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シロツメクサの花冠と、シロツメクサの妖精

シン視点

昼食のサンドイッチを食べ終わってから、10分程がたったーー

俺達は未だに出発する事なく、食休みのために、このシロツメクサの花が咲き誇る広場に留まっていた。


「ふんふんふーん」


隣では先程から、アイリスが鼻歌を口ずさみながら、シロツメクサの花冠を作っている最中だ。

俺がサンドイッチを食べている途中に採ってきた15本程のシロツメクサの花は、どうやらその為のものだったらしい。


(…………それにしても、結局、アイリスが俺からフルーツサンドを引ったくった理由は、いったい何だったんだろうか?)


アイリスがシロツメクサの花冠を作っている様子を眺めつつ、俺は先程の出来事を思い返す。


(アイリスは、『美味しかったので、つい…………』なんて言っていて、とりあえず俺もそれで納得したけど…………本当に、そんな理由だったのかな?)


本当は聞き返しても良かったんだけど、アイリスは何故だか顔を真っ赤にして俯いていて、その様子を見ていると、それ以上追及するのは躊躇われたのだ。


(…………まあ、いいか。アイリスにも、言いたくない事の1つや2つ、あるんだろう)



俺はそこで思考を打ち切る事にして、再度アイリスの手元を見る。

しかし、まあーー


「シロツメクサの花冠って、そうやって作るんだね。初めて見たよ」


先程から見ていた、花冠の作り方を思い出す。

まずアイリスは、採ってきたシロツメクサの中から、特に茎が長い3本を選んで、それを束ねて軸にしていた。

そして今は、軸にした3本の茎に、他のシロツメクサの花を1本ずつ、順番に巻き付けていっている所だった。


「あれ? もしかして知らなかったんですか、シンさん?」


「ああ」


そう答えると、アイリスは花冠を作る手を止め、驚いた表情を俺に向けてきた。


「? どうかした、アイリス?」


「…………いえ。ちょっとビックリして。シンさんにも知らない事があるんですね」


「いやいや。そりゃ、あるでしょ」


たしかに、俺は人1倍の知識を有している自信がある。

とはいえ、さすがにシロツメクサの花冠の作り方は知らなかった。


「…………というか、俺みたいな男がシロツメクサの花冠の作り方なんて知ってても、気持ち悪いだけでしょ」


「えー、そうですかー。わたしは可愛いと思いますけどね」


俺にからかう様な笑みを向けて、再度手を動かし始める、アイリス。

どうやら、もう終盤だったらしく、アイリスは残った数本のシロツメクサの花を巻き付けると、最後に軸にしていた3本の茎の端と端を結んで輪にした。


「ーーよし! 出来たー!」


どうやら、これで完成らしい。


「ふふふっ。シンさん、どうですか?」


出来上がったシロツメクサの花冠を頭に載せ、感想を求めてくる、アイリス。

俺は、数秒間アイリスをじっと見つめ、正直な感想を口にした。


「ーーうん。よく似合ってる。かわいいよ、アイリス」


「…………え、えへへ~。ありがとうございます、シンさん!」


俺に可愛いと褒められたのが、よほど嬉しかったのだろうか?

どこか照れたように頬を染めながらも、満面の笑みを浮かべる、アイリス。


(ははっ。今のアイリス、まるで妖精みたいだ)


可愛らしい容姿に、太陽の光を浴びてキラキラと輝くキレイな銀髪。そして、その上にちょこんと載った、小さな花冠。

シロツメクサが咲き乱れる広場の中で微笑むアイリスを見ていると、そんな錯覚を抱いてしまう。


「? シンさん、どうしました?」


「…………いーや。なんでもないよ。それじゃあ、アイリス。そろそろ出発しようか」


「あっ、はーい」


ボーッとしていた俺を不思議に思ったのか、首を傾げながら尋ねてくる、アイリス。

とはいえ、先程考えていた事を素直に口にするのは、さすがに恥ずかしい。

俺は話を誤魔化す為に立ち上がると、アイリスを促して、次の依頼場所である、鉱山へと向かい始めたのだったーー


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