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第0章 反社会的な冒険 はじまり

 ――朝、一匹の鶏が一際大きく鳴いた。


「起床!」


 半覚醒状態の脳を南方女教官の声が揺さぶる。


「やぁ、府神ふかみ


 次いで、蓮沼立はすぬまたつるの顔が畳敷きのベッドで寝ている俺の頭上に現れた。


「顔が近えよ」

「ごめん。裸眼だとさ、近くで見ないと、府神を府神だと認識できないんだよ。ちょっと離れると、府神の顔が東南アジアの土産物屋で売っている木彫りの人形にしか見えなくなるんだ」

 

 ぼさぼさ頭の童顔男、蓮沼。

 この集団寮における俺のルームメイト。

 近眼なので普段は黒縁眼鏡をかけている。

 見てくれだけで判ずるならば、間違いなく理系に属する男だろう。

 この部屋は二人部屋。ベッドは二段式。

 俺は下段で蓮沼は上段のベッドを使っている。

 廊下からまた南方教官の張り上げた声が聞こえた。

 俺と蓮沼は急いで上下青のジャージに着替える。

 慌ただしい朝はいつもの日常。


「時にさ、府神」

「何だ?」

「今日のお前は、深まれそうかい?」


 これは、蓮沼の口癖だ。

 深まる。

 それは、俺たちの育て直しであり、卒業への近道であり、この学園、そして、六法全書の定める理念を言い表す言葉の一つ。


「深まってるさ――もちろん、フリだけどな」


 こいつにだけは、正直に話してもいいだろう。


「実行に移すのかい?」

「ああ。今日中に事を起こす」

「この学園も騒がしくなるね。場所の検討はついてるの?」

「神奈川県横浜市。田園都市線の青田菜あおだな駅から徒歩五分で大学病院にたどり着く。あいつは、そこにいる」

「ネット環境もないのに、よく調べたもんだ」

「ゴリラが、教えてくれたんだよ」

「へえ、そういえば、宮田教官は彼女の担任だったね」

「あいつの家族……事が起こった後、横浜に引っ越したんだ。俺はそんなことも知らなかった」

「仕方がないさ。それがここのルールなんだ。破れば、深まれない」


 蓮沼立。入院してからずっと、この寮で、この部屋で、寝食をともにしてきた俺の同居人。

 けれども、あの女と同じく、俺はこいつの出身地や年齢を知らない。

 蓮沼も俺――府神静馬ふかみしずまのことを何も知らない。 ただ、表面的に仲良くしているだけだ。

 いや、ここでは俺と蓮沼の距離すらも〈近すぎる〉と認識される。

 おかしなことじゃない。ここはそういう〈学園〉だから。

 外で鶏が再び鳴いた。


***


 この学園は全部で三つの集団寮が存在する。

 俺たちが暮らしているのは第二寮である紅葉寮。

 起床してから寮の連中は廊下に整然と並ぶ。


「脱帽! 番号!」


 南方が叫ぶのと同時に、全員がつば付きの帽子を取った。


「イチ」「ニ」「サン」「シ」「ゴ」「ロク」「シチ」「ハチ」「ク」


 廊下に並んだ在院生たちが、一人ずつ大きな声で番号を叫んだ。

 点呼が終わり次第、右手に持った灰色の帽子をかぶり直し、南方の後に続いて、皆が一列になって歩き出す。

 軍隊みたいに手をピシっと伸ばし、乱れぬ足並みで生活棟に向かう。

 生活棟の食堂で朝食。

 寮に戻りホールで朝礼を終えた俺たちは、次に教育棟へと赴く。

 教育棟への道すがら、最後の在院生が紅葉寮のガラス扉を通過すると、南方教官が扉を施錠した。

 これで俺たちは、鍵の破壊というイリーガルな手段を講じない限り、寮に戻って二度寝することは叶わなくなった。

 教育棟の二階教室に入り、各々の席に着き、先生が来たら腰を九十度に曲げてお辞儀をする。

 九時からは〈教科教育〉が行われる。

 教官あるいは外部の教育者を呼んで、それなりに体裁の整ったお勉強だ。

 年季の入った木目の机に教科書を広げながら、もくもくと先生の話を俺たちは聞く。

 黒板に書かれているのは分数の足し算。

「では、この問題、分かるやつは?」

「はいっ!」

 一人の在院生が背筋を伸ばして右手を垂直に挙げた。

 模範的挙手体勢。

 うちの在院生は、頭は悪いけどやる気のある連中が集まる。というか、やる気のある連中に改造させられる。

 手を挙げ、発言するのはこの学園では切に推奨される行為だ。

 なぜなら、ここではやる気がそのまま卒業に繋がるから。

 この学園は全員が足並み揃えて卒業するわけではない。

 みんなバラバラだ。

 短期収容者は早くに卒業し、長期収容者はなかなか卒業できない。 さらに教官からの〈評価〉が卒業日程の長短を左右するため、教官に気に入られない奴はいつまで経っても卒業できない。

 十二時。午前の教科教育が終わり、昼になった。昼食の時間だ。

 食堂のある生活棟に向かう在院生たち。さて、今日のメニューは? おっと、カレーだ。

 食堂の席は決まっていないが、ほとんどの連中が、自然といつも同じ場所に座る。

 席につくと皆、黙々と飯を食う。

 教官様の監視の目が行き届いているので、おいそれと在院生同士で世間話に興じることはない。

〈不正会話〉だと思われたら面倒なことになるからだ。

 ただ一人の男を除いて。


「府神」


 隣の席に座っていた在院生の男が、小声で話しかけてきた。


「おい、蓮沼。ひそひそと話しかけるな。逆に不自然に思われるだろ」


 教官のひとりが俺たちの席に目を光らせる。


「悪い。ちょっと訊きたいことがあって……今日は七々川さん、いないの? 授業にも出てないみたいだし」


 こいつが口に出したその女は、こいつ以上の〈不正会話〉の常習犯。

 七々川明里ななかわあかりの姿は、食堂には見当たらない。


「俺に訊いてどうすんだよ」

「府神、彼女と仲良いじゃん」

「犬猿の仲だっつの。どんな風評被害だ」

「照れるなって。モテないよ、そんなんじゃ」


 こいつにこの粉っぽいカレーを残らずぶっかけたろか。そんな衝動が一瞬だけ湧き起こった。


「あの雑魚チビなら、単独だよ。反省でぶちこまれた」


「なんだ。やっぱり知ってた。ていうか、相変わらず酷いね、そのアダ名」

「どういう命名をしようが俺の勝手だ。雑魚チビは縦から見ても横から見ても雑魚チビにしか見えないから雑魚チビなんだ。それ以上でもそれ以下でもない」


 嘔吐済みエチケット袋みたいな俺の性質を理解しているのか、蓮沼はただ苦笑いを浮かべて、俺の言葉を受け流した。


「七々川さん、また単独行きになっちゃったか。新藤さんが聞いたら、落ち込むだろうね」


 何気ない蓮沼の一言。新藤という名前。

 その名を聞いて、俺の脳裏に、七々川とは別の女の顔が思い浮かぶ。

 縁取られた記憶の写真の中で、あいつは常に混乱し、悲しんでいた。

 笑顔なんて、ほとんど見せてくれなかった。

 新藤智しんどうとも。あいつの名だ。


***


 午後の目標設定集会やSTT、職業補導も終わると、やっと寮に戻された。

 が、俺だけは、寮に帰らず、別の場所へと向かう。

 紅葉寮の一室――面接室の扉を叩いた。

 今日は、週に三回行われる個別面接の日。ノックを二回して扉を開ける。


「入ります!」


 入室する時は大声で「入ります!」と言わなければならない。

 礼儀作法は入院時にたっぷりと叩き込まれる。

 まあ、それを守るかどうかは、少年の心意気次第ではあるが。


「わかってるとは思いますが……ノック二回はトイレですよ。府神静馬君」


 スーツを着た端正な顔付きの女が、オフィスチェアに座っていた。

 俺の担任教官、南方可織みなかたかおり

 ポニーテールの髪を手櫛で梳きながら、慣れた様子で俺の内省ノートをめくっている。俺も長机を挟んだ向かい側の椅子に着座。目の前に来ると、南方の無駄に豊満な胸が視界に広がった。


「悪い。遅刻した」

「君が定刻通りに来たことなんて、ほとんどないでしょ」

「ほとんど? 一度もねーよ。んなことより……新藤の件、まだ広まってないらしいな」


 ジャブを飛ばした。南方の目が警戒の色を帯びる。


「誰かに話しましたか?」


 冷たい声。南方は規律と体裁から生まれた子どもだ。ルールを破った人間には容赦しない。


「言われると困るのか?」

「パニックを起こす子が、出て来る可能性がありますから」

「檻から出たら、どっかの遺族に刺される可能性もあるしな」

「やめなさい」


 ピシャリと、言葉を遮られる。

「もうこの話は終わり。せっかく良いニュースがあるんだから、そっちについて話しましょう」


 長机の上に置いてあったファイルを南方は手に取り、膝の上に広げる。

 中に挟んである用紙は、俺の成績評価票だ。


「府神君。今からあなたの成績について発表します」


 宣言して、南方教官が評価票を読み上げる。


「生活態度は『B』。責任感は『C』、学習態度の取り組みは『B』です。また、持続性・計画性も『B』――よって、府神君の総合評定は『B』に上がりました」


 ファイルをぱたんと閉じた。

 新藤に義理立てするために、授業中に腕がつるほど挙手していた成果が出ちまった。


「おめでとう。これであなたは『二級上』に進級です」


 はは。よりによって、今日、かよ。


「入院から三ヶ月。ようやく卒業への一歩を踏み出せましたね。進級式はやりましょうか?」

「バッジの色が黒から赤に変わるだけだろ? そんな格式張ったもの、いらねーよ」

「そう? 私としては、やっとここまで来れたかって感慨深いから、ぜひとも式をやりたいのだけど」


進級と卒業。そして、復讐。あれほど望んでいた物が今はひどく馬鹿馬鹿しく聞こえる。


「新藤は……何であんなことになった?」

 自然と、疑問が口をついて出た。

「更生したんだろ? あいつは」

「したわ。この学園でもっとも模範的な子だったもの」

「じゃあ、どうしてだ? よくわかんねえけど、私的報復は、この国では禁じられているはずだ」

「人間には感情があるから。被害者の遺族の方も、自制が効かなかったのよ」

「被害者ね。俺からすれば、あいつらの方が、よっぽど、新藤の加害者だ」

「ストップ。これ以上の議論は受け付けません。ことは刑事司法の判断に委ねられます。私たちができることは、一切ありません」


***


 寮の部屋に戻り、蓮沼に進級のことを伝えると、奴はまるで自分のことのように喜んだ。

「けど、進級できたにしては、浮かない顔してるね」

「南方にキレかけた」

「いつものことじゃないか。府神が教官と衝突するのは」

「……役割が違うから、新藤の件はどうしようもできない、とさ」

「自己保身に責任転嫁。隠蔽癖と縦割りで構成された大人の世界じゃ、至極正しい発言さ」

 わざとらしく蓮沼が肩をすくめる。相変わらず、どこか芝居がかっていて胡散臭い男だ。

だけど、嫌いではない。

 最初は慣れなかったけど、今はこいつと話していると、わけもなく落ち着く俺がいた。


***

 

 夜八時。消灯まであと一時間。俺は、書き終えた日記を机の上に置いて、立ち上がった。


「行くのかい?」

「ああ」

「せっかく進級できたのに、また退院期間が伸びちゃうね」

「悪くないな」


 消灯時間を過ぎると部屋の内側から開かなくなる仕掛けのドアノブに、手を掛ける。


「府神」


 呼び止められた。

「新藤さんに、よろしくね」


 蓮沼と、その背後にある格子付きの窓を見ながら、俺は頷いた。

 扉を開け、外に出る。夜にも関わらず、鶏どもはけたたましく鳴いている。


***


《コケコケー!》

「うるせー。首根っこねじ切って明日の晩餐に出すぞこのやろう」

「先輩、この子たち食用じゃないです!」


 寮のロビーで合流した七々川(一時間前にようやく単独から出てきた)と、教育棟の裏にある鶏小屋に来ていた。


 小屋の外では、ゴリラみたいな体格の宮田教官が俺たちを監視している。


「つうか、なんで決行日に単独にぶちこまれてんだよ、お前は」

「うー、新しく入院してきた子の出身地を訊いただけなのにー」

「案の定、不正会話をやらかしたのか……」

「だって、ひとりで寂しそうにしてたから……お友達になりたいなぁって思いまして」

「お友達を増やすための施設じゃねーから、ここ」

「先輩厳しい」

「お前の脇が甘すぎるんだよ」


《コケコケー》鶏どもが餌欲しさに、また鳴き出す。わずらわしい。


「はいはーい。今、餌皿取り替えますからねー。お鶏様もこっちおいで〜。みんなと一緒にご飯にしましょー」


 鶏の餌皿に新しい粉末の餌をいれた七々川が、小屋の奥にいる一際でかい鶏を招き寄せた。

 そのでかい鶏――七々川が『お鶏様』と呼んだ奴――が、他の鶏に混じって、遠慮がちに餌をつつく。


「そいつ、階段下から帰ってこれたのか?」

「はい。他の子がやっと、居場所、与えてくれたみたいです」


 鶏どもが餌を貪っている間、俺と七々川はデッキブラシで、小屋の床を強めにこする。

「なぁ、そんなに隅々まで磨かなくてもいいんじゃないか?」

「甘いですよ先輩。トモちんならばざっとこの倍は磨いておりました……それに、これから、明里たち、走りますし。しばらくはお世話できなくなるから、念入りに掃除しないと、です」


 言葉には重みがあった。俺の身も引き締まる。両者とも決意は固く、ためらいはない。

 八月の夜は暑い。

 真夜中の外気に晒されても、服を着こまなくていい。

 絶好の××日和。


***


 掃除を終えて、小屋を出て、七々川に問いかけた。 


「走れるか?」

「どこまでも!」


 そのまま、俺たちは、宮田教官のところに向かう。

 腕を組んだ仏頂面の宮田秀樹みやたひできが、教育棟の壁にもたれかかっていた。

 暗闇の中、ただでさえゴリラにしか見えないその顔が、ますますゴリラ化している。


「ヒデッキー、こんばんは!」

「何だ、挨拶してくれんのは、七々川だけか」

 黙っている俺に、宮田が顔を近づけた。

「ちっとは愛想よくしとけ」

「無理。生まれついての人殺しだし、俺。ご近所でも評判の無愛想で残忍な男だし、俺」

「ははは、自分で言っちゃ世話ないな」


 笑う宮田。やけに上機嫌だ。


「あんた、本当に、俺たちに協力してくれるのか?」


 まだ、このいかつい教官の心変わりに対して、俺は半信半疑だった。

「これも責任の取り方だ。おれは新藤の担任教官だからな。今、頑張って生きようとしているあいつが、お前らに会いたいなら、おれが止めてどうする」

「……喜んでくれ。今、俺の中で、あんたへの好感度が、ほんのちょっっっとだけ、上向いた」


 消灯時間が過ぎた。院内の照明が落ちる。

 自室に帰っておらず、延灯学習の申請もしていない俺たちは、この時点で懲罰対象者となる。


「さて。とは言ってもおれにも立場ってもんがある」


 神妙な顔つきで、宮田教官が組んでいた腕を解く。


「わかってるさ」


 俺は拳を構えた。


「府神、お前が喜ぶことを言ってやる。全力でいいぞ」

「マジか。俺、あんたへの恨みつらみ、てっぺんが見えねえくらい積み上がってるからな。そんなこと言われた日には、加減抜きで、ぶっこむぞ?」

「おう、天井知らずの全力全開、ぶっこんでこい。その方がこっちも、後で言い訳に困らねえ」


 次の瞬間、気の抜けた掛け声とともに、七々川が宮田の腰を掴んだ。


「えいっ」


 ――以下、茶番。


「お前ら逃げるなー」


 腰に巻き付いた七々川を振り払おうとする宮田。台詞は棒読みだった。


「先輩、明里に構わずお先にー」


 七々川も棒読みだった。


「お前を放っておけるかー」


 俺も棒読みだった。


 七々川を助けるべく、果敢にゴリラ(宮田)に立ち向かう俺。


「七々川、この手を離せー。単独行きだぞー」


 なおも(やる気のない動作で)七々川を振り払おうとする宮田。

俺は、左足を一歩前に出し、脇を締めた。


「来るか、府神」


「もう、後戻りはできないんだよ」


 最後の言葉だけは、本心だったから。


「俺の右手を喰らえ!」


 本気で殴った。演技は棒だが、暴力は本物だった。

 ――茶番終了。

 俺に横っ面を殴られ、吹き飛んだ宮田が教育棟の壁に激突し、そのまま、地面に倒れる。

 巨体がどしんという音を立ててひっくり返る姿は、まるで古い時代の怪獣映画のよう。


「わわわっ、やりすぎですよ先輩!」

「いいじゃねーか。ここまでやっときゃ、こいつの体裁は守られるだろ」


 ここのジャージ姿では塀の外じゃ目立つ。

 外に出た後服を買うため、伸びた宮田教官のスーツの内ポケットに手を突っ込み、財布を取った。


「ああー。私達、これでいくつ罪を重ねたんでしょうか」


 七々川が、おろろと嘆いた。


「借りるだけだ。出院して仕事でもはじめたら、倍にして返す」


 グラウンドの向こうにある金網で作られた塀を見据える。


「今なら、後戻りできるぞ?」


 即座に、七々川は首を横に振った。


「明里、トモちんに会いたいです。それが、今の明里の全部です」

「……なら、怪我だけはすんな。俺が落ち込む」

「はい! 先輩を落ち込ませないように、頑張ります!」


 両名、息を合わせ――同時に、駆けた。

 誰かが来る前に。この不自由で、温かい檻から抜け出すために。

 二〇〇メートルを走破し、飛んだ。

 四メートル以上の塀によじ登る。


「きゃっ」

「七々川!」


 金網の塀から落ちそうな彼女の手を掴んだ。小さな左手が、俺の分厚い右手におさまる。


「もうすぐだ! 気合入れろ!」

「は、はい! 明里、ふぁいとぉ!」


 七々川を引き上げ、金網を乗り越える。

 そして、外に着地。

 外界には、緩やかな傾斜の丘陵が続いている。

 遠くには深々と木々が生い茂った山が連なる。

 夜なので、丘陵も、山も黒色に染められていた。


「やった! 出られました!」

「まだだ! 遠くまで、できるだけ遠くまで走るぞ!」

 反社会的な冒険が始まる。


 結論から言おう――


 二〇〇七年八月六日 午後九時七分

 俺たちは、少年院、一松学園を脱走した。


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