無くなった。

そのタイミングを見計らい、モモちゃんがわたしに話しかけてきた。


「なに、モモちゃん?」


「良かったら、アイちゃんが書いた作文、見せてよ!」


「作文って…………これの事?」


わたしはモモちゃんへと尋ねかけながら、『収納(アイテムボックス)』の中から、今日の最後の授業で書いた作文を取り出す。

今日の最後の授業は『国語』で、『家族』をテーマに作文を書くという課題だった。


「うん、それそれ! アイちゃんの事だから、きっと大好きなお父さんの事を書いているんだろーなーとは思うけどさ…………ねえ、見て大丈夫?」


「うん。いいよ」


「ありがとう! …………………………………………うわぁ…………」


わたしが書いた作文をしばらく見た(のち)、頬を真っ赤に染めながら溜め息を漏らす、モモちゃん。

そんなモモちゃんの反応を不思議に思ったのか、ラナがわたしに小声で尋ねてきた。


「なあ、アイ。あの作文、いったい何が書かれているんだ?」


「何って…………お父さんの、どういう所がカッコいいかとか、どういう所が大好きかを、実際のエピソードを交えながら、事細かく書いてるだけだよ?」


「そ、そうか…………。ちなみに、結構枚数があるように見えるんだが、何枚ぐらい書いたんだ?」


「たしか…………10枚ぐらいだったかな? 本当は、もっと書きたかったんだけど、その前に授業が終わっちゃったんだよね…………」


「そ、そうか…………。相変わらず、アイはお父さんが大好きなんだな」


わたしの話を聞いて、呆れたように呟く、ラナ。

そのまま、ラナはモモちゃんの後ろに回ると、高い身長を活かして、わたしが書いた作文を興味深そうに覗き込み始めた。

そして-ー


「…………………………………………うわぁ…………」


わたしの書いた作文をしばらく読んだ後、ラナもモモちゃんと全く同じ反応を見せた。

その後も、顔を真っ赤にしながらも、モモちゃんとラナは、わたしが書いた作文を最後まで読み終えた。


「あ、ありがとう、アイちゃん。アイちゃんの、お父さんが大好きって気持ちが、物凄く伝わってきたよ…………」


顔を真っ赤にしながら、わたしに作文を返してくる、モモちゃん。

そんなモモちゃんに、わたしは苦笑交じりに尋ねてみる。


「あ、あはは…………。ね、ねえ、モモちゃん。わたしが書いた作文、そんなに変だった?」


「へ、変ではないと思うけど…………。まあ、モモにはお父さんが居ないから分からないけど…………でも普通、モモ達位の歳の女の子は、父親を毛嫌いするんじゃないかな?」


「あっ、そうか。そういえばモモちゃんにも、お父さんが居ないんだったね」


たしか、モモちゃんもわたしと同じで、物心つく前に父親が亡くなったって言ってた。

ただ、以前のわたしもそうだったけど、物心つく前に父親を亡くしたわたし達にとって、父親が居ない生活というのは、異常ではなく当たり前なのだ。

モモちゃんも特に気にした様子は無く、後ろに居るラナへと話を振る。


「ちなみに、ラナちゃんはお父さんの事-ー」


「キライだ。知っているだろう、モモ」


モモちゃんの言葉を途中で遮って、キッパリと告げる、ラナ。

ラナは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべており、心の底から父親が嫌いだという事が、ありありと伝わってくる。

と、ラナは苦い顔のまま、今度はわたしに尋ねてきた。


「…………そういえば、アイもあたしの父親に何度か会った事があるんだったな。どうだった? ろくでもない男だっただろう?」


たしかに、わたしはラナのお父さんに…………そして、お母さんにも会った事がある。

というのも、ラナの両親は-ーお父さんの知り合いの冒険者である、エドさんとヴィヴィさんなのだ。


(…………といっても、わたしはラナの両親と、あまりお話してないんだけどね…………)


お父さんともう1度親娘になってから今日までの間に、わたしは何度かラナのご両親に会っている。

けれど、エドさんやヴィヴィさんと話していたのは、(もっぱ)らお父さんさんで、わたしは挨拶をしたぐらいだ。

それでも、お父さんと会話をしている様子を見るかぎり、エドさんは…………何と言うか、軟派な印象の人だった。


(フィリアさんは以前、エドさんの事を『お調子者』って言っていたけれど…………まさに、そんな感じの人だったな)


それでも、わたしは何とか、エドさんをフォローしようとしたのだけれど…………結局、上手い言葉が思いつかず、「あ、あはは…………」と曖昧に笑って誤魔化す事しか出来なかった。


「はぁー…………! まったく! どうしてあたしの父親は、あんなにもいい加減なんだ…………。お父さんを大好きと言えるアイが、本当に羨ましい」


「-ーあっ! それは、モモも分かるな~! モモにも、アイちゃんのお父さんみたいな、若くてカッコいいお父さんが欲しいって、思うもん!」


わたしの反応を受けて、深く重たい溜め息を吐きながら、エドさんに対する愚痴を(こぼ)す、ラナ。

続けて、ラナが何気なく放った呟きに、モモちゃんが勢いよく食いついてきたかと思うと-ー


「-ーあっ! そうだ!」


ふと、何かを思い付いた様子を見せる、モモちゃん。

そして、モモちゃんはわたしを見つめると…………チロリと、自分の唇を舐めながら、続ける-ー


「それなら、いっその事…………モモが、アイちゃんのお父さんを盗っちゃおうか-ー」


「だ、ダメだからね! お父さんは、わたしのお父さんなんだから!」


「あはは! 分かってるって! 冗談だよ、冗談~!」


モモちゃんの言葉を途中で遮って、必死に声を張り上げる、わたし。

わたしも、モモちゃんの冗談だって、分かってはいるのだけれど…………どうしてだろう?

モモちゃんの仕草や微笑みを見ていると、本当にお父さんを盗られちゃうような気がしたのだ。

-ーと、


-ーガンッ


「コラッ! モモも、アイがSランク冒険者のシン・シルヴァーさんの養子になった経緯は聞いているだろう! 安易にからかうな!」


「あ痛たた…………。うん、ラナちゃんの言う通りだね。ゴメンね、アイちゃん」


「ううん。わたしも、過剰に反応しちゃった。ゴメンね、モモちゃん」


ラナが突然、モモちゃんの頭に手刀を振り下ろした。

かなり痛かったのか、頭を(さす)りながら涙目で謝ってくる、モモちゃん。

わたしも、過剰に反応してしまった事を謝って-ーこの話はおしまい!

わたしは、次の話題を切り出そうとしたのだけれど-ー


「-ーっと。どうやら、商店街の入り口に着いたようだな」


ラナのその言葉を受け、わたしは周囲を見回す。

たしかにラナの言う通り、いつの間にか冒険者ギルドを通り過ぎて、わたし達は商店街の入口に来ていた。

残念ながら、モモちゃんやラナと一緒に過す事が出来るのは、ここまでのようだ。


「それじゃあ、アイちゃん。モモとラナちゃんは、こっちだから」


「うん! モモちゃん、ラナ、またね~!」


「ああ。またな、アイ」


「バイバイ~、アイちゃん! また、お母さんのお店に来てねー!」


「あはは! うん、分かった! また、おじゃまさせてもらうねー!」


商店街の入口前で手を振りながら、そんな別れの挨拶を交わす、わたし達。

商店街の中にお家があるモモちゃんと、商店街の向こう側にお家があるラナの2人は、商店街の中へ。

そして、中央区にお家があるわたしは、ここからは1人で王都の街を歩く。


『バイバイ~、アイちゃん! また、お母さんのお店に来てねー!』


家路の途中、わたしの頭に浮かんできたのは、別れ際のモモちゃんの言葉だ。


(モモちゃんのお母さんのお店には、わたし好みの小物やお洋服が、たくさん売ってるからな~)


モモちゃんのお母さんが、商店街の中で営んでいるお店の名前は、『ピクシーガーデン』。

子供向けの小物やお洋服を専門に販売してる洋裁店なんだけど…………実はこのお店、わたしが初めて王都にやって来た日に、フィリアさんに連れられて、当面の洋服や小物を買ったお店なのだ。

その後も、わたしはお父さんと一緒に、このお店に何度も買い物に来ている。


(ラナのご両親が、お父さんの知り合いの冒険者のエドさんとヴィヴィさんだったのもそうだけど…………これって、すごい偶然だよね)


わたし達がこれらの事実を知ったのは、わたしが前回学校に登校した日だったんだけど…………3人共、物凄くビックリした事を、今でも鮮明に思い出せる。


「…………って。もう、お家に着いちゃった…………」


気付けば、わたしは自分のお家の前に辿り着いていた。


(モモちゃんやラナと一緒の時は、お喋りしながらだから歩くスピードもゆっくりになっちゃうけど…………1人になると、ホントにあっという間だなー)


そんな事を考えながら、わたしはお家の門を開く。

噴水がある広いお庭を通り、玄関の前へと到着。

そして、玄関の扉を開けようとしたのだけれど-ー


-ーガチャガチャ


「……………………カギがかかってるか…………」


呟きながら、わたしは懐からお家のカギを取り出すと、カギ穴へと差し込み、ガチャリと解錠。

そして、わたしは改めてドアノブに手をかけて、今度こそ玄関の扉を開く。


「ただいま、お父さん!」


お家の中に入ったわたしは、すぐさまお父さんに「ただいま」と挨拶をしたんだけど…………いくら待っても、お父さんからの「おかえり」の返事は返ってこず。

わたしの声は、この大きくて広いお家に、(むな)しく吸い込まれるだけだった。


「…………まあ、カギがかかっていたから、お父さんがまだ帰って来ていないって、分かってたんだけどね…………」


それでも、もしかしたらと少しだけ期待してたんだけど…………やっぱり、朝ギルドで話した通り、今日はわたしの方が先にお家に帰って来たみたいだ。


「…………今、何時なんだろ?」


わたしはリビングに移動すると、壁にかけられた時計を確認する。


「…………5時半、か…………。たしか、お父さんは6時~7時頃に帰って来るって言っていたから…………お父さんが帰って来るまで、あと1時間前後かな…………」


それを認めた瞬間、わたしの口から「はぁー」と、深く重たい溜め息が漏れてしまった。


『ち、違うからね、お父さん!? 心配しなくても、お父さんが『血染めの髑髏(ブラッディスカル)』を倒してくれたおかげで、わたしの中の負の感情は、ほとんど無くなってるよ』


(わたしは以前、お父さんにこう話したけれど…………『ほとんど』という言葉が示す通り、わたしの心にはまだ、ほんの少しだけ負の感情が残ってるんだ…………)


普段なら、この負の感情は心の奥底に隠れているんだけど…………こうして、『1人』を実感してしまうと、死んでしまったお母さんや村の皆を思い出して、寂しくなってしまう。


(…………やっぱり、この大きくて広いお家に1人で居る事には、まだ慣れそうにないな…………)


以前の-ーお父さんが『血染めの髑髏(ブラッディスカル)』を倒してくれる前のわたしなら、際限なく落ち込んでいって、寂しさを(つの)らせるだけだったかもしれない。

だけど…………今のわたしの心にある感情は、『寂しさ』だけじゃ、無いから-ー


「-ーよし! それじゃあ、疲れて帰って来るお父さんを、出迎える準備を始めよう!」


わたしは、気持ちを切り替える為に、大きな声を上げる。別に、空元気という訳じゃ無いよ。

お父さんが受ける依頼は、他の冒険者が面倒くさがって受けなかった、売れ残りの依頼だから…………顔には出さないけれど、お父さんも疲れてると思うんだ。


(そんなお父さんを出迎える事が、先に帰って来た時の、わたしの『楽しみ』なんだ!)


わたしは、リビングからキッチンへと移動すると、早速お父さんを出迎える準備を始める。

といっても、夕食を作る訳じゃ無い。


(女の子として情けないけれど、料理を腕は、圧倒的にお父さんの方が上だからね)


だから、今からわたしが始めるのは、お茶を淹れる為の準備だ。


(少しずつ暖かくなってきてるけど、陽が沈んでからは、まだ肌寒いからね~)


ただ、お父さんがいつ帰って来るかは分からないので、今は準備を進めるだけにする。

わたしは、戸棚から茶葉を取り出したり、コンロの下から小鍋を取り出したりしていると-ーふと、ある事を思い出す。


『この時間で皆さんが書いた作文は、ぜひご家族の方に見せてあげて下さい。きっと、喜んでくれますよ』


(そうだ…………たしか、シスターさんは帰り際に、そんな事を言っていたよね)


それを思い出したわたしは、『収納(アイテムボックス)』から、今日の最後の授業に書いた作文を取り出す。


(モモちゃんやラナは、ちょっと引いていたけれど…………わたしの事が大好きなお父さんなら、きっと喜んでくれるはずだよね!)


この作文を読んだお父さんは、一体どんな反応をするのだろう?

きっと、最初は凄く驚いて…………全部読み終わった後には、満面の笑みが浮かべながら、お礼と共にわたしの頭を撫でてくれるのだろう。


「…………えへへ。楽しみだなぁ…………」


気付けば、わたしの口元には笑みが浮かんでいた。

『寂しい』って気持ちは、確かにある。でも、それと同じぐらい-ーううん。

それ以上の『ドキドキ』『ワクワク』した心持ちで、お父さんが帰って来るのを待ち望むのだった-ー


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