第5章 帰還
――フラグタルの、第肆章からの続きです。――
《第伍章》
【人歴4351年】
――3月1日――
露往霜来、鳥飛兎走、烏兎怱怱、一寸光陰、光陰流水、光陰流転、光陰如箭、光陰矢の如しに刻が過ぎた。
気が付いてみると、真は、ルフの所で一冬を越していた。
そして、春の季節が巡ってきた初春の頃である。
――――『会者定離。』
出会いがあればどうであれ、必ず別れの時がくる。――――
――いよいよ真は、故郷の倭国へと帰還をする決意をして、旅立ちの時となった。
真は、旅立ちの前、ルフに挨拶をした。
「この半年間、大変、お世話になりました。ルフ様。」
「ご奉仕、重畳。
good job!!
本当にご苦労様でした。真。」
「はい。ルフ様。ありがとうございました。」
ルフは、何時になく、万感の思いを込めて言った。
「これで『サヨウナラ。』、とは言わないわ。真。
これは私からのあなたへのお礼よ。」
真は、ルフから地図や、羅針盤や、中剣のファルシオンや、エルフの鎧や、それに、銘槍、『グングニル』の槍と、名馬、『スレイプニル』と、驢馬一頭と、それと、充分な水と食糧等を受け取った。
「…………またね。真。
こちらこそ……今まで本当にありがとう。
道に迷わない様に道中、気を付けてよね。」
「はい。ルフ様。
では……また何時か。」
「バイバイ。ボンボヤージュ!!
see you again!!!!
――真っ!! good lack!!!! 」
「ルフ様こそ、good lack! です!! 」
ルフは、名残惜しそうにして手を振った。
そして真も、名残惜しくも馬に跨がり、倭国へとその方向を東雲に向けて、意気洋々と発った。
真の、英姿颯爽と逞しくなった後ろ姿が段々と、地平線の彼方に向かって小さくなってゆき、すると軈て消えた。
――4月20日――
――――雲行雨施、雨絲風片。雨絲煙柳。――――
しとしとと、糸の様に細やかなる春雨と、薫風漂う、微風に煙る佇まいの雨奇晴好、春の景色の倭国であった。
雅に、
『十日の雨の糸、風片の裏、濃春の煙景は残秋に似たり。』
である。
紆余曲折を経て真は、倭国の都であり城塞都市の、『漢東』にある、自宅の前に着いた。
そして真は、一つ深呼吸をすると、感慨深げに家の扉を開いた。
「た、ただいま帰りました!! 」
――すると、真の妹である、『姫』、がいた。
「や、やあ。姫。ただいま。」
姫は、真の姿を見てビックリ仰天、一瞬だけ固まり、目をまん丸にして、いきなり大声をあげた。
「お、お母さーん!!!! あ、兄貴がっ!! 兄貴が!! 帰ってきたよーっ!! し、真兄貴が生きてたよーっ!! お母さーんっ!!!! 」
――――「…………まったく……………………。
一年近くも前に戦に出て行ったっきり、消息が知れずのなんの音沙汰がないんもんで、てっきり、朝国で討ち死にをしたんじゃあないかと母さん、心配をしたよ。」
真の母、『徳』は、溜め息混じりに、だがしかしとても安堵をした表情を浮かべて言った。
そして真の妹の姫も――――
――――「っ本当にっ!! っ本っ当っだよっ!! 兄貴っ!!
政さんだけが帰ってきた以来、お母さんと私は毎日毎日、毎時間もいつもいつも、真兄貴の事をずっとずっと心配をしていたんだからねっ!!!!
――もうっ!! お父さんみたく、行方不明にならないでよねっ!!!! 」
真の母は、涙を流していた。
「……す、すまんっ!!!! 本当にすいませんでした。
お袋。姫。」
真は只只、頭を下げて謝り、そして母と姫に、事の次第と事情の説明をした。
――「ったく、兄貴は何ヵ月間もエルフ族の女の娘と、なーにをしていたんだか⁉
……恋さんにすっごい、失礼だぞぉーっ⁉ 」
「べっ!! 別にっ! 疚しい事なんか何一つ全っ然っ!! 残念ながら全く無いからなっ!!!! 姫っ!! 」
「…………残、念、な、が、ら? 」
「――うっ!! うるさいっ!!!! 姫っ!!
だ、だから!! そのエルフの女は女が好きなんだよっ!!
っややっこしい!!!! 」
真は殊更に、ルフとの事柄を逐一事細かに、妹の姫には説明をした。
因みに、『恋』、とは、政の姉であり、真の年上の彼女でもある。
「……ったく、わかっているわよ! 兄貴っ!!
――――でも、そのルフさんに、
一度、会ってみたいなぁー!! 」
「――っあーっ!!!! それはやめとけっ!! 姫っ!!!! 」
真の妹である、『姫』、の性格は、兄の真よりも、さばさばとしていて、活発、快活、海闊天空、雲烟過眼、天真爛漫、所謂、お転婆っ娘の、19歳である。
見かけは母親譲りで、顔は丸顔。
髪の毛は紅緋色の赤毛で、後ろで2つに分けて縛っている。
ツインテールである。
身長は、150cm~155cm位の、とても小柄な体型で、特技は魔法で、『魔女』、である。
そして一応、天然、というべきか、天性の、天賦の才というべき格闘能力までも兼ね備えている。
『魔女っ娘』、といえばとっても響きが萌えるのであるがしかし、巷では姫は、その魔力の苛烈さから、『魔法の鬼』、『赤鬼』、『赤い悪魔』、の異名で知れ渡っていた。
姫の主な得物は、打撃系の、棍棒や、ロッドや、杖、モーニングスター等である。
どうやら、姫の魔法能力は母親譲りであり、そして、真の剣術は父親譲りの様なのである。
――――真は、自宅で久し振りの母親の手料理を食べ終わると、妹の姫から倭国を取り巻く詳しい現在の情勢を聞いた。
倭国は現在、女王、『火巫女』が治めている。
倭国は、神聖ガリアニア帝国の隷属国となる前までは、火巫女は王の位では無く、帝の位に就いていた。
だがしかし、神聖ガリアニア帝国の隷属国となって以来、火巫女は帝の地位を剥奪され、王の位に格下げをさせられてしまった。
『帝』・『皇帝』の位を名乗る事が出来るのはこの世では唯一人、神聖ガリアニア帝国の『聖帝』、『エピデスクロス三世』のみである。
倭国は、去年の朝国と神聖ガリアニア帝国連合軍との戦争の敗戦以来、何とかギリギリの外交努力によって、神聖ガリアニア帝国に対して、多大なる貢物や、人質等を差し出す事で何とか首の皮一枚で、存続をしているという状況下であった。
そして、真の親友の政はというと、一年前の夏の朝国との戦からの数少ない帰還者として何とか無事に倭国に帰ってきて、朝国と神聖ガリアニア帝国連合軍との詳しい戦いの状況を、真の母親と妹の姫に知らせて、真の銘刀、『虎鉄號』を真の家族に届けにきてくれたというのである。
政と、その姉でもあり真の彼女でもある恋の家柄は、女王、火巫女の遠いい血筋の縁者なのであり、高貴な家柄なのである。
それで政は直々に、女王、火巫女にも、朝国と神聖ガリアニア帝国連合軍との戦の状況の報告をしたのであって、そしてそれからは、政と姉の恋は、女王、火巫女の、近衛兵の部隊に所属をして、女王の身辺警護の職に就いているのであった。
あと、そして、隣国の朝国の情勢なのであるが、此方もかなり状況が変化をした様なのである。
暗愚魯鈍な朝国の王に対して、なんと、軍師であり、宰相でもある、阿衡の佐、帷幄の臣の、あの、諸馬孔達が兵乱を起こして、軍の実権を完全にその手中へと簒奪をすると、朝国王と、その血脈、一族郎党や、関係者諸々を全員処刑、根絶やしにして、更には、朝国王に与した街々、村々を徹底的に全て焼き討ち、大虐殺、破壊をして、禍根の種、反抗の種を一つ残らずに潰すという、恐怖の血の大粛清の嵐が朝国に巻き起こったのである。
孔達による、冷酷、冷徹、冷淡、冷断、冷血、鉄血、残忍、残酷、残虐な鉄拳制裁の処断によって、血という血が流されて、曝れ頭の山、衣薪の鬼、死屍累々の山が築かれた。
その後、朝国王となり代わった孔達なのだが、しかし直ぐ様、その王位を神聖ガリアニア帝国にへと返上をして、そして孔達は帝国より総督の地位と、新たなる領地を与えられて、旧朝国領は帝国の直轄地となり、その様な経緯によって、朝国は滅んだのである。
――「そうだ! 俺は此れから直ぐにでも政と恋に会いに行くよ!! 」
真は、そう妹の姫に言い残すと、ルフから餞別に頂いた銘槍、『グングニル』の槍を持って早速、政と恋が住む家へと向かった。
――――真は、政と恋の家に向かう道の途中に、雨がさやさやと降る街中で、恋人である恋と、ぱったりと、出合った。――――
――「あっ!! 」――
――――「え? し、真⁉ 」
「恋っ!! 」
――――「!! 」――――
「――――今から恋の家に行く所だったんだ! 」
――――「真!!
真! 無事だったの!!!! 」
雨の中、恋は傘を投げ出して駆け寄り、真の手をその両手で、ギュッと、包み込んだ。
真の手から、ぽとり、と傘が地面に落ちた。
恋はそれ以上、何も言わずに、只只、涙ぐんでいた。
――冷たい雨の中、恋の手はとても暖かかった。――
真の親友の政の姉でもあり、真の年上の彼女でもある恋の家は、倭国の女王、火巫女の家系に繋がる高貴なる血統の家柄であり、そして恋は、回復術師なのである。
恋の性格は、至って真面目で、おしとやかであり、顔立ちは、明眸皓歯にて、とても美しく整っており、目はぱっちり二重瞼で、眉は遠山の眉の如くであり、睫毛が長い。
髪の毛は腰の辺りまでの長さのあるストレートのロングヘアの黒墨色である。
体型は、すらりと、細身で脚が長くて、身長は160cm前後。
恋のファッションセンスは、衣香襟影。
萌え伊達眼鏡なのか、其れとも、本気眼鏡なのか、一体どっちなのかは未だもって真にも不明なのであるのだが、恋はたまに、眼鏡をかけている時がある。
髪の毛のスタイルは、そのまま、ストレートのロングヘアスタイルとして下げている時もあれば、カチューシャをしたり、ポニーテールにしたりしてアップをしたり、三つ編みにしている時もある。
そして恋の主な服装は、こちらもかなり萌え的なとても可愛らしい、ふりふりのフリルや凝ったレースのデザインのある、純白色や桃色等のフェミニンな服装や、黒色のゴシック調の服装で、ビシッと、決めている時もあるのである。
恋が得意とする得物は主に、飛び道具系の弓や、ボウガンや、銃火器類である。
幼い時は、真と姫の兄妹と、恋と政の姉弟達の4人で、探険ごっこや、冒険ごっこや、雑魚モンスター退治や、秘密基地作り等をしてよく遊んだ。
それは差し詰め、何時も真が勇者の役をやって、政は戦士か騎士の役で、恋は僧侶の役で、姫は魔法使いの役、という王道中の王道のパーティーを編成して遊び、そしてそれがそのまま、皆大人となった、という感じなのである。
それと、勉学も、4人共々一緒の学校、一緒の私塾にも通った仲でもある。
――――雨の中、暫くの間、手を繋いでいたお互いは、傘を拾った。
そして、真と恋は、近くにある家の縁側の屋根の下へと移動をした。
――――雨の街の通りにはこの二人以外、誰の姿も見え無くて、家の屋根の縁や、雨樋、鎖樋を伝って落ちる雫石の雨音が、密やかに、ぽつぽつと、風景にとけこんでいた。――――
――そんな中、真は、朝国での戦いの経緯や、エルフ族のルフとの出来事等を恋に話した。
――――「そう。
そうだったんだ。
――でも何よりも真が無事に帰ってきて本当によかった。」
「心配をかけてしまってゴメン。」
「政だけが真の刀を持って戦から帰ってきた時は一瞬、ショックだったけれども――――でも私は真は必ず生きているって、信じていたわ。」
「――俺も――――恋や政や、そして家族がいたからこそ――――
――希望があったからこそ、諦めないで帰ってこられたんだと思うよ。」
「――うん。」
…………そして恋は、何かを思い出したかの様子で、少し慌てて言った。
「そうだ! 真!
実は今、国はものすごく危機的状況なの!! 」
「え⁉ どんな感じで? 」
「遂にとうとう、もう直ぐに帝国軍がこの国にまで攻め寄せてくるのよ!! 」
「ええっ!! 本当っ⁉ 帝国軍、自らがっ⁉ 」
「――そうなのよ。
何でも、あの、朝国を滅ぼした、孔達っていう総督が聖帝に、帷幄上奏をして、それで聖帝自らが指揮を採って、この東方の地域までにも帝国の力を知ら示すらしいみたいなのよ。」
「……そうか。
ガリアニア帝国の聖帝直々に、自らが来るのか!!
それでその、孔達も来るのか⁉ 」
「――ええ。総督の孔達も指揮を採るみたいだそうよ。」
「……………………。」 (――――っ孔達めっ!!!! )
――「それで私と政は、火巫女様の近衛兵部隊に所属をしていて、これから私はお城へ向かう途中だったの。」
「……成る程。
――で、政は⁉ 」
「あ、政は既に先にお城へ行ったわ。」
「…………そうか……。
恋。ではこれを、政に渡してくれ! 」
真は、一振りの槍を、恋に託した。
――「真。これは? 」
「ああ、それがエルフ族のルフから餞別にと、頂いた、『グングニル』の槍だよ。
それは政に渡してくれ。」
「――――こんな大切な槍、本当に政に渡していいの? 真。」
「俺がその、グングニルの槍を持っていてもどうせ宝の持ち腐れだから、それは槍名人の政が使うのが相応しいよ。」
――――「うん。わかったわ。真。――――
――――本当はまだゆっくりと、真と一緒に居たいのだけれども。」――――
「――わかっているよ。恋。」
――――「……じゃあ、私。
もうそろそろ、お城に行くね。」
「じゃあ。」
そして恋は、依々恋々ながらも、傘をさして急ぎ足で、女王、火巫女がいる城へと向かって行った。
――5月8日――
神聖ガリアニア帝国軍は、倭国の領土内に、侵略を開始していた。
そして神聖ガリアニア帝国軍は次々と、倭国の城や街々を落としていって、降伏は一切認めずに、手当たり次第に、倭国の将兵や民達を屠り、帝国軍から逃れた倭国の難民達は各地に散らばり、流出をしていた。
そして遂に神聖ガリアニア帝国軍は倭国の都、城塞都市『漢東』の間近にまで迫っていた。
この、倭国の首都、漢東の人口、横目の民は約20万人程。
その内、軍役に就ける兵力は凡そ、5万人程度といった所である。
それに対して、神聖ガリアニア帝国の兵力はというと、聖帝エピデスクロス三世や、総督の孔達らが指揮を採る主力の、帝国軍の本隊はまだ、倭国の領内には到着はしてはいないものの、神聖ガリアニア帝国軍の先遣部隊だけでも既に、倭国軍の10倍の、50万という大兵力で攻め寄せて来ているのである。
かの、古の中之国の兵法家の、孫子の兵法によると――
『小敵の堅は、大敵の擒なり。』 (謀攻篇)
――所謂――
十倍の兵力差ならば包囲。
五倍の兵力差ならば攻撃。
二倍の兵力差ならば分断。
互角の兵力ならば勇戦。
劣勢ならば退却。
勝算が無ければ戦わず。
の、構えで帝国軍は攻め寄せててきた。
――それに対して、倭国の方側はというと…………。
……残念ながら、今の倭国には、他国からの援軍の望みは全然無い。
そして、神聖ガリアニア帝国は、降伏も全く受け入れる気はさらさら無くて、倭国を完全に滅ぼすつもりでいる。
だがしかし、此のまま手をこ招いて何もせずに只、座して滅亡をするか?
其れとも、一縷の希望みすらさえも無いのかも知れない状況なのだが、せめて、最期に誇りを見せて一矢報い、戦うのか?
の、選択で苦渋の決断ながら女王火巫女や家臣達は、倭国の名誉、誉れと、信念をかけて戦う道を選んだ。
――――そして真は、女王火巫女の親戚であり、火巫女の親衛隊でもある、恋と政を介して、女王火巫女に謁見をする事が許されて、衣冠束帯をただし、直々に女王に具申をする事となった。
――「恐れながら、女王陛下に申し上げたき事がございます。」
「おお。
そなたが政と共に、あの一年前の戦で生きて帰ってきた、真とやらか。
遠慮をするでない。
そなたの作戦とやらを、わらわに申してみよ。」
女王火巫女の左右には、親衛隊の、恋と、政が立っていた。
真は、女王火巫女に、続けて申し述べた。
「――はは。
――――我が方は、帝国軍の兵力に比べますると、あまりにも寡兵でございます。
――其れに恐らく帝国軍は、我等、難攻不落の漢東の街の城壁を、先ずは包囲して、兵糧攻めを試みてくるかと存じます。
其れにまともに正面から当たるのは恐れながら、愚の骨頂かと、存じ上げます。」
――――「…………ならば、真よ。どうするのじゃ? 」
「――は。
――――孫子曰く――――
『その無備を攻め、その不意に出づ。』 (始計篇)
『虞を以って不虞を待つ者は勝つ。』 (謀攻篇)
『善く守る者は九地の下に蔵れ、善く攻むる者は九天の上に動く。』 (軍形篇)
『善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以って敵の勝つべきを待つ。』 (軍形篇)
『攻めて必ず取るは、その守らざる所を攻むればなり。』 (虚実篇)
『人の及ばざるに乗じ、慮らざるの道に由り、その戒めざる所を攻むるなり。』 (九地篇)
『善く兵を用うる者は、譬えば率然の如し。』 (九地篇)
『これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く。』 (九地篇)――――
――――等とあります様に、何しろ、相手方は大軍でありますので恐らくは、余裕をみせて、其の数に驕り、まずは我が方を包囲をする構えかと存じますので、此処で我々は、其処につけこみまして、敵の手薄な所を衝く事、敵の意表を衝く事――――――即ち、奇襲作戦を試みる事、ゲリラ戦を展開するべきかと、存じ申し上げます。」
――「――成る程、そうで、あるか。」
――――「はい。
それで――――聖帝、エピデスクロスの本隊が到着をするまで、何とか、持ちこたえて見せます!! 」
「何故、帝国軍の本隊を待つのじゃ? 」
――――「…………自分には、究極の奥の手、の考えがございます! 」
「……『究極の奥の手』――とは? 」
真は、声をヒソめて言った。
――――「…………隙あらば――――聖帝を……『暗殺』、で、ございます。」
――「………………そうか。――そうで、あるか…………。
――――それでは、そなたに一部隊を任す。
そなたは、そなたの思うがままに部隊を率いて作戦を行うがよいぞ。」
「御意っ!! 」
真は一年前の、対朝国軍と帝国軍連合戦での、数少ない生き残りの一人であり、一応、それが実績、経験となり、この度は女王火巫女より直々に真は、倭国軍の、遊撃部隊隊長に大抜擢の任命をされた。
その遊撃部隊の隊名は――――
――王に勝利をもたらされるといわれる金色の鵄、『金鵄』――
――――『金鵄隊』、の部隊名を、与えられた。
女王火巫女の横にいる恋は、ぱっちりと、真にウインクを送り、政はコクリと、頷いていた。
――――そして、女王火巫女は最後に言った。
「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。
察せざるべからず。
…………委曲求全。
くれぐれも、可惜身命にな。」
――第陸章へと続く――