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第6話 ついに鍛冶師に!

アンがついに鍛冶師に!

 昨日は、ティナが最後に起こしたトラブルのせいで、疲れて早めに寝たからだろう、妙に早く目が覚めてしまった。

 外はまだ真っ暗だ。

 流石にこの時間に朝風呂に入ったら、湯船で寝ちゃいそうだからな……台所で何か軽い物でも摘んでもう一眠りするか。


 そんな訳で一階に下りてきたんだけど……。

 作業場に明かりがついている?

 誰か消し忘れたのか? そう思って、覗いてみると……。


「また失敗したであります! もう一度であります!」


 アンが一生懸命、木のナイフを作っていた。

 失敗作の山を見るに、徹夜でやっていたのか!?


「根つめすぎても上手くいかないぞ、一旦休め」


「今日は成功するまでがんばるであります!」


 う~ん、日付が変わってることに気がついてないっぽいな。

 そもそも、俺のことにも気がついてないか?


「また失敗であります!」


「アン、ちょっと待て!」


 俺は、続けて木のナイフを作り始めようとした彼女の手をつかんで止める。


「何でありますか!? あ……師匠?」


 やっと気がついたみたいだな。


「根をつめすぎても良くないから、一旦休め」


「もうちょっとなのであります! あと少しなのであります!」


 う~ん、【鍛冶師】への条件があと、木のナイフ1本作るだからか……止まる様子が無いな。 

 それに、気がついてないみたいだが、手の豆が潰れて血まみれになってるじゃないか!


「アン、ちょっと手をだせ」


「師匠?」


「『ヒール』これでよし」


「ありがとうであります! これでまだまだ頑張れるであります!」


 これは、止まりそうに無いな……しょうがない。


「『スリープ』」


 俺は、睡眠の状態異常を付与する魔法でアンを眠らせる。


「し……しょ…………」


 うん、流石に徹夜で寝不足だったからだろう良く効くな。

 後はベッドに運んで……あ、勝手にアンの部屋に入るのもまずいか。

 俺の部屋のベッドに寝かせるか。

 ちょっと、あれの完成を急ぐか、まだまだ朝まで時間があるしな。


 

 



「遅刻したであります~~大変なのであります!」


 朝食後、しばらくしてからアンがそんな事を言いながらダイニングに飛び込んできた。


「ああ、今日は特別にアンの店の仕事休みにしてもらったから大丈夫だぞ」


 マユさんに相談したら、二つ返事で了承してくれた。

 彼女は、生産に取り組む事に関しては、とことん甘いのかもしれない。

 作りたいものがあるので、今日は休みますでOKされそうな予感がある。


「そ、そうなのでありますか?」


 驚き半分、安堵半分の表情で此方に尋ね返す、アン。


「ああ、だから今日は一日、俺が付き合うから最後の一本完成させるぞ!」


「本当でありますか! 了解であります! すごく、すごく、がんばるであります!」


 アンの気合も入った所で、彼女が朝食食べ終わったら、さっそく木のナイフ作りを始めるか。

 俺が支援すればなんとかなるだろう。






 俺が補助魔法なんかで、成功率を底上げすれば結構簡単に完成するんじゃないかと、思っていた時期がありました。


「また、失敗であります! でも、負けないであります!」


 アンが朝食を食べ終わって直ぐ木のナイフ作りに取り掛かって2時間……。

 彼女の失敗した本数は20本を超えている。

 ぶっ続けなのに、集中力が続いてるのだけは素直に凄いと思うのだが……。


「あああ~~折れたであります!」


 う~ん。

 これは、俺も覚悟を決めて付き合うしかないか!


「完成するまで、付き合ってやる! ガンガン行くぞ!」


「はい! 師匠! がんばります!」


 手つきは大分慣れてきていると思うんだけどな……。





 そして、それから3時間。

 昼食どころか、休憩すらとらずぶっ続けで作業を続け、ついに……。


「で、できた~~で、あります! やった~~~であります!」


「おおお~~やったな!」


「はい、師匠のおかげなのであります!」


 アンが俺に抱きついてきて、涙を流して喜んでいる。

 ちょ、そのナイフは怖いから……木のナイフでも怖いから……そのまま抱きつくのは……。



 5分後……。


「やっと、落ち着いたか……」


「やっと、【鍛冶師】になれるであります!」


 とおもったが……まだまだか……。

 これは、【鍛冶師】に早くなったほうが良さそうだな。



 そのまま、何となく、ギルドコアの部屋まで行く。

 ついでに、今暇なメンバーも呼んでおく。


 集まったのは、ちびっ子達5人に、セリカ、シーナ、レナさん、ミルファさんだ。

 マユさんはお店の仕事で、リーフさんは修行中だった。


「では、いくであります!」


「あ、これを羽織っておけ」


 さっそく始めようとするアンにバスタオルを渡して羽織らせる。

 職業が代わると装備品が解除されて裸になるからな。


「ありがとうであります! では、あらためて……いくでありあます!」


 次の瞬間アンの光に包まれて……。


「【鍛冶師】になれたのであります!」


 ウィンドウ画面を開いて確認する。


『アンジェリカ:鍛冶師Lv1』


 ちゃんと昇格できている。


「おめでと~」

「…………(おめでと~)」

「…………(おめでと~)」

「おめでと~にゃん!」

「おめでとだワン!」

「良かったじゃない」

「おめでとうございます」

「おめでとう」

「あおめでと~~」


「おめでと~アン。これでお前も【鍛冶師】だな」


「師匠、皆、ありがとうなのでありあます!」


 とびはねんばかりに喜びながら皆に御礼を言っている。

 そんな様子をしばらく見物していた。



「さて、アン。さっそくだが……」


「鍛冶を始めるでありますか!?」


「いや、鍛冶場なんかの準備があるから、セリカやティナと一緒に少し【鍛冶師】のレベル上げをして来い。二人とも頼むぞ?」


「うん~~皆行くよ~」

「ワン!」

「にゃん!」

「…………(おお~)」

「…………(おお~)」


 ティナとちびっ子達は遊びに出かけるような感じで準備を始めた。


「わかりました師匠!」


 セリカは、待ちわびたとばかりに剣を握る。

 朝、アンが【鍛冶師】になったらレベリング頼みたいからそれまで待っててくれと言って待たせたからな。

 待ちくたびれてたのかもしれない。


「皆、おねがいするであります!」


 そんな感じで、ちびっ子達が砦から持ち出した馬車にアンを乗せて、狩に出かけていった。

 【鍛冶師】の職業レベル15ぐらいで最低限の生産スキルは全部取得できたはずだから、まずはそこまで上げておかないとな。

 あとのことは、セリカ達に任せて、こっちも準備をしておくか。


「シーナ、レナさん、ミルファさん頼むよ」


「はい」

「解りました」

「解ったわよ。で、何するの?」


「それは……」






 その後、夕食時になって、アン達が戻ってくる。

 レベルを確認してみると……。


『アンジェリカ:鍛冶師Lv21』


 うわ、これはまた無茶をしたなこの短期間で。


 胸を張って、「どうだ! がんばったんだよ!」なんて言いたげなティナなどを筆頭に、皆やりきった感がただよっていた。

 一体どんな狩をしたんだ!?


「皆、ありがとうなのであります!」


 アンは彼女達に頭を下げている。

 うん、あいつらが大怪我とかしてるわけじゃないし、聞かないでおこう。少し聞くのが怖い。



「師匠! 今度こそ、鍛冶をはじめてもいいでありますか?」


「おお、こっちの準備も整ったから……さっそく見に行くか?」


「はい、であります!」


 そうして、昼過ぎまで木のナイフを作っていた作業室の前までやってくる。


「あれ……扉が――」


「アンさんおめでとうございます」

「おめでとうございます」


 さっき、居なかったマユさんとリーフさんが彼女を祝う。

 ちなみに、店番は今ミルファさんとレナさんがしている。


「ありがとうであります!」


「でだ、気がついたと思うけど……作業部屋を増やした」


「増やしたでありますか?」


 今まで1部屋だけだった作業部屋が、隣にあった元倉庫(宝物庫に中身を移動して空き部屋になっていた)をつぶして3部屋に増やしたのだ。



 まず、一つ目の扉に入る。

 そこには、壁一面に薬棚や薬草などの素材を入れる棚で埋まった部屋があった。

 部屋の真ん中には、調薬などで使う生産設備が作業台の上に並んでいる。


「すごいです!」


 マユさんが感動している。

 そして、そのまま、作業台に座って薬を作り始めてしまった。

 うん、何を言っても無駄そうなので彼女は放っておこう。


「これからは、アンが鍛冶を本格的に始めることになるから作業ごとに生産設備を分けたんだ」


「そうでありますか! 早く鍛冶場が見たいであります!」



 二つ目の部屋は……。

 奥に3つの作業机が並んでいて、両側の壁に棚がいくつか並んでいる部屋だ。

 部屋の真ん中には、大きな作業台も設置してあり。そこに幾つかの細工などに使う生産設備が置かれている。


「この部屋は、細工なんかの細かい作業をする部屋だな。奥の机は一応、俺、マユさん、アンの三人で一つずつ使おうと思う」


「細工でありますか?」


「まあ、武器を作るにしてもそのうち装飾とかも必要になるからな」


「確かにそうであります!」



 そして、3つ目の部屋。

 

「此処が鍛冶場でありますか!?」


「そうだ、俺も使う事はあるけど、これからはアンの方が使う時間は長くなるだろな」


 そんな説明をしながら扉を開ける。


「すごいであります!」


 中央奥に鍛冶用の炉がドンと鎮座し、左の壁に鍛冶道具一式が片付けられた棚、右側の壁には、素材を置くための棚、銅鉱石や鉄鉱石が満載の箱などが置かれている。

 

「あと、鍛冶用に作ってみた。受け取れ」


「これは……ハンマーでありますか?」



 名前:鋼の鍛冶ハンマー + 12


 分類:武器(槌)


 品質:最高


 攻撃力:28 + 12


 所有者:アン


 詳細:鍛冶にも、戦闘にも使えるハンマー。

    ただし、専用の物に比べると多少能力が落ちる。



「まあ、俺は生産用の道具はつくれないから、武器と兼用の多少能力が落ちるものになっているけどな。他の店で買うよりはいいものになっていると思うぞ」


「ありがとうなのであります! 師匠! 大切に使うであります!」


 アンは俺が渡した鋼の鍛冶ハンマーを大事そうに胸に抱いている。

 

「喜んでもらえてよかったよ」


「さっそく使っても良いでありますか?」


「ああ、まずは、そこの銅鉱石の山を全てインゴットに変えるところから始めるか」


「武器は作らないでありますか?」


「まずは、インゴット作りだな。ちゃんとしたインゴットを作れないと良い武器は作れないからな」


「了解であります! がんばるでありますよ!!」


 アンは、そういって銅のインゴット作りを始める。

 【鍛冶師】の職業スキルがあるため、作り方は解ってるようだ。

 ぎこちないながらも、作業を進めていく。







 

 うん、俺の手伝えるのは此処までだな。

 あとは、彼女の修行あるのみだな。



 がんばれよ、アン。

次回は、アンの師匠業もひと段落ついてグータラな生活にもどります!

レベリングはしなくていいのかクロ!

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