シンVS血染めの髑髏(中編)
シン視点
俺が『収納』から取り出した武器はーー槍
(…………よし! 行くかっ!)
俺は覚悟を決めると、槍を構えた状態で、洞窟の中へと足を踏み入れて行く。
「死ねや! 『探求者』!」
すると早速、『血染めの髑髏』の団員が1人、口汚い言葉と共に襲いかかって来た。
(相手の武器は…………片手剣か…………)
本来なら、その剣を自在に振り回していたのだろうが…………この狭く、天井も低い洞窟では、それも出来まい。
相手も、それは分かっているのだろう。剣を胸の前で水平に構え、勢いそのままに、俺に向かって突進してくる。
その剣を突き刺すつもりなんだろうが…………俺の槍の方が、リーチは上だ!
「ーーハァッ!」
俺は、相手の間合いの外から、槍による『突き』を放つ。
「ーーチィッ」
相手は反射的に、俺の攻撃を横に避けようとするがーー
ーーガンッ
数センチ横にズレただけで、鎧が洞窟の壁にぶつかり、相手はそれ以上動けなくなってしまった。
「…………え…………」
咄嗟の事態に、相手は呆けた呟きを漏らして、固まってしまう。
(ーー隙だらけだッ!)
このチャンスを、逃す手は無い。
俺はこのまま、攻撃を続行する。
ーーグサッ
「ーーかはっ…………」
狙い通り、俺が放った突きは、鎧に守られていない首を貫く。
断末魔の声と共に相手は倒れ伏し…………やがて、動かなくなった。
(…………よし。あと、17人…………!)
相手が絶命した事を確認し、俺は洞窟の奥へと進んで行く。
(…………しかし、作戦通りに上手くいったな…………)
そう。今の1連の流れこそ、俺が戦場を洞窟の中へ移した理由だ。
(…………あのまま、開けた場所で『血染めの髑髏』と戦っても、俺に勝ち目は無かっただろうからな…………)
万全の状態だったなら、勝てる自信はある。
だが、王都から『パァム』の村外れの洞窟まで、3時間全力で走り続けた事による、肉体的疲労。
その間に使い続けた『筋力強化』と『スピード強化』。更には、アイリスのケガを治すために使った『極・癒』で、魔力も半分位にまで減っていた。
『よく見ろ! いくらSランク冒険者といえ、相手はたった1人だ! 人数の利は、こっちにある!』
『血染めの髑髏』の構成人数は30人。オルベンの言う通り、人数の利はあちらにある。
それはつまり、開けた場所だと、相手に囲まれて不利になるという事だ。
(…………というか、現に囲まれてたしな…………)
ーー以上の条件を踏まえて、気を失ったアイリスを庇いながら、脅威度はAプラスの『血染めの髑髏』に勝つのは難しい。
そう判断した俺が、咄嗟に考えた作戦ーーそれこそが、道幅が狭く天井も低い洞窟へと、戦場を移す事だった。
(ここなら、囲まれる心配は無い。1VS1の戦いを、『血染めの髑髏』が全滅するまで繰り返すだけだ…………)
その為に俺は、敢えて魔力切れ覚悟で威力の高い『神光』を連発した。
『血染めの髑髏』に、開けた場所で戦うのは不利だと思わせ、自ら洞窟の中へと入って行くよう仕向けるために…………。
『ーーチィ! 大規模攻撃魔法ばかり連発しやがって…………! 開けた場所は不利か…………。お前ら! 洞窟の中で迎え撃つぞ!』
果たして、それは上手くいった。
(…………まあ、その代償として、魔力をかなり使ってしまったが…………)
残りの魔力量を考えると、初級~中級の魔法を2、3回使える程度だが…………まあ、問題は無い。
そもそも、この狭い洞窟の中では、魔法は使えないのだからーー
「ーーくそ! 死ねー!」
…………と、そうして作戦を思い返している間にも、『血染めの髑髏』の団員達は、1人、また1人と襲いかかって来る。
手にしている得物は、剣やナイフや斧と、多種多様。
だが、この洞窟の中では『突き刺す』という攻撃しかマトモに行えず…………その攻撃に関してだけなら、槍よりリーチで勝る武器は存在しない。
「ーーハァッ!」
ーーグサッ
「ギャアアー!」
俺はまた1人、相手の間合いの外から『突き』を繰り出し、『血染めの髑髏』の団員を倒す。
ーー残り、10人。
「ちくしょう! このままじゃあ、全滅だぞ! おい! オレ達の中にも槍を使う奴が居ただろう! そいつらは、どうした!?」
洞窟の奥から、様子を伺っているのだろう。
オルベンの、どこか焦ったような、ヒステリックな怒号が聞こえてくる。
(確かに、相手に槍を使われたら厄介だが…………まあ、その心配をする必要は無いか)
なぜならーー
「もう居ません! すでに『探求者』に殺されてます!」
『血染めの髑髏』の団員が1人、どこか泣き出しそうな声音で、オルベンの質問に答える。
その男の言う通り、『血染めの髑髏』に数人いた槍使いは、前もって『神光』2発で全員殺している。
もはや、『血染めの髑髏』に、俺の槍にリーチで上回れる奴は、存在しない。
(…………まあ、例外はあるけどね…………)
それこそが、魔法と弓だ。この2つなら、俺の槍の間合いの外から攻撃出来る。
ただ、この狭い洞窟の中で魔法を撃てないのは、『血染めの髑髏』も同じ。
あと残るは、弓だがーー
「待ってろ! 今、援護する!」
ーーヒュンッ……………………グサッ!
「ギャアアー!」
「バカ野郎! 味方を射ってどうする!」
ーーまあ、ご覧の通りだ。
弓というのは、基本後衛職。開けた場所ならともかく、この狭く天井も低い洞窟内で、前衛の味方に当てずに俺を射ぬくのは、至難の技だ。
「…………ひぃっ…………。も、もうダメだ…………! に、逃げ…………」
1人、また1人と仲間が殺されていくのを見て、精神が恐慌状態に陥ったのか、遂には逃げ出そうとする奴まで現れる。
だがーー
(ーー逃げられる訳ないだろうがッ!)
現在、この洞窟の出口に1番近い場所に居るのは、俺だ。
結局の所、『血染めの髑髏』が洞窟から出るには、俺を倒さなければならないのだ。
(そのために、わざわざ手間をかけて、『血染めの髑髏』を先に洞窟の中に入れたというのに…………)
それなのに、そいつは泣きながら洞窟の出口へーーすなわち、俺の元へと、無防備に向かってきている。
(よほどパニックになっているんだろうが…………だからといって、情けをかけるつもりはない!)
ーーグサッ
俺は遠慮なく、そいつの喉元へと槍先を突き立てる。
(これで、残りは7人か…………)
どうやら、残りのメンバーはオルベンを除き、弓や魔法使いと言った後衛職だけのようだ。
「も、もうダメだ…………」「やっぱり、Sランク冒険者に勝てる訳なかったんだ…………」
「てめえら、なに弱気になってやがる! さっさと戦わねぇか!」
もはや諦めてしまったのだろう。
残りの『血染めの髑髏』の団員達は、俺に挑みかかってくる様子もなく、後退るばかり。
オルベンが必死に声を張り上げているが、戦意が回復する様子は見られ無かった。
(アイリスが心配だし、時間をかけすぎるのもな…………)
『極・癒』で怪我自体は治ったとは言え、失った血は戻らない。
それに、いつまでも草地に寝かせているのも、体に障るだろう。早く病院のベッドで寝かせてあげたい。
(よし! さっさと終らせるか!)
ーーダッ!
俺は槍を構えると、洞窟の奥の方で固まっていた『血染めの髑髏』の元へ突進。
あっという間に、戦意を失っていた6人の『血染めの髑髏』の団員を倒すのだったーー
(ーー残るはオルベン、ただ1人!)




