第5話 農業をはじめよう!
今回は、卵の安定供給に不安が出てきたので……自給自足に挑戦です!
今日もまた朝風呂に入った後、隣の大広場で、グターとだらけている。
この頃、だらけるあたりまで込みで日課になっている気がする。
隣には、ミルファさんに髪の手入れをされているレナさん。
何故か毎朝、お風呂に部屋を出る所とか、脱衣場に入ったあたりで彼女達に会って一緒になるんだよな。
まさか、俺の行動パターン把握されてないよな?
……でも……まあ……いいや……。
今は、グダーと……。
そんな感じでしばらく休んでいると、狐っ娘姉妹がテテテテって感じで大広間に入ってきた。
特に風呂上りって感じではないが何をしに来たんだろうと様子を見ていると、壁に何かを貼り付けてるみたいだ。
狐っ娘達の作業が終わったのを見計らって、壁に貼られた紙に目を向けると……。
『おんせんたまご はじめました!
ほかにも……
ゆでたまご
あじつきたまご
スクランブルエッグ
めだまやき
などもあります!
ごちゅうもんは、ないせんで、てんこ&ちこ まで!』
冷やし中華始めました見たいなノリで、卵料理の始めましたのポスターが……。
たぶん、ティナの本の影響だろうな。
手書きのポスターでちゃんとそれぞれの卵料理の絵も描かれているし……。
今度機会があったら注文してみるかと、またグターとだらけると……なにか視線を感じる。
視線の先をたどると……。
「…………(ワクワク)」
「…………(ドキドキ)」
何かすごく期待のこもった視線を向ける狐っ娘達。
もう直ぐ朝食だから今はいいとか、言える雰囲気じゃなかったので、注文してみる事にした。
「おんせんたまご1つ頼む」
なのだが……。
「…………(フルフルフル)」
「…………(フルフルフル)」
狐っ娘達は、首を振って「違うよ~」と主張している。
あれ? 読み間違えたか?
その様子に首を傾げるが、二人そろってビシ!
『ごちゅうもんは、ないせんで、てんこ&ちこ まで!』
の文字を指差すのを見て理解する。
『クロ(ギルド):おんせんたまご1つ頼む』
ギルドチャットで注文しなおすと、うれしそうにそろって頷き返してくる。
同じような視線をレナさん、ミルファさんにも向けていて、彼女達も注文だしていた。
3人から注文をとり終わるとピューって感じで大広間から飛び出して行った。
その後、注文の品が届くまで結構掛かって朝食を食べに行くのがずいぶん遅れてしまった。
手早く作れる目玉焼き、ゆで卵、スクランブルエッグあたりにしておくんだったと少し後悔した。
ま、大分腕が上がってておいしくはあったんだけどな……。
朝食後、狐っ娘達に卵の買出しを頼まれたので、その辺の食材調達がてら掘り出し物でも探しに街に出かける。
何故か当然の様にレナさんとミルファさんがついて来たがもう気にしない事にしている。
なんか、大分攻め込まれて陥落寸前ってイメージが……気のせいだろう……たぶん。
ちなみに、先日酒場での情報をシーナに色々調べてもらっているんだが、戦争が始まるかどうかってのは確からしい。
距離が離れてて情報が遅いからもしかすると戦争はもう始まってるかもしれないとも言っていた。
ゲートとかあるからもっと近くに行けば……とか思いはしたが、考えてみると人里には作ってなかったなゲート。
それと、レナさん達を狙うような影は今の所見受けられないとも言っていた。こっちは一安心と言った所か……。
あと、第二王女に関しては、どうやら本物らしいと言っていた。
シーナ自身が少し驚いていたけど……。
レナさんとミルファさんは納得の表情だったから正しいのだろうけど……それでも身の安全とかは大丈夫なんだろうか?
何か、危険を回避するコツとかあるなら教えて欲しい所だ。
考え事をしながらだったが、慣れた道のりで迷う事もなく、市場までやってくる。
「さてと、卵は……」
いつもの卵屋の露店のオヤジさんを探しながら市場を回る。
途中、狐っ娘姉妹に教える次の料理のネタを考えながら通りに並んでいる露店の商品を調べるのも忘れない。
う~ん、そういえば、米って見ないな。こっちの世界には無いんだろうか?
ギルド拠点でなら種とか苗とか込みで水田なんかも作れそうな気はするんだが……。
そして、やっと見つけた露店だが、オヤジさんはもうすでに店じまいを始めていた。
「すまねぇ。今日はもう店じまいだ」
チョット遅かったようで、売切れてしまっていた。
まあ、他の店に行けばいいよなと、その時は軽く考えていた。
「すまねないね~。売り切れなのよ」
色々街を駆けずり回りもう、8件目。
全ての店で卵が売り切れていた。
あと、農作物もなんかも品揃えがいつもより悪かった。
流石に、これはおかしいので、少し尋ねてみた。
「街の西の方にある農園にモンスターが入ったみたいでこれからしばらく品薄が続きそうなのよ」
すぐにそんな答えが返ってきた。
うん、最初の店で聞いておけばよかった。
ちなみに農園ってのは、モンスター除けのマジックアイテムなんかを手に入れた元冒険者が開墾したものらしい。
街の近くに作るなら普通は弱いモンスターしか現れないので、農園なら低ランクのモンスター除けで十分だとか。
それに、収穫量の半分は、ギルドが量に関わらず一定額で買う専属契約になっていて一定の収入が補償されてるらしい。
まあ、魔物の肉などで食糧に困らないとは言え、栄養なんかの偏りとか考えたら街としては農作物はある程度は仕入れたいだろうからな。
前回のモンスターの襲撃では、鶏なんかの家畜類を街に避難させたんだとか。
襲撃中のモンスターは基本植物は狙わないようなので、被害は少なかったんだとか。
まあ、本体が通過したりすると踏み潰されて全滅もあるらしいけど……。
「ありがとう、おばちゃん」
「おばちゃんじゃないでしょ! おねえさんでしょ!」
そんな感じでお礼を言って露店を離れる。
「これは、卵は買うのは難しそうだな」
「そうですね。たぶん無理でしょう」
ミルファさんも俺の言葉に頷く。
少し上の空なのは、これからしばらくの献立をどうしようとか考えてるのかもしれない。
「農園を襲ったモンスターを倒すのはどうでしょうか?」
「う~ん、今後の被害を減らすという意味では意味はあるかもしれないけど……」
でもまあ、やっておいた方がいいのは確かだろうから少し調べてセリカやティナあたりに行かせるか……ふと、二人が農園を壊滅させそうな気がしたが……気のせいだろう。
シーナに協力を要請して、色々調べてみた所、昼時には色々情報が集まった。
どうやら、はぐれの高レベルモンスターが農園を襲っているらしい。
冒険者ギルドでは、そのモンスターの討伐依頼が出されているとか。
そんな話を、珍しく皆が集合した昼食でしていた。
「師匠! 昼からそのモンスターを退治しに行ってきます!」
それを聞いて、セリカが即座に反応する。
まあ、言うと思った。だが、少し心配なのでシーナをつけることにする。
ティナはやっぱり色々怖いので一緒には行かせない。
「シーナ、一緒に行ってくれ。面倒な相手だったらセリカを連れて一旦戻ってくれ」
「嫌よ、めんどくさい!」
うん、そういうと思ってた。
だけど……。
「じゃあ、こっちを手伝うか? 砦の方で農業でも始めようと思うんだが」
「げっ、そんな面倒な事やってられないわよ。セリカと一緒に行くわ」
シーナならそういうと思った。
「…………(のうぎょう?)」
「…………(なにそれ?)」
「畑で野菜とか育てたり、鶏を育てて卵を産ませたりすんだよ」
「…………(にわとり?)」
「…………(たまご!?)」
農業の話には、ちびっ子達が反応を見せる特に狐っ娘達の食いつきが激しい。
あと、マユさんも……。
「薬草の畑も作りましょう!」
前々から言っていた薬草の栽培を主張している。
今回、急に農業を始めようと言い出したのには訳がある。
一つ目は、狐っ娘姉妹の料理の為だ。
冒険者の街ではどうしても野菜の種類も量も制限されてしまうのだ。
例えば卵にしても、この頃大量に買っていて値段が少し上がってしまっていたのだ。
このままでは俺達は良くても、街の人に迷惑をかけかねない。
それに、チート設備を使えば作った方が早い可能性もある。
二つ目は、王国と帝国の戦争とかの関連だ。
レナさんが王国の関連で面倒に巻き込まれる可能性を危惧してだ。
もし何かあったときに避難できる場所が欲しい。
あの砦なら防御力に関しては申し分なくなっているだろうから、食べ物などが生産できればいくらでも籠城できるってのがある。
戦争には兵糧は、重大な要素だからな。
三つ目は、元の世界の美味しく品種改良された農作物とか、こっちでは見ない農作物を食べたいってのがあったりする。
なんかさ……狐っ娘姉妹に教える料理考えてると、カレーとか丼物とか米が恋しくなってきたんだよな。
でも、水田は面倒そうなんだよな……ある程度畑関係になれてからだろうな。
四つ目は、マユさんの薬草栽培、これからちびっ子達も狩りに出るようになれば、回復アイテムはそれなりに欲しくなるだろうからな。
材料の調達ルートは早めに確保しておきたい。
マユさんは結局、生産設備とも薬草栽培とも決められずにGP使えないで居るからな。
まあ、素材の買取で、結構いい物が手に入っているみたいで、余計迷う事になったのもあるんだろうけど……。
そんな感じでせつめいをし、農業を始める事そのものは、特にみなの反対もなく、すんなりギルドのGPを使う事も賛成された。
う~ん、何故だろう?
賛成した皆から美味しい料理を期待するオーラが出ていたような気がするのは……。
そんな訳で、昼食後、午後から俺たちは、農業(?)を、始めることになった。
メンバーは、農場に出たモンスター退治に向かったセリカとシーナ、M&Mの店番のアン以外の他全員だ。
「…………(おいしい~~りょうり~の~)」
「…………(しょくざい~づくり~~~)」
狐っ娘姉妹は、特にやる気に満ち溢れている。
「鶏ってどんな鳥にゃ~」
「肉だワン!」
おい、あくまで今回育てる鶏は、採卵用だぞ!
そういえば、この世界では鶏ではなく、コッコバードという鳥から卵を取っているらしかった。
だけど、GPで農業関連を調べた時、鶏の卵(飼育用)ってのがあったのでそれを育てる事にした。
必要があればコッコバードも育ててもいいしな。
「畑を作るなんて初めてなので楽しみです!」
レナさんは、さすが王族らしく、畑にふれた事は無いらしい。
すごく興味深く説明を聞いている。
「どれがいでしょう?」
マユさんは、今は、ギルドコアで薬草栽培の設備を色々見て考えている。
あと、リーフさんは畑仕事の注意点を説明してたのだが……。
「ティナ……前にも教えたはずですよ?」
今は、ティナへのお説教に移行していた。
たぶん、「初めて聞いたよ~」あたりの言葉がダメだったんだろう。
色々、手間取りはしたが、実際の作業を開始する事になる。
ギルドの分のGPを使って、色々購入する。
まずは、種とか鶏の卵だ。
何故か、注意書きに『食べられません!』と書かれていた。
普通の種だったら料理すれば普通に食べれそうなものもあるし、鶏の有精卵ってそのまま茹でて食べる料理があったような気がするんだが……。
まあ、GPから直接食糧に変換させない為の、WMOのゲームとしてのシステムのような気はする。
一応、ギルド戦とか勢力戦で、兵糧攻めとかあったからな。
その辺の仕組みなんだろうな。
あと、基本放し飼いの予定ではあるが、一応鶏小屋も厩舎の隣に作った。
これはGPではなく、リーフさんの樹の家だ。
ここの管理は基本的に、厩舎の馬と同じく、ちびっ子4人の担当になった。
ちなみに、鶏の卵はまずは10個購入した。それをこれもまたGPで購入した孵化器に入れた。
孵化までに数日掛かるとあったが、その日は設置した後ずっと様子を見ていた。
そんなに早く孵化しないぞ!
畑の方は、地下に100m×100m程の畑をGPで作成した。
外に作らなかった理由は、人口太陽の日照管理、気温管理機能、育成促進機能などのついた耕作設備を購入したからだ。
他にも機能はいろいろあったが、管理されたその畑に微妙にリーフさんが眉をしかめていたりした。
まあ、自然の中で植物を育てる感じじゃないからな。
そんな訳で、ティナとリーフさんは砦の一角を掘り起こし耕して普通の畑を作っていた。
地下の畑で希望する子が居たらこっちに移動させると言っていた。
う~ん、地下の畑が空っぽになるような事は無いだろうな……ほんの少し不安になった。
畑に蒔いた種などは、皆それぞれ好き勝手に選んでいた……。
それぞれ植えた種は……。
俺:トマト、キュウリ、キャベツ
※米は断念
マユさん:各種薬草
レナさん:お茶の葉
ミルファさん:甜菜、サトウキビ
ティナ:トウモロコシ
リーフさん:自前の種(何を植えたのかいまいち不明)
ちびっ子4人は、畑には関わらなかった。
と言うより……ずっと卵の前にいた。
う~ん、必要な気象条件が同じ作物で集めなくて良かったんだろうか? とか、あとで少し考えたが、一度やってみようと思う。
成長促進機能のおかげで、収穫まで2週間必要としないからな。
果たしてどうなるやら……。
一方、農園にモンスター退治に行ったセリカとシーナだが……。
レッドイーグルと言う、火を噴く鷹型のモンスターに思わぬ苦戦をしいられたそうだ。
「私達だけじゃ、空の高い位置を飛んでるモンスターには効果的な攻撃方法が無かったからね」
と言うことらしい。
まあ、リーフさんやティナあたりが居たら簡単に終わっただろうな。
結局、囮のコッコバードを用意して、隠れながら、レッドイーグルが囮をしとめに掛かる一瞬を辛抱強くまったそうだ。
シーナはともかく、セリカが珍しく狩りで疲れ果てていた。
まあ、あいつは、突撃&殲滅ってタイプだから……待ちぶせとか苦手なんだろうな。
次の話は……う~ん少し悩み中。
一応、どこかの白銀の戦乙女の話の予定。




