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雪は隠しても溶かさない

作者: お茶の茶

3月のライオンとか読んであぁ、こんなの書いてみたいなって思ったものです。


いろいろとメッセージと言うか姉弟の家族の愛情のようなのを書いたつもりです。

シンプルであるあるな感じですが、何かこう思っていただければ。

「綺麗に積もってるねぇ祐太」


姉ちゃんはそう言って夜中に僕を外の駐車場に連れていった。


「ほら、ふわふわだよ!ふわっふわ!」


ホントに綺麗だと思った。


「いいね、雪って」

「全部隠してそのまま溶かしてくれそう」


その言葉には今までの悲しみとこれからの辛さをなくしたいように聞こえた。


『こら!祐太!朝にはここ出るんだからさっさと寝なさい!支度できたの!?』


お母さんの声は耳を切り裂くように痛く響いた。


ー寒いからかな……


姉ちゃんは嫌そうな、でもとても泣き出しそうな顔していて


「ねぇ祐太、もう少し大人になって、その時にアタシのこと覚えててくれたら……」


その先は聞こえなかった。いや、聞こえたけど

いつもはちょっとキツめでトゲのある言葉を使う姉ちゃんが

こんなにも痛々しく、割れて溶けてしまいそうに話す姉ちゃんを僕は見ていられなかったからだろうか。


朝、僕はお母さんに引っ張られるように家を出た。


お父さんは『元気でな』って言ってドアを閉じた。


姉ちゃんは見送ってくれなかった。


窓から少し顔を覗かせてじっと見ているだけだった。

僕はとたんに涙が溢れた。


『何泣いてるの、あんな家もう忘れなさい』


お母さんはそう言ったけど、涙はさらにでてきた。



ーお、雪か

雪を見るたびに思い出す。


姉ちゃんと最後に見た雪の夜を。


今頃どうしてるのだろうか。お父さんは経済力がある。生活の支障はないだろうな。


あの日以来姉ちゃんには会っていない。


お母さんはバリバリ働いてる。最近落ち着いてきたらしい。


……あの時の姉ちゃんの言葉。

しっかりと覚えている。

聞こえなかったのに、忘れようとしたのに、見ていられなかったのに。


だからもう分からないフリは限界だ。

待っていないかもしれない、忘れてるかもしれない。

けど、行ってみよう、言ってみよう。


『迎えに来て、二人で一緒に生きよう』


「迎えに来たよ、姉ちゃん」

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