第5話 マスタースキル
丁度いい威力というのは難しいです。
斬撃、斬撃、突き、斬り払い、間合いが離れたら突撃、間合いをつめて斬り付けてくる。
俺は必死にセリカの攻撃に剣をあわせて防御する。
ちっ、ステータス的な不利が効いてるな。
スキルで押せばやれない事はないだろうが、『手加減(M)』のスキルもステータスが足りなくて無効になりかねない現状、逆に威力がありすぎで殺してしまいかねない。
だが、最も大きいのはゲームには慣れていても実戦に慣れてないその差だな。
痛みとそれに対する恐怖が過剰に防御に走らせる。
ゲーム中ではHP減少だけだったが、今は苦痛とそれに伴って動きが阻害される。あと単純に痛いのを避けようとする。
く、このままではまずい一旦仕切りなおそう。
「『ショックウエーブ(M)』」
一般に吹き飛ばし技といわれる効果範囲の敵を吹き飛ばす種類の技だ。
この『ショックウエーブ(M)』は本来は地面に武器を突き立てその同心円状に衝撃が広がり全方位の敵を吹き飛ばす技だ。
だが斬撃として敵に叩き付けても一応効果はある。吹き飛ぶ範囲が前方だけになってしまうが。
それでも剣の打ち合いの時はこっちの方が使いやすい。
「すごいよ~」
セリカは興奮した様子で体勢を立て直す。
ふう、何とか間合いをとって少し休めるか……。
「じゃあ、これなら!」
休めると思ったのもつかの間、セリカが『ホーリースラッシュ』を連発してきた。
飛び道具の連発とか地味にきついな。
光の刃を防ぎ続ける。
「『ホーリーチャージ』」
げ、突進技で突っ込んできやがった。
剣を持つ手に力をこめて受け止める。
ぐ、強い……。
何とか受け切れたと思ったのも矢先。
「『ホーリーアタック』『ホーリーアタック』……」
『ホーリーアタック』の連発。
俺の動きが遅れてきた所で、
「『ホーリーショック』」
『ショックウエーブ(M)』の同系統の吹き飛ばし技で吹き飛ばされる。
「ぐはぁ」
背中から地面に叩きつけられたが、それにかまっている暇もなく慌てて立ち上がる。
「『ホーリーーーーブレイカーーー』」
俺が倒れていた隙に、剣から大量の光を噴出させ襲ってくる。
く、まずい、あれは、『ホーリーブレイカー』。【聖騎士】の技の中でも1、2を争う高火力の技じゃないか!!
直撃はまずい。俺は慌てて防御スキルを使う。
「『ホーリーシールド(M)』」
俺の目の前に光の盾が現れセリカの攻撃を相殺する。
「な!? なによそれ!」
セリカの渾身の一撃だったのだろう、無傷で防がれて驚きを隠せない。
それでも、即座に距離をとったのはすごいな。
彼女の一撃を防げたのには訳がある、『ホーリーシールド(M)』スキルは神聖属性のみを1回完全に無効化するのだ。
『ホーリーブレイカー』が【聖騎士】の中で強力な技でも神聖属性ならダメージを受けない。
「光を相殺する盾のスキル……」
やっぱり気づかれるよな。
「それならこれで……光よ我に!『ホーリーボディ』」
神聖属性のスキルを無効化する手段をもってるとわかったとたん、身体能力強化のスキルに切り替えてきやがった。
まずい……。このままでは押し切られる。
セリカを殺さずに無効化するにはもう、これしかないか……。
「我『属性を統べるモノ(M)』!」
身体強化したはずのセリカの速度が大幅に落ちる。
そこに俺は今回初めてこちらから突っ込んで行き。
「『当て身(M)』」
スタン技で使って攻撃する。
気絶させられたら儲けものとおもっていたが、案の定決まらない。
だが、体勢を崩させる事ができた。
そのまま、追撃で首筋にぴたりと剣を突きつける。
「…………ま、負けたよ」
ふう、何とか勝てたか……。
『属性を統べるモノ(M)』このスキルは【エレメントマスター】のスキルで光、闇、火……などの属性を持ってる相手にたいして凶悪な効果を持っている。
その効果とは、属性を持ってるキャラクターの能力値を1/3にしこちらの攻撃効果を3倍にするというものだ。
このスキルの発動中に属性もちの敵に攻撃すると計9倍の攻撃を当てる事ができるのだ。
【ロードナイト】を目指してる人間に【ロードナイト】を前提の一つにして転職する【エレメントマスター】を使うのはあまりにひどいと言わざるを得ない……。
なまじセリカが強かったので、殺さずに勝負をつける方法がこれしか思い浮かばなかったのだ。
セリカのほうを見やるとガックリとうなだれている。
う~ん、悪い事をしてしまったかもしれない。
と、そこで……。
『セリカ(ヒューマン・女)を隷属させました』
あ……しまった、【奴隷調教師】の事をすっかり忘れていた。
ど、どうしよう…………。
次回……負けて奴隷になったセリカは……。




