第4章 エルフのルフ
――フラグタルの、第參章からの続きです。――
《第肆章》
【人歴4350年】
――7月27日――
……真は目覚めた。
倭国と朝国とそして、神聖ガリアニア帝国との激戦から三日の日にちが過ぎていた。
…………真は何故だか生きていた。
――三日前の深夜、あの時確かに真は、朝国の軍師、諸馬孔達に、剣で胸を貫かれたはずである。
なのに、まるで何事も無かったかのように、真は、ピンピンとして平気に生きていた。
――(……あれ⁉ 俺は、一巻の終わりじゃあ無かったのか……? )――
真は上着を脱いで、自分の身体をじっくりと確かめてみた。
そういえば、真の身体中には、いつの頃からか、昔っから謎の生傷が複数箇所、付いているのであった。
――そして真は改めて、まじまじと自分の胸の部分を調べてみると、気のせいだか、なんだかやはり、新しい傷痕が一つ、増えているような感じがした。
…………とりあえず疑問はさて置いておき、真はまた服を着て、周辺を見渡してみた。
――――白みがかった薄い光りの太陽が、林の疎らな樹々の間の地平線の辺りから、顔を覗かしていた。空気も少しだけ涼しい。
今の時刻は、はっきりとはいえないのだが、どうやら朝の様子であった。
地面には白い野の花々が粗方、踏み荒らされていて萎れている感じでいて、そして、朝国軍の陣の幕屋などの類いはもう全く無くて撤収をされていて、それと、幾つかの倭国軍の兵士達の死体が野晒しに散乱していて、蠅が集っており、腐臭がしていた。
――――(そうだ。のんびりと、こうしてはおられない。
故郷の倭国の状況がとても気になる。それに、親友の政もはたして無事なのだろうか? 渭樹紅雲の気持ちだ。
それとお袋や、妹の『姫』や、恋人の『恋』達も、きっと俺を心配しているはずだ。急がなくては!! )
「……あ、あれ? だけども、倭国は一体どっちの方角なんだ⁉ 」
「…………ま。只こうしているのもなんなんで、とりあえずは東の方向へと向かうとするか……。」
真は東の空に浮かぶ、暁光を目指してまっしぐらに歩を進めた。
――――そして、数時間の刻が経ち、真夏の太陽が天空の真上に差し掛かると、真はとうとう遂に、方向感覚を失ってしまって、一体どっちが東の方角なのか全然わからなくなってしまい、迷い人となってしまった。
が、しかし、それでも真は全く諦める事が無く、たゆまず歩みを止めずに、無闇ではあるものの、前進を、前進を続けた。
疲れては一時休憩をし、そして進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み。疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をし、進み、疲れては一時休憩をしてからの進んでの、嫌になるほどの、ひたすらその繰り返しだった。
真は、幾つものの山岳を越え、幾つものの渓谷を走破し、幾つものの河を渡り、雲烟万里を越えて、とにかくとにかく、『故郷に帰りたい』、という一心でもってして、がむしゃらに歩んでいた。
道中、真は空腹を覚えると、山や野の、木の実や果実等を啄み、そして、どこの誰かの畑に侵入して、畑の野菜や果物を、こっそりと拝借をしたりしながら腹を満たし、山の湧水や清流で喉を潤しながら、なんとか命を繋ぎ止めて、石を枕にし、河の水で口を漱ぎ、臥薪嘗胆の苦渋ではないが、雨露霜雪な野宿生活をしながら旅をしていた。
――残暑がまだまだとても厳しい、8月24日の事である。――
もうすぐで夕闇が迫ってくる刻限、放浪の途中、真は、とある谷間で、モンスターの、ゴブリン族の野盗の一団の野営地を発見した。
真は、崖の上からその、ゴブリンの盗賊団の野営地の様子を窺った。
――――暫くの間、ゴブリンの野営地のゴブリン達の一挙手一投足を観察した所、観た限りではゴブリン達の数は、全部で8匹であった。真は、少しだけ思案すると、その崖の上で、ゴブリン達が寝静まるのを待った。
――朧月夜である――
およそ、2~3時間ほどであっただろうか。
8匹のゴブリンの盗賊団達は、焚き火を囲みながらドンチャン騒ぎの酒宴を開いていて、そしてやがて、宴会が終わると、ゴブリン達は解散して、へべれけ状態で酔っ払いながら、それぞれの幕屋へと入って行った。
ゴブリン達が酔っ払っている今が好機到来である。
――すると真は、密かに夜陰に紛れ、崖を降りてゴブリンの野営地へと近付き、まずは盗賊団の頭領と思われる幕屋の中へと、息を殺しながら、そろりそろりと、抜き足差し足で侵入を果たしたのだがしかし、真は緊張のあまりに抜かってしまい、思わず物音を立ててしまって、ゴブリンの頭領は目を覚ましてしまったのであるが、真はゴブリンに声を出されないように、その頭領ゴブリンの首を絞めて、取っ組み合いと相成った。
頭領ゴブリンはかなり必死になって、真を蹴ったり肘打ちをしたりして抵抗を試みたのだが、真も真で物凄く必死に片方の手で、真鍮製の燭台を掴み、それでもってして渾身の力を込めて、頭領ゴブリンの頭部を思いっきり殴打、撲殺をして息の根を止めた。
――取り敢えずは一匹、ゴブリンを始末した。
そして真は、頭領ゴブリンの腰に差してある、短剣、『グラディウス』を奪い盗った。
――「……なんだか、俺の方がまるで盗賊みたいだな………………。」
グラディウスを手に入れた真は、何か後ろめたさやら、罪悪感やら、自己嫌悪感とやらをも感じつつも、他のゴブリン達に気付かれないようにまるで暗殺者のごとく、隠密に事をなして、あと残りの7匹のゴブリン達の幕屋にも一つ一つ侵入をして行き、泥酔しているゴブリン達を一匹ずつ寝首を掻き、始末して片付けていった。
――が、しかし、最後に始末をしたゴブリンの幕屋には、まだ幼いゴブリンの子供が一匹居たのであった。
その子供のゴブリンは恐怖で、ガタガタと体を震わせていて、そして真を見る眼は涙で潤ませている。
――(……っくっ! 駄目だ。幾らモンスターといえども、流石に子供に手をかけるなどという事は俺には出来ない!!
……しかも恐らくは、俺はこの子供のゴブリンの親を殺めてしまったかと思うと、とても居たたまれない気持ちで本当に申し訳なく思う………………。)
−−−−真は、子供のゴブリンに水と食料を持たせて逃がしてやった。
しかし、そのゴブリンの子供は去り際に、キリッと、真の事を睨んで激しい憎悪の表情を見せ消えて行った。
「………………………………。」
8匹のゴブリンの盗賊団を全滅させた真も、幾日分かの食料と、水が入った皮袋を手に入れて、一晩を野営地で過ごしてから、そしてまた旅立った。
――――それから10日間ほどが過ぎた、9月4日の事である――――
――真は、延々と果てしなく広がる荒涼とした荒野をあてどもなく、さ迷っていた。
周りは360度、どこを向いても地平線まで只ひたすら、ゴツゴツとした岩石や砂だらけで緑などは全く無くて、只々、殺風景な景色の連続だった。
そして真はここにきてとうとう遂に、食料も水も尽き果ててしまった。
――『悪銭身に付かず。』――
別に真は、盗賊から食料や水などを奪ったのであって、果たしてこの言葉は適切では無いのかも知れないのだが、しかし、やはりなんだか悪い事をして得たような気がする物はどうであれ、すぐになんか、消費して無くなってしまうような感じがするのである。
……周辺を見渡すとやはり、食べられそうになるものは全然無いどころか、水源すらさえも全く見付かりそうにもない。飢え渇き、とてもひもじい気持ちになった真は、とある話を思い出していた。
――かの古の、中之国の三國志時代の君主、『曹 孟徳』の逸話である。
――――とある戦の行軍での出来事である。
曹操が率いる軍は、途中で水不足となってしまった。そして曹操の軍の兵卒達は喉の渇きを訴えて、曹操軍の士気が下がりそうになった。
そこで曹操は一考をして、皆に向かって言った。
「お~い! 者どもっ!! この先に、梅林があるぞ~っ!!! 」
――すると兵卒達は、その梅林の、酸っぱい梅の実を想い浮かべると、口の中に唾液が出てきて渇きをしのいで、それでもってして曹操は軍の士気を上げたそうな。
(…………そんな馬鹿な。俺は『梅の実』はおろか、『檸檬』だらけを想い浮かべても、ちっとも喉の渇きは変わらないぞ……………………。)
――「っつーか俺って、只たんに、想像力が無いのかな⁉ 」
「……嗚呼、凄く喉が渇いて渇いて仕方がない…………。」
「……目眩がする…………。
………………もう駄目か…………………………。」
意識が朦朧としてきた真に、とある光景が視界に入ってきた。
この広大な荒野に、ポツンと、一軒の家が建っていたのだ。しかもその家の周り一帯にだけが、何故だか新緑に覆われていて、立派な畑や井戸までもあるではないか。
一瞬、真は、それは蜃気楼かと、眼を疑ったのだけれども、だがそれは現実であった。早速、真はまだ疑いつつ、恐る恐るではあるものの、藁にもすがるおもいで、まずは丁重に、その家の玄関の木製の扉をノックした。
……コンコン。
「す、すいませーん。」
「……………………。」
……応答が無い。
真は再びノックした。
コンコンッ! コンコンッ!!
「あのうー! すいませーんっ!!! 」
「………………………………。」
−−−−するとその家の中から、かなぎり声が聞こえてきた。
――「……はあっ⁉ 一体誰なのよっ!!!!!!! 」
そんな声と共に、その家の扉が勢いよく開いた。
「――っるっさいわね~っ!!!! 」
扉が開かれた真の目の前には、見目麗しい『エルフ族』の女性が姿を現した。
そこは、とある一人のエルフ族の女性が住んでいる民家であった。
するとそのエルフ族の女性はとても機嫌が悪そうに言った。
「なんであなたはこんな所を、ほっつき歩いていたのようっ⁉ 」
真は少々、その剣幕に押され気味に、
「……あや、いや、その…………。なんでと言われても、それには訳がありまして…………。
…………え……と……な、何故、あなたの方こそ、こ、こんな所に住んでいるんです、で、ですか? 」
――「はあっ⁉ 質問をしているのは私の方じゃないっ!! 挨拶も無く、無礼千万、生意気な人間ねっ!!! 」
「……は、はあ。……す、すいません…………。」
−−−−−−そして真は、粗方の事情を説明した。
そのエルフ族の女性は冷ややかな視線を真に向けて、
「…………ったく、あなた……真は、本当に間抜けな人間代表ねっ!! 」
「……え? 俺、間抜け代表ですかっ⁉ 」
「――――だってさーあ、馬鹿みたいな戦に負けて、馬鹿みたいに殺されかけて、馬鹿みたいに生きていて、馬鹿みたいに方向音痴でいて、馬鹿みたいに盗賊に盗賊をして、馬鹿みたいに私の家にまで来るなんて…………っ本っ当に馬鹿みたいっ!!!
――って言うか、本当に真の馬鹿ねっ!! その名前の通り、真は真の馬鹿ねっ!!! 」
「…………馬鹿、馬鹿って、そ、そんなに貶さないで……下さい………………。」
そしてエルフ族の女性は更に、刺すような鋭い視線を真に投げて言った。
「――――もしも、私の家にノックもせずに入って来ていたら、あんたをぶっ殺していた所よっ! 」 (ギラリッ!!! )
(……ひっ!! こ、恐いっ!!!! )
――――訊くとそのエルフ族の女性の名前は、『ルフ』といった。
「……これでも、ルフ、という、エルフ族の偉大な名前を受け継いでいるんですからねっ!! 」 (エへンッ!!! )
と、ルフは得意満々、自慢げに言い放った。
ルフの容姿は、しごく典型的なエルフ族の姿である。
耳は細長くとんがっていて、肌は色白で、瞳の色は蒼色で、髪の毛は長くて金色で――――しかし身長は、エルフ族にしては低くて、160cmくらいである。ルフの見た目は、真よりも若くて、二十歳前後に見えるのだがしかし、実の年齢は、数百歳にもなるらしいのだ。
「これでも、私のほうが真よりも、スッゴい先輩なんですからねっ!! そうれっ! 私を敬いなさいっ!! ホラッ!!! そらっ!! 」 (エへンッ!!! )
「……………………………………。」
「…………なによっ!! 真っ! ご主人様のこの私に何か文句でもあるのっ⁉ ぶっ殺すわよっ⁉ 」 (エへンッ!!! )
「……い、いえっ! いえっ! 無いです!! 無いです!! ルフ様っ!!! 」 (土下座! )(…………あ~あ!! なんか面倒クセ~ッ! エルフだな〜っ!! ――っもうっ!!! )
「――っはあっ⁉ 何か気のせいだか、なんだか心の声が聞こえたわよっ!!! これでも私は、なん百年も生きているんですからねっ!! いい事⁉ 本当にあなた、わかっているのっ⁉ 」 (ギラリッ!!! )
「――いやっ!!す、すいませんっ!!! ルフ様っ!! 」 (平身低頭! )
「……って、謝る事は、やはり真は、心の中でこの私を蔑んだわねっ!! 貶めたわねっ!! 軽んじたわねっ!! ――しかも私の年齢が数百歳と聞いて、ババアと思ったわねっ!!!
…………じわじわと、なぶり殺すわよっ⁉ 」 (ギラリッ!!! )
「ルフ様っ! ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!! 本っ当にごめんなさいっ!!! ルフ様っ!! 」(っあ~っ!! もうっ! 凄い面倒臭いばかりか、とんだ被害妄想までも持っていて、ややこしい奴だな~っ!! )
「――っんーっ⁉ 」 (ギラリッ!!! )
(ひ、ヒエ〜ッ!!!!! )
…………そして真は、乞うように言った。
「………………あ、あのー。す、すいません……。
ぼ、僕! 今、も、物凄く、喉が渇いて渇いて、死にそうなんですっ!!!
……ご、ごめんなさいっ!! 」 (恐縮! )
「……ああ、そうね。そうだったわね。ゴメンナサイね。
――今、飲み物をお出しするわ。少し待っていてね。」
(……な、なんだ。意外と話しのわかる奴なんだな。) (ホッ。)
ルフは真に、三杯のハーブ茶を順番ずつ出した。
一杯目は、手早く喉を潤す為に、冷たいお茶を出し、二杯目は少し温かいお茶を出し、そして三杯目は、お茶の味わいをゆっくりと愉しんでもらう為に、熱いお茶を真に出した。
真はお茶を啜りながら、かの古の、倭国の戦国時代の武将、石田三成の三杯の茶の逸話を思い出した。
(――なんだ。ルフは意外と気がきくいい奴じゃないか。) (恐悦至極。)
ルフは、茶菓子を出しながら言った。
「……ちなみに、ここの地名は、『ランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィンドロブル・ランティシオゴゴゴホ』っていうのよ。」 (エへンッ!!! )
「ながっ!! 」(――なっ⁉ 随分と長い地名だな。
……う〜ん。…………やはり、いちいちと、ルフの、『エへンッ!!! 』には正直、ちとウザく感じる…………。)
「--はあっ⁉ 真っ!! 何かこの私に文句、不満、いちゃもん、訴え、反論、言いがかり、罵倒、罵詈悪口、悪口雑言、罵詈雑言でもあるのっ⁉ ――――ぶっ殺すわよっ!!! 」 (ギラリッ!!! )
「――い、いえいえ!! ありませんっ! 滅相もありませんよっ!! ルフ様っ!!!
…………し、し、しかし、先ほども言いましたが、ルフ様は何故、このような場所でお一人様で住んでおられるのですかっ⁉ 」
ルフはなんだかドギマギ、慌てて叫んだ。
――「あーっ!!!!!!!!!! 真っ!!! それを言うなぁ-っ!!!!!!!!!!!! 」
「な、何故です⁉ 何故ですっ⁉ 何故こんな所に女性が一人で住んでいるんですかっ⁉︎ ルフ様っ!!! 」
――「あーっ!!!!! あーっ!!!!!!!! あああぁぁぁぁぁ〜っ!!!!!!!!!!!!!! それは聞かないでぇーっ!!!!!!!! 」
なんだか真は、ルフを、いじるのが楽しくなってきた。
いや、快感すらさえも感じてきた。
「どうしてなんで、どういった意味で何故、ルフ様はこのような場所でたった一人で住んでおられるのですか? ねえねえ、どうして? どうしてっ⁉
何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか? 何故ですか?何故ですか? 何故ですか? 」
――――「わーっ! わーっ!! わーっ!!! 」
「何故ですか? 何故ですか? 何故ですか?……………………。」
――――「ギャーッ!! ギャーッ!!!! ギャーッ!!!!!!!! だからやめてーっ!!!! それだけはお願いだから聞かないでよぅ〜っ!!!!!! 」
「………………何故こんな所で一人で住んでいるんですか? ルフ様っ!! 」
――(−−−−ッキーッ!!!! )――――「ブ、チ、コ、ロ、ス、ゾッ!! コノヤロ〜ッ!!!!!!!! 」 (ッズゥーンッ!!!! )
「――っひ、っぃひいぃぃぃーっ!! す、すいませんでしたーっ!!!! ルフ様ぁーっ!!!! 調子に乗ってしまい、本当にスイマセンッ!!!!! 」 (恐怖! 戦慄! 戦々恐々!! 平身低頭!! 土下座!! 土下座っ!!!! )
――――馬鹿についつい、馬鹿馬鹿しくも付き合ってしまった、と、思ったルフは一旦、冷静になり言った。
「…………もう、わかったわよ。真。私はあなたと違って大人なのよ。」
「……………………………………。」
「――いいわ。ちゃんとお食事の用意をしてあげるから食べながら黙って、私がここで一人で暮らしている理由を聞いてくれるのなら、少しだけ、話してあげてもいいわよ…………。……いい? 」
真は、コクリ、と頷いた。
――――真は、冷たくも暖かい、ルフの手料理の歓待を受けた。――――
そしてルフはなんだか、ソワソワ、モジモジとしながら重たい口を開いた。
――――――「わ………………私……。
――追放を――――されたのよ…………。エルフ族を……………………。」
「……つ、追放………………⁉ 」 (モグモグ。)
「…………………………。」
「……な、なんで…………? 」 (モグモグ。)
「…………その…………………………。」
「……………………。」 (モグモグ。モグモグ。モグモグ。)
「…………人間に……………………。」
「……人間に……? 」 (モグモグ。モグモグ。)
「――――人間に−−恋をしたから――――」
「……えっ⁉
…………別に…………別にいいじゃん。それくらい。」 (モグモグ。)
「…………いいえ。
……そのぅ…………………………。」
「……その……? 」 (モグモグ。)
「実は…………。そのぅ……………………。」
「実は……? 」 (モグモグ。)
「――お、女子っ!! 人間の女子と恋に落ちたからっ!!!! 追放をっ!! エルフ族の恥とされて追放をされたのよぉ~っ!!!!!!!! 」 (赤面! )
「えっ!! っええぇぇぇ~っ⁉ 」 (ブ~ッ!!!! )
思わず吹き出してしまった真に、ルフは続けて言った。
――――「……ま、まあ、誰にだって生きていれば紆余委蛇の一つや二つくらいはあろう……。
…………しかし、それにしても戦場で、お漏らしをしたような馬鹿な人間に、四方やこの話をする事になろうとは、このルフ、末代までの恥じゃ………………。」
「……は、はあ……………………。」
真は、流石にこれ以上は、ルフのその同性同士の『恋の話』とやらについて質問を続けるのは野暮も野暮の愚問だろう、と思った。
「…………………………。」 (モグモグ。)
「…………………………。」
――――(あ、あれ⁉ な、なんか少し、気まずい雰囲気かな? )
真は空気が読めずに無心に、肉まんにかぶり付いていた。
そしてルフはそれを見て話題を変えて言った。
――――「……あ、真よ。」
「……ん? あ、は、はい? 」
「所で、その『肉マン』の……『饅頭』の由来は知っているかな? 」
「えっ⁉ い、いいえ…………?? 」
「――――それは、それは、その昔。
中之国が、『三國志』と呼ばれていた時代――――
三つの国のうちの一つ、『蜀』という国に丞相、『諸葛 孔明』、という人物がいたそうな。
その孔明が率いる蜀の軍はな、『南蛮』、という地を平定をした後にな、蜀の国の都の、『成都』、に帰還をする最中に、とある村を通ったそうな。
その村の近くにはな、大きな河が流れていて、しょっちゅう、その河が洪水を起こして氾濫をしたそうな。
それでそこの村人達はな、その河が氾濫を起こす度にな、人間の頭をな、生け贄にしてその河に流す、という風習があったそうな。
そこでだな、諸葛孔明はな、
『そんな野蛮な悪い風習はいけない。』
と考えてだな、その換わりにな、豚肉等をな、生地に包んでそれを人の頭の換わりにしてだな、それを河に流させてだな、それで以てして、そこの村の人間の頭を生け贄にする、という風習を、孔明が止めさせたそうな。
――――これが、『饅頭』の由来だそうよ。」
「…………は、はあ……。
……そうでしたか、ルフ様。」 (モグモグ。)
――――真は、ルフの家の中をよく見渡してみると、とても大きな本棚が目に入った。
その大きな本棚には、『ルフの冒険』やら、『ルフの冒険の書』やら、『ルフの書』やら、『ルフ冒険奇譚』やら、『ルフの伝説』やら、『ルフ外伝』やら、『ルフ航海日誌』やら、『ルフ戦記』やら、『ルフの歴史書』やら、『ルフ大百科事典』やら、『ルフ図鑑』やら、『ルフの兵法書』やら、『ルフの錬金術』やら、『ルフの薬学』やら、『ルフの真実』やら、『ルフの素顔』やら、『ルフの横顔』やら、『エルフのルフ』やら、『ルフ発言録』やら、『ルフ名言集』やら、『ルフ自叙伝』やら、『ルフの半生』やら、『ルフのその生涯』やら、『ルフ回顧録』やら、『ルフの肖像』やら、『ルフ愛の詩』やら、『ルフ詩選』やら、『ルフ危機一髪』やら、『燃えよルフ』やら、『萌えるルフ』やら、『可愛いルフのつくり方』やら、『なぜ可愛い? ルフ』やら、『ルフ美容法』やら、『これでモテモテ! 格好いいルフのつくり方 第200巻』とかやらまで、全部の書籍が、『著 ルフ』と、なっていた。
「あ、あのー。
こ、ここにある沢山の本はもしかして、ルフ様、が書いたんですか? 」
「ええ!! 勿論よっ!!!! 」 (エヘンッ!!! )
「…………は、はあ……す、凄いですね…………。ルフ様……。」
「勿論ですわよっ!!!! 」 (エヘンッ!!! )
――――(……こ、この書籍のラインナップからすると…………。
一体どんだけルフは、自分大好きの自意識過剰の物凄い自己愛のナルシシストの塊何だか、自己中なのかがよくわかる様な気がする………………。)
――「なあに? 真?
……何かまた、心の中で私に対して良からぬ事を考えているんじゃあないの⁉
馬鹿な人間風情の真ごときが万が一、この私を愚弄をしたら、即、ぶっ殺すわよっ⁉ 」 (ギラリッ!!! )
「嗚呼っ!! いや! いや! 滅相もございませんっ!! ルフ様っ!!!!
そ、そんな事! 一言たりとも考えた事はございませんですよっ!!!!
――只只! こんなにも沢山の本をお書きになって、ルフ様は本当に凄いなーと、思っておりましたっ!!
只只! 圧巻ですっ!!!! 」
「っあ、そう。
ならいいわ。
真。そんなに私が執筆をした本が読みたいのかしら? 」
「えっ⁉ い、いえ! あっ!! はい! はいっ!!
せ、折角なんですが、ルフ様のご本を是非とも拝読を致したいのはやまやまなんですが、こ、この私めの様な馬鹿な人間には、り、理解が出来ない……い、いやっ!! あまりにも難しそうなんで読んでもさっぱり、わ、わからないかと思う次第ですっ!! 」
「……そう…………。
残念ね。
――――残念な人間ね。」
「…………………………。」 (イラッ! )
「――因みに――
――この本は全部、私の経験や事実に基づいて執筆をしたのよっ!!!! 」 (エヘンッ!!! )
「へえ~っ!! 」 (…………………………。)
「そうだっ!! 真っ!!!!
暫く此処に居なさいよ。
そして家の事や、畑仕事とかを手伝いなさいよっ!!!!
そうしたら、私の色んなとっても有り難い体験談とかを聞かせてあげるわっ!! 」 (エヘンッ!!! )
「えっ⁉ ええぇぇぇ~っ!!!! 」
「……これは、私の絶対命令よ!!!!
もしも、万が一にでも私に逆らいでもしたら即刻!! あなたは処刑よっ!! 首よっ!!!! 」 (ギラリッ!!! )
「――はっ!! はいっ!! ルフ様っ!!!! 」 (っえぇ~っ!! そ、そんな~っ!!!! )
真は強制的に、ルフの家に逗留をする事となってしまった………………ルフの下僕として…………。
今は、まるで隠者の様に生活をしているルフであったが、数百年間も生きて来たルフはかつて、名だたる冒険者であった。
――――真はルフから、様々な色々な冒険譚を、無理矢理毎日の様に聞かされた。
――世界は広大であった――
『コボルト』の山賊団を退治したという話。
『バイキング』の海賊団を壊滅させたという話。
『ミノタウロス』の迷宮を踏破したという話。
冥府の番、『ケルベロス』を退治したという話。
冥府にて、『ヴァンパイア』の王が率いる、『スケルトン』や、『ゾンビ』や、『グール』や、『リッチ』らの、アンデッド軍団と戦争を繰り広げたという話。
『ガルーダ』や、『キマイラ』の巣でお宝を発見したという話。
宝箱かと思ったら、『ミミック』であったという話。
『ゴーレム』に殴り殺されかけたという話。
『カーバンクル』を仲間にしたという話。
『オーク』や、『オーガ』や、『サイクロプス』らと一戦を交えたという話。
『トレント』の棲む森で迷ってしまったという話。
『ドルイド』僧のもとで、魔術の修行をしたという話。
『ノルド』族から剣術の手解きを受けたという話。
『グリフィン』を倒して伝説の剣、『バルムンク』を手に入れたという話。
魔竜『ファフニール』を倒して、囚われのお姫様、『ブリュンヒルデ』を救出したという話。(どうやらルフは、このお姫様と恋に落ちたらしい。)
天空で、『ハーピー』や、『ガーゴイル』や、『サラマンダー』らと戦ったという話。
『トロル』の洞窟で罠に引っ掛かってしまったという話。
『タイタン』の塔を攻略したという話。
『メデューサ』のダンジョンを攻略したという話。
『スライム』の楽園を発見したという話。
『ホビット』族の桃源郷を発見したという話。
『ノーム』族のユートピアを発見したという話。
『ドワーフ』族のアルカディアを発見したという話。
世界竜、『ヨルムンガンド』の体内を探検したという話。
とある大神殿にて、宇宙竜、『ティアマット』と遭遇をしたという話。
とある大聖堂にて、『バハムート』と戦ったという話。
異空間にて、『フェニックス』に出会ったという話。
とある砂漠にて、『スフィンクス』と、謎解きバトルをしたという話。
ルフの愛馬、『ヴィングスコルニル』を駆って、『リヴァイアサン』の棲む『レヴィヤタン』の海峡を越えて、『ロキ』の住む『ヘルヘイム』の沼地を越えて、『トール』が居る『ムスペルヘイム』の要塞を越えて、『ヴァルハラ』、という地にある城で、『オーディン』主催の武闘大会、『ラグナロク』に出場をしたという話。
そしてルフは、『ラグナロク』で見事に優勝をして、『オーディン』より愛槍、『グングニル』と愛馬、『スレイプニル』を授かったという話。
昔ルフは、真の祖国の、『倭国』にも行った事もあるらしくて、『金ヶ崎の戦い』にて、第六天魔王『織田信長』公の命を救った時の話もした。
どの話も、真にとっては、とても新鮮で、血湧き肉躍る内容であった。
「…………真よ。」
「あ、はい⁉ 何でしょうか? ルフ様。」
「……実はね。
お主の国、倭国で私はね、『漢字』、…………間違え、『漢字』を覚えたのよ。」
「へえ~っ!! そうだったんですかっ!!!!
流石はルフ様!!
差し詰め、『男の中の男』、ならぬ、『女の中の漢』! ですねっ!! 」
「……………………はあっ⁉ 」
「い、いやっ!! す、すいませんっ!!!! ルフ様っ!!
そ、そんな深い意味は無いですよっ!!!! 」
「…………まあ、いいわ。
気分を変えて、此処で閑話休題ね。」
「あ、はい! ルフ様。」
「真よ。
お主の国の『ニンジャ』、女忍者の、『くノ一』の、由来は知ってる? 」
「――え? い、いいえ。」
「……何だ。真の国の言葉なのに、真が知らないとは。
やっぱり、馬っ鹿じゃない⁉ 真!! 」
「…………はい。すいませんね。ルフ様。」
「『く』+『ノ』+『一』=『女』。だからよ。」
「…………っあ! 成ーる程!!!! 」
「まだ他にもあるわよ。
九十九歳の人の事を何故、『白寿』って、言うのかな?
『百』-『一』=『白』。
八十八歳の人の事を何故、『米寿』って、言うのかな?
『八』+『十』+『八』=『米』。
八十歳の人の事を何故、『傘寿』って、言うのかな?
『傘』、という漢字の中には、『八』と、『十』があるからよ。
六十一歳の人の事を何故、『華寿』って、言うのかな?
『華』、という漢字の中には、よく見ると、『十』が6個、『一』が1個、あるからよ。」
――――「……………………あ! はいはい。成る程!! 成る程っ!!!!
まるで、暗号か、パズルみたいですねっ!! ルフ様!!!! 」
「でしょう!! 」 (エヘンッ!!! )
「伊達に、お年を召してはいませんねっ!! ルフ様!!!! 」
「――女の子にそんな事を言うなーっ!!!! っぶっ殺すわよっ!! っ本っ当にぃっ!!!! 」 (ギラリッ!!! )
「す、すいませーんっ!!!! 」 (――いやっ!! もうっ! 本当に物騒なエルフだなーっ!!!! )
「――――まあ、いいわよ。どうせ…………。」
「…………………………。」
「――私は大人なんだし………………。」
「……ルフ様は、大人な乙女なんですねっ!! 」
「………………………………。」
「………………………………………………。」
――「いいわ。真には此処で、ちょいと大人な小噺をして差し上げますわよ。
――――これは、とある話――――
『本能寺の変』を、『本能寺の恋』と、間違えてしまった、うつけ者の話。
『――とある寺で………………。
羽柴秀吉に嫉妬を覚えた、
明智光秀のせいによって、
織田信長が死んでしまった。という、
本能による、恋の、三角関係の縺れによる、
愛憎渦巻いた、歴史的事件。
【人歴?年(天正10年6月2日) 本能寺の恋】』
――因みに、登場人物で、『羽柴秀吉』の代わりに、
『森蘭丸』でも、
『濃姫』でも、
黒人の、『弥助』でも、いいわよ。
うふふ。」
「…………な、何ですか? その話は………………? 」
「……まあ、本能寺の変の外伝よ。」
「はあ。そうですか、」 (何だか、ルフらしい、と言えば、ルフらしい話だなあ。)
――――「あ。あとなんだけれど。――――
――海洋生物の『蛸』、オクトパスには気を付けなさい。」
「蛸、の、吸盤にですか? 」
「……うん。それもあるけれど。
――蛸はね、心臓が3個。
脳は、9個もあるのよ。
蛸の、脳の一つは頭部にあって、残りの8個の脳は、それぞれの8本の脚の付け根の部分にあるのよ。」
「えっ⁉ ほ、本当ですかっ!! か、かなり、しぶとそうな生き物ですね! 」
「うん。だから、オクトパスと戦う時は確実に、仕留めなさい。」
「は、はいっ!! ルフ様!!!! 」
そしてルフは、何時もより真剣な顔になって言った。
――――「真。」
「はい。今度は何でしょうか? ルフ様。」
「…………ありがとう。」
「えっ⁉ は、はい? 」
「真。あなたのお陰で、倭国での思い出が甦ってきたわ。
とっても懐かしいなあ。お市様。
本当にありがとう。真。」
「い、いやあ。
…………っえっ⁉ ええっ!!!!
……あ、あの!! お市様にも会った事があるんですかっ!!!! ルフ様!! 」
「勿論っ!!!! 昔ねっ!!
――――そうだ!! 次は、『ルフ倭国見聞録』、でも執筆をしようかしら。」 (エヘンッ!!! )
「……い、いいですね!! ルフ様!! 」
――ルフは、更に真面目に、更に深刻そうな顔になって言った。
「――――其れにしても真。
その――『孔達』という人間はとても危険そうね。
まず、どうやら見た目からしても、とっても危なそうな奴ね! かなりイッちゃっているわねっ!!
…………まあ、私の方がもっと危険な存在なのだけれども。」
「…………………………。」 (ル、ルフ様……じ、自分から自分で自分の事を、危険、と言い切ったよ…………や、やはりルフ様は、こ、怖い……………………。)
――――しかし、真は、何だかんだいって、ルフのもとで、只、無為に時は過ごさずに、雑事等を処々、諸々をこなしながら、その間にも、基礎体力、格闘武術、剣術、弓術、馬術、魔術、兵学等の師事をして、後は蛇足ながら、余計な事までも、ルフから手解きを受け、修行をして学んだ。
………………ルフの、下僕として………………………………。
――第伍章へと続く――